25 / 44
放っておけない
真相
しおりを挟む
俺は、改めて目の前に立つストーカーに向き直った。
「で?」
「…里奈の事、本気なのか?」
「…何?」
本気って何だ? 目の前のストーカーの意味の分からない問いに首を傾げる。
俺は確かに里奈ちゃんに対してかなりの好意を抱いてはいるけれど、俺の気持ちは里奈ちゃんには一言も話してはいない。
今はまだ、こいつに関する相談事すらまともにさせてもらっていない状態だ。
「お前、里奈と付き合ってるんだろ? 本気で真面目に里奈を幸せにする気があるんだろうな?」
「はい?」
まったく見当違いの事を詰め寄るように言ってくる男に、俺は眉を顰めた。
一瞬、この眼の前に居るストーカーは怪訝な顔をしたのだけど、その後なにか思い当たる事があったのか、片手で顔を覆い大きなため息を吐いていた。
「自己紹介まだだったよな。俺は、佐久田弘樹」
「ああ、俺は紫温」
「紫温さん? 悪いんだけど、付き合ってくれるかな。これから里奈と待ち合わせしているんだ。アンタが居た方が、話が早いと思うから」
「いいよ」
乗りかかった船だ。里奈ちゃんの事は気になっていたから異存はない。
俺は素直に佐久田の後について行った。
着いた先は公園だった。木々に囲まれている一角の、小さなベンチに里奈ちゃんが座って待っていた。
「里奈」
佐久田に声をかけられてこっちを向いた里奈ちゃんが、驚いたように俺を見た。心なしか青ざめているようにも見える。
「付き合っているわけじゃなかったんだな」
佐久田は落ち着いた声で、里奈ちゃんに話しかけた。
里奈ちゃんの唇が震えている。何かを言いたいのに、口を開くと涙がこぼれそうだといった表情だ。
だけどそれは、目の前の男に怯えているといった感じでは無かった。
「どういう事?」
俺が聞くと、里奈ちゃんはビクッと肩を揺らす。
「…めんなさい」
絞り出すように出てきた言葉は、それと一緒に涙まで連れてきてしまっていた。
ポタポタと、腿の上で握られた手の上に涙が落ちていく。
「私…紫温さんに嘘…吐いてました」
「え?」
「俺、こいつと付き合っているんです」
「で?」
「…里奈の事、本気なのか?」
「…何?」
本気って何だ? 目の前のストーカーの意味の分からない問いに首を傾げる。
俺は確かに里奈ちゃんに対してかなりの好意を抱いてはいるけれど、俺の気持ちは里奈ちゃんには一言も話してはいない。
今はまだ、こいつに関する相談事すらまともにさせてもらっていない状態だ。
「お前、里奈と付き合ってるんだろ? 本気で真面目に里奈を幸せにする気があるんだろうな?」
「はい?」
まったく見当違いの事を詰め寄るように言ってくる男に、俺は眉を顰めた。
一瞬、この眼の前に居るストーカーは怪訝な顔をしたのだけど、その後なにか思い当たる事があったのか、片手で顔を覆い大きなため息を吐いていた。
「自己紹介まだだったよな。俺は、佐久田弘樹」
「ああ、俺は紫温」
「紫温さん? 悪いんだけど、付き合ってくれるかな。これから里奈と待ち合わせしているんだ。アンタが居た方が、話が早いと思うから」
「いいよ」
乗りかかった船だ。里奈ちゃんの事は気になっていたから異存はない。
俺は素直に佐久田の後について行った。
着いた先は公園だった。木々に囲まれている一角の、小さなベンチに里奈ちゃんが座って待っていた。
「里奈」
佐久田に声をかけられてこっちを向いた里奈ちゃんが、驚いたように俺を見た。心なしか青ざめているようにも見える。
「付き合っているわけじゃなかったんだな」
佐久田は落ち着いた声で、里奈ちゃんに話しかけた。
里奈ちゃんの唇が震えている。何かを言いたいのに、口を開くと涙がこぼれそうだといった表情だ。
だけどそれは、目の前の男に怯えているといった感じでは無かった。
「どういう事?」
俺が聞くと、里奈ちゃんはビクッと肩を揺らす。
「…めんなさい」
絞り出すように出てきた言葉は、それと一緒に涙まで連れてきてしまっていた。
ポタポタと、腿の上で握られた手の上に涙が落ちていく。
「私…紫温さんに嘘…吐いてました」
「え?」
「俺、こいつと付き合っているんです」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。


断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。
112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。
ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。
ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。
※完結しました。ありがとうございました。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる