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第一章
私自身の変化
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秋永君に家まで送ってもらうようになってから、もう二週間以上が経っている。だけどストーカーかと思われた私の後をつけてきた男の人は、あの日以来ぱたりと姿を見せなくなっていた。
「やっぱ、ついて来てる気配無いね」
「……そうだね」
秋永君に家まで送ってもらった初日と同じように、角を曲がったところで待ち伏せするスタイルはもはや日課と化している。今もしばらく息を潜めるように、通り過ぎていく人たちを観察中だ。
だけど十五分が過ぎてもそれに該当する人が現れなかったので、今日もつけてくる人はいないのだろうと判断した。
「秋永君のおかげだね! もしかしたらあの人も、魔が差したかなんかでちょっとした出来心だったのかもしれないよ? だからきっと、秋永君が傍についてくれたことで目が覚めてくれたのかも!」
「……だといいけど。油断はしちゃだめだよ」
「うん、そうだね」
ホント、秋永君って心配性だなあ。二週間も姿を現していないんだから、きっともうあんな風に私のこと付け回そうだなんて考えていないだろうに。
「ねえ、秋永君」
「なに?」
「毎日毎日私のことこうやって送り届けてくれて、面倒くさくない?」
「はあ? そんなわけないだろ! ……未花ちゃんと話してるのは楽しいし、一緒にいるのだって……。未花ちゃんは、俺といるのが面倒くさいの?」
「ええっ? まさか、そんなことないよ! だけど秋永君とお家の方向違うから、また駅に戻って帰らなきゃならないでしょ? 悪いな……って、思ってるから」
「悪くなんて無いから! 俺には未花ちゃんのボディガードとしての誇りがあるんだからな!」
「誇りって……」
きゅうん。
あ、あれ? やだな。心臓の辺り、胸の近くが、甘く締め付けられるような変な痛みがあるよ?
「明日も明後日もこれからも、俺、未花ちゃんのこと送り続けるからな」
「……あ、うん」
……ああ、ヤダな。こんな甘やかされ方慣れてないから、すっごくもぞもぞするよ。秋永君の優しい表情までが恥ずかしいだなんて、本当に変だ。
今まで太陽を覆っていた雲が、どうやら風に流されてどこかに飛ばされてしまったらしい。陰っていた陽が、強く私たちを照らし始めた。さっきまで無かった私たちの影が斜めに伸びて、はっきりと寄り添っているように見える。
不思議だなあ、本当に。今の私は、秋永君がこうしてそばにいるのを当たり前のように感じているんだもの。
「あ、もう家だね。じゃあ、明日また駅でな」
「うん、ありがとう。また明日」
門を開けて中に入り、バイバイと手を振った。それに応えて秋永君も手を振り、元来た道を戻って行く。
「本当に、心配性……」
思わずクスリと笑みがこぼれた。だって秋永君ってば、私の想像の範疇をずっとずっと超えているんだもの。
初めて家まで送ってもらった時なんて、門の外でバイバイしようとしたら中に入ってって言われてキョトンとした。ほんの一歩の差なのに、敷地内か外かではだいぶ感じが違うってことらしい。子供じゃないのにね。
「でも、その過保護さ加減も、なんだかくすぐったく思っちゃうんだよな……」
そう呟いて、苦笑した。あれから一番変わったのは自分の方だ。ホント、笑っちゃう。
心配性な秋永君はさておき、ストーカーの心配から解放されたと同時に、自分の思いもよらない変化を自覚して、私はちょっぴり楽しい気分になっていた。
「やっぱ、ついて来てる気配無いね」
「……そうだね」
秋永君に家まで送ってもらった初日と同じように、角を曲がったところで待ち伏せするスタイルはもはや日課と化している。今もしばらく息を潜めるように、通り過ぎていく人たちを観察中だ。
だけど十五分が過ぎてもそれに該当する人が現れなかったので、今日もつけてくる人はいないのだろうと判断した。
「秋永君のおかげだね! もしかしたらあの人も、魔が差したかなんかでちょっとした出来心だったのかもしれないよ? だからきっと、秋永君が傍についてくれたことで目が覚めてくれたのかも!」
「……だといいけど。油断はしちゃだめだよ」
「うん、そうだね」
ホント、秋永君って心配性だなあ。二週間も姿を現していないんだから、きっともうあんな風に私のこと付け回そうだなんて考えていないだろうに。
「ねえ、秋永君」
「なに?」
「毎日毎日私のことこうやって送り届けてくれて、面倒くさくない?」
「はあ? そんなわけないだろ! ……未花ちゃんと話してるのは楽しいし、一緒にいるのだって……。未花ちゃんは、俺といるのが面倒くさいの?」
「ええっ? まさか、そんなことないよ! だけど秋永君とお家の方向違うから、また駅に戻って帰らなきゃならないでしょ? 悪いな……って、思ってるから」
「悪くなんて無いから! 俺には未花ちゃんのボディガードとしての誇りがあるんだからな!」
「誇りって……」
きゅうん。
あ、あれ? やだな。心臓の辺り、胸の近くが、甘く締め付けられるような変な痛みがあるよ?
「明日も明後日もこれからも、俺、未花ちゃんのこと送り続けるからな」
「……あ、うん」
……ああ、ヤダな。こんな甘やかされ方慣れてないから、すっごくもぞもぞするよ。秋永君の優しい表情までが恥ずかしいだなんて、本当に変だ。
今まで太陽を覆っていた雲が、どうやら風に流されてどこかに飛ばされてしまったらしい。陰っていた陽が、強く私たちを照らし始めた。さっきまで無かった私たちの影が斜めに伸びて、はっきりと寄り添っているように見える。
不思議だなあ、本当に。今の私は、秋永君がこうしてそばにいるのを当たり前のように感じているんだもの。
「あ、もう家だね。じゃあ、明日また駅でな」
「うん、ありがとう。また明日」
門を開けて中に入り、バイバイと手を振った。それに応えて秋永君も手を振り、元来た道を戻って行く。
「本当に、心配性……」
思わずクスリと笑みがこぼれた。だって秋永君ってば、私の想像の範疇をずっとずっと超えているんだもの。
初めて家まで送ってもらった時なんて、門の外でバイバイしようとしたら中に入ってって言われてキョトンとした。ほんの一歩の差なのに、敷地内か外かではだいぶ感じが違うってことらしい。子供じゃないのにね。
「でも、その過保護さ加減も、なんだかくすぐったく思っちゃうんだよな……」
そう呟いて、苦笑した。あれから一番変わったのは自分の方だ。ホント、笑っちゃう。
心配性な秋永君はさておき、ストーカーの心配から解放されたと同時に、自分の思いもよらない変化を自覚して、私はちょっぴり楽しい気分になっていた。
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