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放っておけない
女の子との出会い
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のんびりと過ごす穏やかな昼下がり。今日は、ボランティアの予定もないので、芙蓉も俺も気ままに過ごしていた。
俺は本当にする事がないのでだらだらしていたのだが、芙蓉は時々自分の手元を見つめては、白いキラキラとした光る球を上下に動かしていた。
何しているんだろうと思いはしたけれど、聞いた所でどうせ芙蓉は答えはしないだろうから、無料の手品を見ている気分で楽しませてもらう事にした。
俺って、お、と、く♪
芙蓉に関しては、知らない事がたくさんある。
ここのマンションだって一応借りているわけだから家賃が発生するのだけれど、一体どうやって払っているんだろう。
働いている風情もないし、まさか錬金術?
芙蓉ならそのくらいの事は出来そうな気がするけれど、変に融通の利かない性格だから、それは無さそうな気がする。
暇を持て余し芙蓉を見ながらいろいろと想像していると、視線を感じたのか芙蓉がこちらを振り返った。
「何を見ている」
「えっ? あっ」
ずっと見ていたことを指摘され、焦ってしまった。
「あ、や、家賃。ここの家賃、どうやって払ってるのかなと思って!」
「なんだ、そんな事か」
「だって、お前働いてないだろ? 人間のお金も持ってなさそうだし」
「…持ってる」
「え!? やっぱ錬金術?」
「バカか」
思った通りの反応だ…。冷ややかな目で俺を見ている。
「ここに来て、すぐにバイトしたんだよ。書店でな」
「書店?」
ああ、それは納得かも。芙蓉に似合うバイトだ。
天使がバイトなんてびっくりだけど。
「でも今はしてないよな? 書店のバイトって、そんなにお金貰えるものなのか?」
「いや、給料はさほど高くはなかった。だけどその時、その書店の隣で宝くじを売っててな。物は試しと買ってみたら、三億円当たったんだ」
「さ、三億!?」
「運が良かったんだな」
ケロッと言う芙蓉だけど、それって運が良いなんてもんじゃないだろう!?
なんでこいつは、こんなに何もかも、恵まれすぎているんだよ!
自分とのあまりの違いに、なんか泣きたくなってきた。
グターッと脱力していると、芙蓉に不思議そうに「どうした」と聞かれてしまった。
まあ多分、芙蓉には俺の気持ちなんて一生分からないだろう。
「なんも。俺、ちょっと出てくるわ」
芙蓉にそう言って、ひらひらと手を振った。
芙蓉にはああ言って出て来たけれど、別にこれと言って用事もない俺は、街中を適当にぶらぶらと歩いていた。雑貨屋を覘いたり、書店で立ち読みをしたり、適当に時間をつぶしていた。
だけどまあ、本当に暇つぶしだったので、そろそろそんな時間つぶしにも飽きてしまった。
いい加減戻ろうかなと思って店を出たら、勢いよく何かにぶつかった。
「あ、ごっ、ごめんなさい!」
謝りながらも俺とぶつかった反動で転びそうになっているので、慌てて彼女の腕を引き上げた。
「大丈夫?」
「だっ、大丈夫です! すっ、すみません」
そう言って立ち上がった彼女は俺の背中に慌てて隠れた。俺は何事?と思いながらおたおたしていると、目の前を凄い勢いで男が走り去って行った。
その様子を俺の背後で確認した彼女は、そっと俺から離れた。
「あ、ごめんなさい。有難うございました」
「…大丈夫? もしかして、さっきの彼と知り合い?」
「あ…」
俺の問いに、明らかに動揺した様だった。
視線が完璧に泳いでいる。聞かれたくない事を聞いちゃったかな。
「ごめん、気にしないで、俺…」
「あ、ち、違います。あの人、あの…ストーカーなんです」
「え!?」
俺は本当にする事がないのでだらだらしていたのだが、芙蓉は時々自分の手元を見つめては、白いキラキラとした光る球を上下に動かしていた。
何しているんだろうと思いはしたけれど、聞いた所でどうせ芙蓉は答えはしないだろうから、無料の手品を見ている気分で楽しませてもらう事にした。
俺って、お、と、く♪
芙蓉に関しては、知らない事がたくさんある。
ここのマンションだって一応借りているわけだから家賃が発生するのだけれど、一体どうやって払っているんだろう。
働いている風情もないし、まさか錬金術?
芙蓉ならそのくらいの事は出来そうな気がするけれど、変に融通の利かない性格だから、それは無さそうな気がする。
暇を持て余し芙蓉を見ながらいろいろと想像していると、視線を感じたのか芙蓉がこちらを振り返った。
「何を見ている」
「えっ? あっ」
ずっと見ていたことを指摘され、焦ってしまった。
「あ、や、家賃。ここの家賃、どうやって払ってるのかなと思って!」
「なんだ、そんな事か」
「だって、お前働いてないだろ? 人間のお金も持ってなさそうだし」
「…持ってる」
「え!? やっぱ錬金術?」
「バカか」
思った通りの反応だ…。冷ややかな目で俺を見ている。
「ここに来て、すぐにバイトしたんだよ。書店でな」
「書店?」
ああ、それは納得かも。芙蓉に似合うバイトだ。
天使がバイトなんてびっくりだけど。
「でも今はしてないよな? 書店のバイトって、そんなにお金貰えるものなのか?」
「いや、給料はさほど高くはなかった。だけどその時、その書店の隣で宝くじを売っててな。物は試しと買ってみたら、三億円当たったんだ」
「さ、三億!?」
「運が良かったんだな」
ケロッと言う芙蓉だけど、それって運が良いなんてもんじゃないだろう!?
なんでこいつは、こんなに何もかも、恵まれすぎているんだよ!
自分とのあまりの違いに、なんか泣きたくなってきた。
グターッと脱力していると、芙蓉に不思議そうに「どうした」と聞かれてしまった。
まあ多分、芙蓉には俺の気持ちなんて一生分からないだろう。
「なんも。俺、ちょっと出てくるわ」
芙蓉にそう言って、ひらひらと手を振った。
芙蓉にはああ言って出て来たけれど、別にこれと言って用事もない俺は、街中を適当にぶらぶらと歩いていた。雑貨屋を覘いたり、書店で立ち読みをしたり、適当に時間をつぶしていた。
だけどまあ、本当に暇つぶしだったので、そろそろそんな時間つぶしにも飽きてしまった。
いい加減戻ろうかなと思って店を出たら、勢いよく何かにぶつかった。
「あ、ごっ、ごめんなさい!」
謝りながらも俺とぶつかった反動で転びそうになっているので、慌てて彼女の腕を引き上げた。
「大丈夫?」
「だっ、大丈夫です! すっ、すみません」
そう言って立ち上がった彼女は俺の背中に慌てて隠れた。俺は何事?と思いながらおたおたしていると、目の前を凄い勢いで男が走り去って行った。
その様子を俺の背後で確認した彼女は、そっと俺から離れた。
「あ、ごめんなさい。有難うございました」
「…大丈夫? もしかして、さっきの彼と知り合い?」
「あ…」
俺の問いに、明らかに動揺した様だった。
視線が完璧に泳いでいる。聞かれたくない事を聞いちゃったかな。
「ごめん、気にしないで、俺…」
「あ、ち、違います。あの人、あの…ストーカーなんです」
「え!?」
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