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第一章
モヤモヤする
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「未花ー、行くよー」
次は音楽なので移動教室だ。ぞろぞろとみんなが教室を出ていく。
相変わらず私の周りには男子はいない。余計なもめ事を起こさないためにとの配慮のため、こういう時でも男子はみんな私から一メートルくらいは離れてくれている。秋永君は私達から少し離れた後ろの方にいて、椎名君たちと数人で歩いていた。
「秋永君、後ろだね」
「えっ、……そうだね。……なんで?」
「ん? だって、秋永君ボディガードだからって、こういう時一緒に行動しようとするじゃない?」
「あ……、でも別にしょっちゅうじゃないでしょ」
「……そうだけどさあ」
私の受け答えに何か違和感でもあったのだろうか。雅乃が私の顔をじっと見ている。別に疾しいことがあるわけでもないのに、額から変な汗が滲み出てきた。
だって、今朝秋永君に告白されたこと、まだ雅乃に言えてないし……。
「ええっと、あ、ほら。きっと男同士で話したいこととかあったんじゃない? 私のとこに来るときは、せいぜい椎名君くらいとしか来ないでしょ」
「ああ、そっかー」
「そうだよ、きっと」
納得したような返事をしながらも、雅乃が気にして後ろを振り返るものだから、私もつられて後ろを振り返った。そんな私たちの視界に、三年の三輪真留美さんの姿が入ってきた。教室移動中の私たちクラスの団体に近付いたかと思ったら、秋永君へと真っすぐ駆け寄った。
「秋永君、こないだはどうもありがとう」
「あ、三輪さん。いいえ、気にしないでください。……それより、ハナちゃんは元気ですか?」
「うん、元気、元気。元気すぎてこっちが振り回されちゃってる」
「アハハ。それは良かったですね」
学校一番の美人じゃないかと噂されている三輪さんと秋永君の親しそうな会話に、思わずここにいるみんなが足を止めた。もちろん私と雅乃もだ。
何あれ。なんで秋永君があの人と知り合いなの? 上級生で接点も無いはずなのに。
楽しそうに笑いながら、二人にしか分からない会話を繰り広げる秋永君に、なぜだか私の気持ちがモヤモヤし始めた。気のせいか、周りのみんなも少しざわついているような気がする。
「じゃあね、呼び止めちゃってごめんなさい」
「あ、いえ。それじゃ」
ニコニコ笑って手を振った後、秋永君は皆が自分に注目していることに気が付いてびっくりしたようだった。
「なに? ヒロ、三輪さんと知り合いだったっけ?」
椎名君が歩き出しながら秋永君に問いかけた。それにはほぼここにいる全員が、素知らぬふりをしながらも一斉に耳を傾けているような感じだ。
「いや、知り合いというか……。一昨日かな……? 偶然公園の傍でばったり会って、三輪さんの散歩中の犬を確保したんだよ」
「は?」
「ああ、ええっとな、三輪さんの連れてた犬がさ、やたら元気で急に走り出しちゃったもんだからリードが外れちゃって。慌てて追いかける先に俺がいたから、確保してあげたってこと」
「へええ~、なるほどねえ」
……ふうん。そう言う事。で、あんな風に三輪さんに呼び止められるくらい、仲良くなっちゃったんだ。ふうう~ん。
ジーッと秋永君を見続けていたら、パチッと彼と目が合った。なんだかおもしろくない私は、その拍子にバッと目を逸らした。そんな私の視界の端に、焦った様子の秋永君の姿が映ったけど知らないもん。
次は音楽なので移動教室だ。ぞろぞろとみんなが教室を出ていく。
相変わらず私の周りには男子はいない。余計なもめ事を起こさないためにとの配慮のため、こういう時でも男子はみんな私から一メートルくらいは離れてくれている。秋永君は私達から少し離れた後ろの方にいて、椎名君たちと数人で歩いていた。
「秋永君、後ろだね」
「えっ、……そうだね。……なんで?」
「ん? だって、秋永君ボディガードだからって、こういう時一緒に行動しようとするじゃない?」
「あ……、でも別にしょっちゅうじゃないでしょ」
「……そうだけどさあ」
私の受け答えに何か違和感でもあったのだろうか。雅乃が私の顔をじっと見ている。別に疾しいことがあるわけでもないのに、額から変な汗が滲み出てきた。
だって、今朝秋永君に告白されたこと、まだ雅乃に言えてないし……。
「ええっと、あ、ほら。きっと男同士で話したいこととかあったんじゃない? 私のとこに来るときは、せいぜい椎名君くらいとしか来ないでしょ」
「ああ、そっかー」
「そうだよ、きっと」
納得したような返事をしながらも、雅乃が気にして後ろを振り返るものだから、私もつられて後ろを振り返った。そんな私たちの視界に、三年の三輪真留美さんの姿が入ってきた。教室移動中の私たちクラスの団体に近付いたかと思ったら、秋永君へと真っすぐ駆け寄った。
「秋永君、こないだはどうもありがとう」
「あ、三輪さん。いいえ、気にしないでください。……それより、ハナちゃんは元気ですか?」
「うん、元気、元気。元気すぎてこっちが振り回されちゃってる」
「アハハ。それは良かったですね」
学校一番の美人じゃないかと噂されている三輪さんと秋永君の親しそうな会話に、思わずここにいるみんなが足を止めた。もちろん私と雅乃もだ。
何あれ。なんで秋永君があの人と知り合いなの? 上級生で接点も無いはずなのに。
楽しそうに笑いながら、二人にしか分からない会話を繰り広げる秋永君に、なぜだか私の気持ちがモヤモヤし始めた。気のせいか、周りのみんなも少しざわついているような気がする。
「じゃあね、呼び止めちゃってごめんなさい」
「あ、いえ。それじゃ」
ニコニコ笑って手を振った後、秋永君は皆が自分に注目していることに気が付いてびっくりしたようだった。
「なに? ヒロ、三輪さんと知り合いだったっけ?」
椎名君が歩き出しながら秋永君に問いかけた。それにはほぼここにいる全員が、素知らぬふりをしながらも一斉に耳を傾けているような感じだ。
「いや、知り合いというか……。一昨日かな……? 偶然公園の傍でばったり会って、三輪さんの散歩中の犬を確保したんだよ」
「は?」
「ああ、ええっとな、三輪さんの連れてた犬がさ、やたら元気で急に走り出しちゃったもんだからリードが外れちゃって。慌てて追いかける先に俺がいたから、確保してあげたってこと」
「へええ~、なるほどねえ」
……ふうん。そう言う事。で、あんな風に三輪さんに呼び止められるくらい、仲良くなっちゃったんだ。ふうう~ん。
ジーッと秋永君を見続けていたら、パチッと彼と目が合った。なんだかおもしろくない私は、その拍子にバッと目を逸らした。そんな私の視界の端に、焦った様子の秋永君の姿が映ったけど知らないもん。
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