32 / 64
第二章
労ってくれるの? 2
しおりを挟む
「ご飯も食べ終わっちゃったんだね。全然気が付かなかった」
二階に上がり、高科さんの部屋の前まで行った。ドアのすき間から漏れる光で、高科さんがまだ起きていることが分かる。軽くノックをして、様子を窺う。それほど持つこともなく、高科さんが顔を出した。
「あ、あの。毛布有難うございました。それに食器まで片付けてもらって……」
「いや。疲れているんだろう? 考えてみたら、君は仕事が終わってから家事に勤しんでくれてたんだよな。俺もずいぶん甘えてた」
「いえ、そんなこと気になさらないで下さい。ここに来る前の状況と、さほど変わりませんから」
「無理してないのか?」
「はい、大丈夫です」
「そうか」
ホッとしたように優しく笑う高科さんに、キュウンと心臓に甘い痛みが走る。しかも表情が見える分、以前感じたその痛みよりも甘い部分が倍増しているようにも思えた。
ふと視線を下に落とすと、高科さんの大きな掌が目に入る。
……あ。もしかしたら、さっき寝てる時に感じたあの懐かしく優しい感触は……、高科さん?
そう気が付いた途端、ぶわっと身体の中が温かくなって、甘い幸せに満ちた思いが溢れてくる。
「どうした?」
「あ、いいえっ。何でもないです。遅くにすみませんでした。お休みなさい」
ちょっと挙動不審になってしまったかもしれない。変に意識しちゃった事を悟られたくなくて、忙しなく両手を振り慌てて挨拶をした。
「ああ、お休み。……あっ、白山さん」
「はい?」
ホッとしてそそくさと自室に戻ろうとしたところを呼び止められて、すっとんきょうな声が出た。
あー、もう何だこのひっくり返った声。
恥ずかしいなと思いながら振り向いたら、何故か高科さんが困ったような戸惑ったような妙な素振りをしていた。
どうしたんだろう?
二階に上がり、高科さんの部屋の前まで行った。ドアのすき間から漏れる光で、高科さんがまだ起きていることが分かる。軽くノックをして、様子を窺う。それほど持つこともなく、高科さんが顔を出した。
「あ、あの。毛布有難うございました。それに食器まで片付けてもらって……」
「いや。疲れているんだろう? 考えてみたら、君は仕事が終わってから家事に勤しんでくれてたんだよな。俺もずいぶん甘えてた」
「いえ、そんなこと気になさらないで下さい。ここに来る前の状況と、さほど変わりませんから」
「無理してないのか?」
「はい、大丈夫です」
「そうか」
ホッとしたように優しく笑う高科さんに、キュウンと心臓に甘い痛みが走る。しかも表情が見える分、以前感じたその痛みよりも甘い部分が倍増しているようにも思えた。
ふと視線を下に落とすと、高科さんの大きな掌が目に入る。
……あ。もしかしたら、さっき寝てる時に感じたあの懐かしく優しい感触は……、高科さん?
そう気が付いた途端、ぶわっと身体の中が温かくなって、甘い幸せに満ちた思いが溢れてくる。
「どうした?」
「あ、いいえっ。何でもないです。遅くにすみませんでした。お休みなさい」
ちょっと挙動不審になってしまったかもしれない。変に意識しちゃった事を悟られたくなくて、忙しなく両手を振り慌てて挨拶をした。
「ああ、お休み。……あっ、白山さん」
「はい?」
ホッとしてそそくさと自室に戻ろうとしたところを呼び止められて、すっとんきょうな声が出た。
あー、もう何だこのひっくり返った声。
恥ずかしいなと思いながら振り向いたら、何故か高科さんが困ったような戸惑ったような妙な素振りをしていた。
どうしたんだろう?
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編3が完結しました!(2024.8.29)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
断罪されそうになった侯爵令嬢、頭のおかしい友人のおかげで冤罪だと証明されるが二重の意味で周囲から同情される。
あの時削ぎ落とした欲
恋愛
学園の卒業パーティで婚約者のお気に入りを苛めたと身に覚えの無いことで断罪されかける侯爵令嬢エリス。
その断罪劇に乱入してきたのはエリスの友人である男爵令嬢ニナだった。彼女の片手には骨付き肉が握られていた。
お隣さんはヤのつくご職業
古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。
残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。
元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。
……え、ちゃんとしたもん食え?
ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!!
ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ
建築基準法と物理法則なんて知りません
登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。
2020/5/26 完結
【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
再会したスパダリ社長は強引なプロポーズで私を離す気はないようです
星空永遠
恋愛
6年前、ホームレスだった藤堂樹と出会い、一緒に暮らしていた。しかし、ある日突然、藤堂は桜井千夏の前から姿を消した。それから6年ぶりに再会した藤堂は藤堂ブランド化粧品の社長になっていた!?結婚を前提に交際した二人は45階建てのタマワン最上階で再び同棲を始める。千夏が知らない世界を藤堂は教え、藤堂のスパダリ加減に沼っていく千夏。藤堂は千夏が好きすぎる故に溺愛を超える執着愛で毎日のように愛を囁き続けた。
2024年4月21日 公開
2024年4月21日 完結
☆ベリーズカフェ、魔法のiらんどにて同作品掲載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる