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第二章
高科さん激変 4
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「……おい」
「…………」
「白山さん、……白山さん!」
「えっ、あ、はっ、はいっ……!」
どうやら私は眠っていたらしい。肩を揺さぶられ大声で呼ばれて、ハッとして顔を上げた。――上げてびっくりした。
だって……、どこのアイドルなのかと思ってしまうくらいの綺麗な顔が、私の顔を覗き込んでいたんだもの。
切れ長で黒目がちの澄んだ瞳に、通った鼻筋。そして少しシャープな顔の造りが、男の人の色気のようなものまで醸し出している。
「…………」
「……何だ? やっぱり変か?」
初めて会った時にチラッと高科さんの顔を見てしまったから大体の想像はついていたんだけど、予想以上のイケメンぶりに、私はただただ呆けることしかできない。ポカンとし続ける私に、高階さんの表情が段々不機嫌なものへと変化していった。
「お客様が格好良くなりすぎて、驚いてらっしゃるのですよね?」
「あっ、そう、そうです!」
後ろで会話を聞いていた美容師さんのフォローで、ハッと我に返り私は慌てて頷いた。それには高科さんも驚いたようで、大きく目を見開き私と美容師さんを交互に見る。
……ああ、そうだ。高科さんはそういう人だった。普通じゃちょっと考えられないけれど、この人は自分の容姿にすら興味が無いんだ。
会計を済ませて駐車場に向かい、車に乗った。シートベルトを着けた後、高科さんがこちらに顔を向ける。
ドキッとした。
ぼさぼさ頭が可愛いとさえ思えて来ていた私には、芸能人も顔負けのような綺麗な顔をしたこの人は、目の毒だし心臓に悪い。その証拠に、血液が逆流しているのではないかと思うくらいに、身体の中からドクドクと激しい音が聞こえてくる。
「本当は似合わないと思っているんじゃないのか?」
「え?」
「確かに鬱陶しくなくなったが眩しいしスースーするし、変な気分だ。おまけにさっきの店では客の何人かに二度見された。誰にどう見られようが気にする気はないが、じろじろ見られるのはあんまり気分がいいものじゃない」
「…………」
二度見されているのは、あなたが余りにも格好いいからなんじゃない。本当に、何なんだろうこの人は。一体どこまでズレているの?
そう思ったら何だか可笑しくなっちゃって、無駄なドキドキがどこかに吹っ飛んだ。
「…………」
「白山さん、……白山さん!」
「えっ、あ、はっ、はいっ……!」
どうやら私は眠っていたらしい。肩を揺さぶられ大声で呼ばれて、ハッとして顔を上げた。――上げてびっくりした。
だって……、どこのアイドルなのかと思ってしまうくらいの綺麗な顔が、私の顔を覗き込んでいたんだもの。
切れ長で黒目がちの澄んだ瞳に、通った鼻筋。そして少しシャープな顔の造りが、男の人の色気のようなものまで醸し出している。
「…………」
「……何だ? やっぱり変か?」
初めて会った時にチラッと高科さんの顔を見てしまったから大体の想像はついていたんだけど、予想以上のイケメンぶりに、私はただただ呆けることしかできない。ポカンとし続ける私に、高階さんの表情が段々不機嫌なものへと変化していった。
「お客様が格好良くなりすぎて、驚いてらっしゃるのですよね?」
「あっ、そう、そうです!」
後ろで会話を聞いていた美容師さんのフォローで、ハッと我に返り私は慌てて頷いた。それには高科さんも驚いたようで、大きく目を見開き私と美容師さんを交互に見る。
……ああ、そうだ。高科さんはそういう人だった。普通じゃちょっと考えられないけれど、この人は自分の容姿にすら興味が無いんだ。
会計を済ませて駐車場に向かい、車に乗った。シートベルトを着けた後、高科さんがこちらに顔を向ける。
ドキッとした。
ぼさぼさ頭が可愛いとさえ思えて来ていた私には、芸能人も顔負けのような綺麗な顔をしたこの人は、目の毒だし心臓に悪い。その証拠に、血液が逆流しているのではないかと思うくらいに、身体の中からドクドクと激しい音が聞こえてくる。
「本当は似合わないと思っているんじゃないのか?」
「え?」
「確かに鬱陶しくなくなったが眩しいしスースーするし、変な気分だ。おまけにさっきの店では客の何人かに二度見された。誰にどう見られようが気にする気はないが、じろじろ見られるのはあんまり気分がいいものじゃない」
「…………」
二度見されているのは、あなたが余りにも格好いいからなんじゃない。本当に、何なんだろうこの人は。一体どこまでズレているの?
そう思ったら何だか可笑しくなっちゃって、無駄なドキドキがどこかに吹っ飛んだ。
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