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今度こそがんばれ私

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「俺が誰に構おうが、金山には関係ないだろ? 俺は妃愛梨ちゃんのこと可愛いと思うし、誰かの評判なんて気にしないな。俺は自分の気持ちを信じるだけだから」


ドクン――

体の中を電流が走るように、心音が響いた。


自分の気持ちを信じる……。

そう、だよね。伶英くんの言う通りだ。

広美さんは伶英くんが女好きだって言っていて、好きになったら泣くよって言ってたけど、私の目に映る伶英くんは優しくて明るい人だ。
いつも彼の周りには男女問わず人がいて、たくさんの人に慕われている人気者にしか見えない。


「勝手にすれば?」

少し怒ったように言って、広美さんは廊下の向こうへと歩いて行った。
盗み聞きのようになってしまっていた私はハッと我に返って、彼らに見つからないように元来た道を戻って行った。

教室に入り、自分の席に力なく座る。ため息を吐いた後、広美さんの言葉を思い出していた。
そう言えば――

広美さんは私の事を退屈な子だって伶英くんに言ってた。なんで妃愛梨なんかに構うのかとも。
私には、伶英くんを好きになったら泣かされるよって忠告してたのに……。

やっぱり、何だか変。

私の心の中は、広美さんへの不信感で一杯になっていた。



翌朝、学校へ向かう途中で、「妃愛梨ちゃん、お早う」と声を掛けられた。驚いて振り返ると伶英くんがいた。

「あ…」

伶英くんの顔を見た途端、昨日彼が「妃愛梨ちゃんのこと可愛いと思う」と広美さんに言っていたことを思い出してしまった。
瞬時に頬が熱くなる。
ドキドキすると同時に、真っ赤になっているだろう顔を見られるのが恥ずかしくて、私はまた下を向いてしまった。

何やってんの、私。挨拶くらいちゃんと返さないと!

だけど、そう思えば思うほど掌から汗が滲み出て、焦って言葉が出なくなる。

しばらく俯いてドキドキしていたら、伶英くんの困惑した声が聞こえて来た。

「あの、さ。ちょっと気になってたんだけど。もしかして妃愛梨ちゃん、俺と話すの楽しくない? いつも下向いちゃって」

ハッとして顔を上げる。
一番されたくない誤解を、私の情けない行動が引き起こしている事に気が付いた。

「そ、そんな事無いけど…」

慌てて返事をするけれど、誤解を解く上手い言葉が見つからない。伶英くんの少し困ったような表情も、少しも緩むことが無かった。

どうしよう、どうしよう。
気持ちばかりが焦ってしまう。

頑張るって決めたのに、せめて明るく笑って伶英くんの話を聞くくらいはしたいと思っていたのに。
今の私は笑顔を見せることも、挨拶1つも満足いく返事を返せないくらいにテンパっていた。

そんな自分が情けなくて悲しくて、また次第に顔が俯きかげんになってしまう。


伶英くんのため息が聞こえて、ビクッとした。


恐る恐る顔を上げると、伶英くんが困ったように頭を掻いていた。
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