不思議な縁に導かれました

らいち

文字の大きさ
上 下
25 / 64
第二章

高科さん激変 4

しおりを挟む
「……おい」
「…………」 
「白山さん、……白山さん!」
「えっ、あ、はっ、はいっ……!」

 どうやら私は眠っていたらしい。肩を揺さぶられ大声で呼ばれて、ハッとして顔を上げた。――上げてびっくりした。

  だって……、どこのアイドルなのかと思ってしまうくらいの綺麗な顔が、私の顔を覗き込んでいたんだもの。

  切れ長で黒目がちの澄んだ瞳に、通った鼻筋。そして少しシャープな顔の造りが、男の人の色気のようなものまで醸し出している。

「…………」 
「……何だ? やっぱり変か?」

 初めて会った時にチラッと高科さんの顔を見てしまったから大体の想像はついていたんだけど、予想以上のイケメンぶりに、私はただただ呆けることしかできない。ポカンとし続ける私に、高階さんの表情が段々不機嫌なものへと変化していった。

「お客様が格好良くなりすぎて、驚いてらっしゃるのですよね?」
「あっ、そう、そうです!」

 後ろで会話を聞いていた美容師さんのフォローで、ハッと我に返り私は慌てて頷いた。それには高科さんも驚いたようで、大きく目を見開き私と美容師さんを交互に見る。

 ……ああ、そうだ。高科さんはそういう人だった。普通じゃちょっと考えられないけれど、この人は自分の容姿にすら興味が無いんだ。

 会計を済ませて駐車場に向かい、車に乗った。シートベルトを着けた後、高科さんがこちらに顔を向ける。

 ドキッとした。

 ぼさぼさ頭が可愛いとさえ思えて来ていた私には、芸能人も顔負けのような綺麗な顔をしたこの人は、目の毒だし心臓に悪い。その証拠に、血液が逆流しているのではないかと思うくらいに、身体の中からドクドクと激しい音が聞こえてくる。

「本当は似合わないと思っているんじゃないのか?」
「え?」

「確かに鬱陶しくなくなったが眩しいしスースーするし、変な気分だ。おまけにさっきの店では客の何人かに二度見された。誰にどう見られようが気にする気はないが、じろじろ見られるのはあんまり気分がいいものじゃない」

「…………」 

 二度見されているのは、あなたが余りにも格好いいからなんじゃない。本当に、何なんだろうこの人は。一体どこまでズレているの?

 そう思ったら何だか可笑しくなっちゃって、無駄なドキドキがどこかに吹っ飛んだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。
恋愛
「——君を愛してる」 そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった—— 幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。 あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは…… 『最初から愛されていなかった』 その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。 私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。  『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』  『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』 でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。 必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。 私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……? ※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。 ※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。 ※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。 ※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

警察官は今日も宴会ではっちゃける

饕餮
恋愛
居酒屋に勤める私に降りかかった災難。普段はとても真面目なのに、酔うと変態になる警察官に絡まれることだった。 そんな彼に告白されて――。 居酒屋の店員と捜査一課の警察官の、とある日常を切り取った恋になるかも知れない(?)お話。 ★下品な言葉が出てきます。苦手な方はご注意ください。 ★この物語はフィクションです。実在の団体及び登場人物とは一切関係ありません。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

処理中です...