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第三章
同僚の宮沢さん 2
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高科さんは冷たい視線を私に向け、口を開いた。
「君は仕事中なんじゃないのか? のんびり立ち話なんかしてていいのか?」
「おいおい、勘違いするなよ。彼女は今、昼休み中だ」
宮沢さんの言葉に高科さんは、私から視線を外した。
「ふうん」
興味なさそうに呟いて食券を厨房内にいる大谷さんに渡し、宮里さんと一緒にテーブル席に着いた。
涙がにじみ出そうになって慌てた。本当になんでこんな事になっちゃったんだろう。
「ごめんな、なんか……」
「あっ、いえ……」
「あいつ悪い奴じゃ無いんだけど。何だか最近、カリカリしててさ」
「はい、大丈夫です。宮沢さん、ご飯食べて下さい」
「ああ、そうだった」
宮沢さんは笑って頷いて、テーブル席へと歩いて行った。
「高科さん、本当に一体どうしちゃったのかしらね。前はあんなにギスギスなんてしてなかったのに。……もしかして、喧嘩でもした?」
厨房内に戻ってため息を吐いていると大谷さんたちがやって来て、心配して声を掛けてくれた。
「……私は喧嘩した記憶はないんですけど、突然素っ気なくなっちゃって。何か……、しちゃったんでしょうか、私」
「う~ん」
せめて何かヒントはないかと祈るようにみんなの顔を見上げたのだけど、大谷さんたちも困ったような顔をして、唯々唸るばかりだ。
厨房内から見える高科さんの様子は、先程までの不機嫌さは感じられず、隣の宮里さんと落ち着いた様子だった。
ほんの少し前まで、あの場所は私のものだった。口数は少ないけど穏やかで、居心地のいい雰囲気を持つ高科さんの隣にいられることが幸せだった。なのに今は、もうそこは私の場所では無くなっている。
下唇を噛み、キュッと手のひらを握った。そうでもしないと、今にも涙が溢れ出てきそうで困ったからだ。
「君は仕事中なんじゃないのか? のんびり立ち話なんかしてていいのか?」
「おいおい、勘違いするなよ。彼女は今、昼休み中だ」
宮沢さんの言葉に高科さんは、私から視線を外した。
「ふうん」
興味なさそうに呟いて食券を厨房内にいる大谷さんに渡し、宮里さんと一緒にテーブル席に着いた。
涙がにじみ出そうになって慌てた。本当になんでこんな事になっちゃったんだろう。
「ごめんな、なんか……」
「あっ、いえ……」
「あいつ悪い奴じゃ無いんだけど。何だか最近、カリカリしててさ」
「はい、大丈夫です。宮沢さん、ご飯食べて下さい」
「ああ、そうだった」
宮沢さんは笑って頷いて、テーブル席へと歩いて行った。
「高科さん、本当に一体どうしちゃったのかしらね。前はあんなにギスギスなんてしてなかったのに。……もしかして、喧嘩でもした?」
厨房内に戻ってため息を吐いていると大谷さんたちがやって来て、心配して声を掛けてくれた。
「……私は喧嘩した記憶はないんですけど、突然素っ気なくなっちゃって。何か……、しちゃったんでしょうか、私」
「う~ん」
せめて何かヒントはないかと祈るようにみんなの顔を見上げたのだけど、大谷さんたちも困ったような顔をして、唯々唸るばかりだ。
厨房内から見える高科さんの様子は、先程までの不機嫌さは感じられず、隣の宮里さんと落ち着いた様子だった。
ほんの少し前まで、あの場所は私のものだった。口数は少ないけど穏やかで、居心地のいい雰囲気を持つ高科さんの隣にいられることが幸せだった。なのに今は、もうそこは私の場所では無くなっている。
下唇を噛み、キュッと手のひらを握った。そうでもしないと、今にも涙が溢れ出てきそうで困ったからだ。
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