45 / 64
第三章
同僚の宮沢さん
しおりを挟む
職場の皆は、もうあまり高科さんの事を聞いたりはしなくなった。高科さんの態度が変わった頃は、それこそ心配されていろいろ聞かれたり励まされたりしたけれど、今はもうそっと見守ってくれるようになっている。
「白山さん、お昼休憩にしましょう」
「はい」
日替わり定食を手に、小杉さんと席に着いた。とほぼ同時に、高科さんと同じ年齢くらいの社員が入って来た。
「あら、宮沢さん。今日は遅いわね」
「そうなんですよ。なかなかキリがつかなくて」
そう言って笑う宮沢さんと言う人は、どこかエリート然として話し掛けにくい、他の研究者たちとはどこか感じが違っていた。
「ああ、そうそう。白山さんは、宮沢さんと話すのは初めてだったわね」
「はい。あっ、えっと、白山智未です。よろしくお願いします」
「宮沢有斗です。よろしく。―― じゃあ俺、ちょっと注文してきます」
そう言って宮沢さんは食券を購入してカウンターに出した後、また私たちの下に戻って来た。
「ちょっとここで待たせてね」
「どうぞ、どうぞ」
「白山さんは食堂でちょこちょこ見かけたけど、そう長くはないよね。もう慣れた?」
「はい。もうそろそろ半年になりますから。それに皆さん、すごく親切で優しくて。……頼りにし過ぎてすみません」
後半の言葉を小杉さんに言って、ぺこりと頭を下げた。
「そんな事無いわよ。白山さん、十分うちの戦力よ」
「ありがとうございます」
「いいねえ。仕事でチームワークは大切だからね。コミュニケーションは大事だよなあ」
「研究のお仕事も、そうなんですか?」
「もちろんだよ」
「宮沢さーん、日替わり出来ましたよー」
「はーい」
宮沢さんが定食を取りに席を立った。ちょうど私も小杉さんもお昼を食べ終えたので、食器を片付けに戻る。
「あれ、二人とももう食べ終えちゃったの?」
「はい。休みは時間通り貰ってるんですけど食事は交替制なので、のんびりし過ぎないって言うのが暗黙の了解になってまして」
「じゃあ食事している時間以外にも、ちゃんと休憩は取っているんだ?」
「はい。ね、小杉さん?」
「もちろんよ」
小杉さんは頷きながら、厨房の中に入って行った。大谷さんが呼んだからだ。
「それ、うちのエースにも言ってやりたいな」
「エース?」
「そう。高科って知ってる? 研究の鬼。一時期改善したと思ったら、また少し悪化してるんだよな」
「他人の仕事の邪魔をする奴に、言われたくないな」
「高科!」
えっ?
びっくりして振り向くと、冷めた表情の高科さんが立っていた。―― 宮里さんも一緒だ。
「白山さん、お昼休憩にしましょう」
「はい」
日替わり定食を手に、小杉さんと席に着いた。とほぼ同時に、高科さんと同じ年齢くらいの社員が入って来た。
「あら、宮沢さん。今日は遅いわね」
「そうなんですよ。なかなかキリがつかなくて」
そう言って笑う宮沢さんと言う人は、どこかエリート然として話し掛けにくい、他の研究者たちとはどこか感じが違っていた。
「ああ、そうそう。白山さんは、宮沢さんと話すのは初めてだったわね」
「はい。あっ、えっと、白山智未です。よろしくお願いします」
「宮沢有斗です。よろしく。―― じゃあ俺、ちょっと注文してきます」
そう言って宮沢さんは食券を購入してカウンターに出した後、また私たちの下に戻って来た。
「ちょっとここで待たせてね」
「どうぞ、どうぞ」
「白山さんは食堂でちょこちょこ見かけたけど、そう長くはないよね。もう慣れた?」
「はい。もうそろそろ半年になりますから。それに皆さん、すごく親切で優しくて。……頼りにし過ぎてすみません」
後半の言葉を小杉さんに言って、ぺこりと頭を下げた。
「そんな事無いわよ。白山さん、十分うちの戦力よ」
「ありがとうございます」
「いいねえ。仕事でチームワークは大切だからね。コミュニケーションは大事だよなあ」
「研究のお仕事も、そうなんですか?」
「もちろんだよ」
「宮沢さーん、日替わり出来ましたよー」
「はーい」
宮沢さんが定食を取りに席を立った。ちょうど私も小杉さんもお昼を食べ終えたので、食器を片付けに戻る。
「あれ、二人とももう食べ終えちゃったの?」
「はい。休みは時間通り貰ってるんですけど食事は交替制なので、のんびりし過ぎないって言うのが暗黙の了解になってまして」
「じゃあ食事している時間以外にも、ちゃんと休憩は取っているんだ?」
「はい。ね、小杉さん?」
「もちろんよ」
小杉さんは頷きながら、厨房の中に入って行った。大谷さんが呼んだからだ。
「それ、うちのエースにも言ってやりたいな」
「エース?」
「そう。高科って知ってる? 研究の鬼。一時期改善したと思ったら、また少し悪化してるんだよな」
「他人の仕事の邪魔をする奴に、言われたくないな」
「高科!」
えっ?
