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第二章

優し過ぎるんだもん

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 今まで男子に興味なさすぎてちっとも気が付かなかったのだけど、やっぱりヒロくんはモテるようだ。
 美代たちの陰謀が私にバレてしまい、彼女たちが開き直ったことでそれが顕著になってきた。というのも、彼女らが呼び水となり、隠れて片思いをしていた子たちまでがヒロくんに積極的になってしまったのだ。

 そりゃね。別に独り占めしなきゃ気が済まないとかそこまでは考えたりしないけど、でも彼女としてはさ、やっぱ面白くないじゃない。

「ヒロくん!」

 女子に取り囲まれているヒロくんに、ちょっと離れたところから大声で呼んだ。それにパッと反応してこちらを向いたヒロくんは、少しホッとしたような表情になってこちらに歩いてきた。

「ごめん、ありがと。助かった」
「もう、ヒロくんの彼女は誰?」

 怒って上目遣いで文句を言った。パチッと目が合ったヒロくんは、うれしそうな顔で「未花ちゃんだろ?」と答える。

「だったら、……だったらもうちょっと彼女大事にしなきゃダメじゃない」
「…………」

 一瞬、表情を止めたヒロくんは、うれしさを噛みしめるような不思議な表情に変えて、私の手をキュッと握った。

「うん。……ごめんね? ああいうこと慣れてなくてさ、まさか女の子突き飛ばすわけにもいかないし、どうしたらいいのかなって困ってたんだ」

「それは……、うん。……でも明らかに邪魔な人たちは、人波をかき分けるような気持ちで避けていいんだよ」
「あー、そっか。そうだな。うん、今度からそうするよ」

 そう言いながらにこにこしているヒロくんに、ちょっぴりため息。

 だってさ、基本ヒロくんって優しい人だから、そうは言ってもあんまり強く出れないんだろうなってそう思うもの。
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