不思議な縁に導かれました

らいち

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第三章

アパートなんて探さなくていい 2

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 心の中で泣き言を言いながら、テーブルにご飯を並べる。高科さんが戻って来たので、一緒に席に着いた。

 食卓にはやはり会話はなくて、点けっぱなしのテレビの音だけが流れている。一人で食べる寂しい食事とはまた違う、重苦しい雰囲気がそこにはあった。

「高科さん」
「……何だ」

 私が話し掛けたのが意外だったのか、ちょっぴり驚いたような表情をする。こちらも少しそれに気後れしたけれど、今を逃したら聞けないような気がしたので言葉を続けた。

「あの……、宮里さんとはお付き合いされているのですか?」
「…………」 

 人が意を決して聞いているのに、高科さんは心底嫌そうな表情で眉をしかめてこちらを見るだけで返事をしない。もう本当に、心が折れそうで涙が出そうになる。

「あの……、私の事もう迷惑なんですよね。急いでアパート探して出て行きますから」
「誰が出て行けと言った!」

 高科さんはガタンと音を立てて席を立ち、大声で怒鳴った。あまりの形相にびっくりする。

「え? だって……」
「出て行けだなんて言ってない。アパートなんて探す必要は無い、いいな!」
「でも……」
「わかったか!?」

 怒ったような顔。だけどそんな高科さんの表情の中に、どこか必死さが見え隠れする。その表情に、本気で引き止めてくれてるのだと思えた。

「……わかり、ました……」

 私がそう返事をすると、高科さんは心底ホッとしたような顔になり、「ならいい」と言い捨てて自室へと行ってしまった。

 もしかして私、嫌われてない……?

 小刻みに震える指先。心臓がドキドキ言い始めて、気持ちが高揚しているのを隠しきれない。

 邪魔じゃないのよね。少なくても高科さんに、必要とされているのよね、私。

 ほうっと漏れる安堵の溜息。息を少し吸い込んで、唇から細く息を吐いて気持ちを落ち着かせた。

 ……だけど、とふと思う。
 でも、だったらどうして急に、高科さんはあんなに冷たくなってしまったんだろう。  やっぱりどんなに考えても.、その答えは、今の私には分からなかった。
  
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