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第二章
ヤレヤレ……
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「ヒロくん、あの子たちに何か変なこと言われなかった?」
「ああ……、まあね。大したことじゃないよ、左から右に流しときゃいいことだ」
「やっぱり!」
ヒロくんに、私のあることないこと言いふらしてたのね。
「ほんっとに、何考えてるんだか! あの子たちったら、私にはヒロくんの悪口ばっかり言うのよ! 嫌がらせにもほどがあるわよっ」
あ~、もう! あれで許してやろうと思わなければ良かった。絶対絶対文句言ってやらなきゃ気が済まない!
「……ちゃん」
美鈴ちゃんの話だと、あの子たちもヒロくんのこと好きだって事よね。てことは……。
「え!?」
びっくりした。ぶつぶつと考え事をしていたら、急にヒロくんの手が伸びて来て、顎をスイッと横に向けられた。ヒロくんは、笑っている。
「まあ、いいんじゃない? あいつらの魂胆は分かってるんだから」
「え? 魂胆?」
「そ」
「って、何それ! ヒロくん何か思い当たることあるの? 美代たちと何かあったりしたわけ!? 何なの、何なの? ねえったら、ねえ、ねえ!」
「…………」
「ヒロくんってば!」
興奮して問い詰める私に、ヒロくんはたじたじとして苦笑いを零す。
「……だからさ、こういう風に言い合いさせて、別れさせようってことだよ」
「…………」
……っ。てことは、私、彼女らの術中にしっかりはまってしまったって事……?
「だからさあ」
落ち込む私に、ヒロくんがちょっぴり肩の力を抜くように姿勢を崩して、私に宥めるように言葉を続けた。
「そいつらに負けないように、俺たちも頑張ろうぜ」
「ヒロくん……」
「な?」
「……うん、そうだね」
そうだよね。周りがどんな茶々を入れたって、私たちがしっかりしていればそれでいいんだよね。
コクリと頷く私に、ヒロくんがスッと手を伸ばして私の手を取った。温かな手の感触に荒んだ気持ちも癒えてくる。
「戻ろうか。飯食べる時間が無くなっちまう」
「あ、本当だ!」
「ところで今日のおすそ分けは何?」
「ハンバーグとね、ハムのキュウリ巻きとポテサラ」
「うわっ、美味しそう!」
「でしょ?」
手を繋いだまま歩く私たちを、すれ違う人たちが二度見していく。特に私なんて男嫌いということが知れ渡っているせいか、ヒロくんと付き合い始めてからしばらく経つというのに、いまだに変な目で見られてしまうから面倒くさい。
でもまあ、だからと言ってどうするという事でも無いんだけどね。
二人で教室に戻ると、すでに雅乃たちはご飯を食べ始めていた。
「先、食べてるよ」
「うん、ごめんね。遅くなっちゃって」
「何? やっぱあいつらと揉めた?」
「ううん。揉めるも何も、私が行ったら一目散に逃げちゃった」
「ハハ。なるほどねー。糸魚川さんには敵わないって思ったんだな」
「未花、強いもんね」
「もうー、何よ二人してー。まあ、間違ってはいないけどね」
茶々を入れる二人に笑いながら、私たちもお弁当を広げる。昼休みも残りわずかだ。ぐずぐずしている暇はないので、私もヒロくんもちょっぴり食べることを優先した。
食べ終えて一息つき、教室を見回す。だけど大桃さんたちはまだ教室に戻ってきてはいなかった。いつもならお昼休みが終わる五分前にはたいてい戻ってくるのに。
……本当に、バレて気まずいんなら初めからあんな嘘吐かなきゃいいのに。
「ああ……、まあね。大したことじゃないよ、左から右に流しときゃいいことだ」
「やっぱり!」
ヒロくんに、私のあることないこと言いふらしてたのね。
「ほんっとに、何考えてるんだか! あの子たちったら、私にはヒロくんの悪口ばっかり言うのよ! 嫌がらせにもほどがあるわよっ」
あ~、もう! あれで許してやろうと思わなければ良かった。絶対絶対文句言ってやらなきゃ気が済まない!
「……ちゃん」
美鈴ちゃんの話だと、あの子たちもヒロくんのこと好きだって事よね。てことは……。
「え!?」
びっくりした。ぶつぶつと考え事をしていたら、急にヒロくんの手が伸びて来て、顎をスイッと横に向けられた。ヒロくんは、笑っている。
「まあ、いいんじゃない? あいつらの魂胆は分かってるんだから」
「え? 魂胆?」
「そ」
「って、何それ! ヒロくん何か思い当たることあるの? 美代たちと何かあったりしたわけ!? 何なの、何なの? ねえったら、ねえ、ねえ!」
「…………」
「ヒロくんってば!」
興奮して問い詰める私に、ヒロくんはたじたじとして苦笑いを零す。
「……だからさ、こういう風に言い合いさせて、別れさせようってことだよ」
「…………」
……っ。てことは、私、彼女らの術中にしっかりはまってしまったって事……?
「だからさあ」
落ち込む私に、ヒロくんがちょっぴり肩の力を抜くように姿勢を崩して、私に宥めるように言葉を続けた。
「そいつらに負けないように、俺たちも頑張ろうぜ」
「ヒロくん……」
「な?」
「……うん、そうだね」
そうだよね。周りがどんな茶々を入れたって、私たちがしっかりしていればそれでいいんだよね。
コクリと頷く私に、ヒロくんがスッと手を伸ばして私の手を取った。温かな手の感触に荒んだ気持ちも癒えてくる。
「戻ろうか。飯食べる時間が無くなっちまう」
「あ、本当だ!」
「ところで今日のおすそ分けは何?」
「ハンバーグとね、ハムのキュウリ巻きとポテサラ」
「うわっ、美味しそう!」
「でしょ?」
手を繋いだまま歩く私たちを、すれ違う人たちが二度見していく。特に私なんて男嫌いということが知れ渡っているせいか、ヒロくんと付き合い始めてからしばらく経つというのに、いまだに変な目で見られてしまうから面倒くさい。
でもまあ、だからと言ってどうするという事でも無いんだけどね。
二人で教室に戻ると、すでに雅乃たちはご飯を食べ始めていた。
「先、食べてるよ」
「うん、ごめんね。遅くなっちゃって」
「何? やっぱあいつらと揉めた?」
「ううん。揉めるも何も、私が行ったら一目散に逃げちゃった」
「ハハ。なるほどねー。糸魚川さんには敵わないって思ったんだな」
「未花、強いもんね」
「もうー、何よ二人してー。まあ、間違ってはいないけどね」
茶々を入れる二人に笑いながら、私たちもお弁当を広げる。昼休みも残りわずかだ。ぐずぐずしている暇はないので、私もヒロくんもちょっぴり食べることを優先した。
食べ終えて一息つき、教室を見回す。だけど大桃さんたちはまだ教室に戻ってきてはいなかった。いつもならお昼休みが終わる五分前にはたいてい戻ってくるのに。
……本当に、バレて気まずいんなら初めからあんな嘘吐かなきゃいいのに。
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