びっくりして振り向くと、冷めた表情の高科さんが立っていた。―― 宮里さんも一緒だ。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語
イケメン副社長のターゲットは私!?~彼と秘密のルームシェア~
美和優希
恋愛
木下紗和は、務めていた会社を解雇されてから、再就職先が見つからずにいる。
貯蓄も底をつく中、兄の社宅に転がり込んでいたものの、頼りにしていた兄が突然転勤になり住む場所も失ってしまう。
そんな時、大手お菓子メーカーの副社長に救いの手を差しのべられた。
紗和は、副社長の秘書として働けることになったのだ。
そして不安一杯の中、提供された新しい住まいはなんと、副社長の自宅で……!?
突然始まった秘密のルームシェア。
日頃は優しくて紳士的なのに、時々意地悪にからかってくる副社長に気づいたときには惹かれていて──。
初回公開・完結*2017.12.21(他サイト)
アルファポリスでの公開日*2020.02.16
*表紙画像は写真AC(かずなり777様)のフリー素材を使わせていただいてます。
甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・
希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!?
『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』
小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。
ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。
しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。
彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!?
過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。
*導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。
<表紙イラスト>
男女:わかめサロンパス様
背景:アート宇都宮様

ルピナス
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の藍沢直人は後輩の宮原彩花と一緒に、学校の寮の2人部屋で暮らしている。彩花にとって直人は不良達から救ってくれた大好きな先輩。しかし、直人にとって彩花は不良達から救ったことを機に一緒に住んでいる後輩の女の子。直人が一定の距離を保とうとすることに耐えられなくなった彩花は、ある日の夜、手錠を使って直人を束縛しようとする。
そして、直人のクラスメイトである吉岡渚からの告白をきっかけに直人、彩花、渚の恋物語が激しく動き始める。
物語の鍵は、人の心とルピナスの花。たくさんの人達の気持ちが温かく、甘く、そして切なく交錯する青春ラブストーリーシリーズ。
※特別編-入れ替わりの夏-は『ハナノカオリ』のキャラクターが登場しています。
※1日3話ずつ更新する予定です。
【コミカライズ決定】魔力ゼロの子爵令嬢は王太子殿下のキス係
ayame@コミカライズ決定
恋愛
【ネトコン12受賞&コミカライズ決定です!】私、ユーファミア・リブレは、魔力が溢れるこの世界で、子爵家という貴族の一員でありながら魔力を持たずに生まれた。平民でも貴族でも、程度の差はあれど、誰もが有しているはずの魔力がゼロ。けれど優しい両親と歳の離れた後継ぎの弟に囲まれ、贅沢ではないものの、それなりに幸せな暮らしを送っていた。そんなささやかな生活も、12歳のとき父が災害に巻き込まれて亡くなったことで一変する。領地を復興させるにも先立つものがなく、没落を覚悟したそのとき、王家から思わぬ打診を受けた。高すぎる魔力のせいで身体に異常をきたしているカーティス王太子殿下の治療に協力してほしいというものだ。魔力ゼロの自分は役立たずでこのまま穀潰し生活を送るか修道院にでも入るしかない立場。家族と領民を守れるならと申し出を受け、王宮に伺候した私。そして告げられた仕事内容は、カーティス王太子殿下の体内で暴走する魔力をキスを通して吸収する役目だったーーー。_______________
夫と息子は私が守ります!〜呪いを受けた夫とワケあり義息子を守る転生令嬢の奮闘記〜
梵天丸
恋愛
グリーン侯爵家のシャーレットは、妾の子ということで本妻の子たちとは差別化され、不遇な扱いを受けていた。
そんなシャーレットにある日、いわくつきの公爵との結婚の話が舞い込む。
実はシャーレットはバツイチで元保育士の転生令嬢だった。そしてこの物語の舞台は、彼女が愛読していた小説の世界のものだ。原作の小説には4行ほどしか登場しないシャーレットは、公爵との結婚後すぐに離婚し、出戻っていた。しかしその後、シャーレットは30歳年上のやもめ子爵に嫁がされた挙げ句、愛人に殺されるという不遇な脇役だった。
悲惨な末路を避けるためには、何としても公爵との結婚を長続きさせるしかない。
しかし、嫁いだ先の公爵家は、極寒の北国にある上、夫である公爵は魔女の呪いを受けて目が見えない。さらに公爵を始め、公爵家の人たちはシャーレットに対してよそよそしく、いかにも早く出て行って欲しいという雰囲気だった。原作のシャーレットが耐えきれずに離婚した理由が分かる。しかし、実家に戻れば、悲惨な末路が待っている。シャーレットは図々しく居座る計画を立てる。
そんなある日、シャーレットは城の中で公爵にそっくりな子どもと出会う。その子どもは、公爵のことを「お父さん」と呼んだ。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる