1 / 75
プロローグ
前編
しおりを挟む
満員電車は嫌い。そんなものに乗ると碌なことにならないから。だから私は、いつも出来るだけ朝早くに起きて、通学には空いた電車に乗るようにしている。
階段を上る私の目に、七時二十分発の電車が滑り込んできた。慌てて駆け上がり、電車へと飛び乗る。
「はあ~、間に合ったあ」
ハアッ、ハアッ、ハア。
全力疾走で階段を上ったせいで、いまだに息が落ち着かない。肩で息をしながらドアに凭れかかり、息が落ち着いてから空いている端の席に着いた。
さりげなく車内をぐるりと見まわしてみた。同じ車両に乗っているのは七人。私と同じ制服を着ている子が一人、端の方に座っている。そして会社員らしき人が六人で、そのうちの二人が男性だった。男性の感じはどちらもきちんとした身なりをしていて、世間体を気にするタイプに見えた。
そんな無難な自分の判断がなんだかおかしくて、クスリと小さく笑みをこぼす。
目を伏せて、シートに身を預けた。ゴトゴトと揺れる電車が心地いい。
ついうつらうつらとしそうになるけれど、私は未だかつてバスや電車で居眠りをしたことは無かった。それは私が小さな頃から受けてきた、あるトラウマのせいでもあるのだけれど。
「――間もなく、……に到着します」
アナウンスが、私が降りる駅に到着したことを知らせる。カバンを担いで電車を降りた。
「ふう……。着いた」
ホッとして軽く背伸びをして、改札へ向かおうと階段方向に足を向けた。それとほぼ同時に、後ろからいきなり誰かにムギュッと抱き着かれ、胸をグワシッとわしづかみにされた。
ザザザと駆け上がる悪寒。覚えのありすぎる理不尽な感覚に、反射的に勢いよく振り返って、思いっきりエルボーをくらわす。
「グワッ!」
しっかりと鳩尾に入ったそれは、さぞ痛かっただろう。呻きながら蹲り、男は涙目で私を睨んでいる。そいつは私がさっき世間体を気にするだろうと判断した、身だしなみをきちんとしていた会社員だった。
全く、これだから男なんてあてにならない!
「何睨んでるのよ! 怒ってるのはこっちなんだからね!」
未だにゾクゾクする腕や背中を擦りながら、腹立たしさに怒鳴りつけた。こんな奴、絶対に許してやってはだめだ。
「ちょっと来てよ、オジサン」
女子だからって舐められるのにはいい加減頭に来てるんだ。腰に手を当て仁王立ちになり、下から睨みつける変態を見下ろした。
階段を上る私の目に、七時二十分発の電車が滑り込んできた。慌てて駆け上がり、電車へと飛び乗る。
「はあ~、間に合ったあ」
ハアッ、ハアッ、ハア。
全力疾走で階段を上ったせいで、いまだに息が落ち着かない。肩で息をしながらドアに凭れかかり、息が落ち着いてから空いている端の席に着いた。
さりげなく車内をぐるりと見まわしてみた。同じ車両に乗っているのは七人。私と同じ制服を着ている子が一人、端の方に座っている。そして会社員らしき人が六人で、そのうちの二人が男性だった。男性の感じはどちらもきちんとした身なりをしていて、世間体を気にするタイプに見えた。
そんな無難な自分の判断がなんだかおかしくて、クスリと小さく笑みをこぼす。
目を伏せて、シートに身を預けた。ゴトゴトと揺れる電車が心地いい。
ついうつらうつらとしそうになるけれど、私は未だかつてバスや電車で居眠りをしたことは無かった。それは私が小さな頃から受けてきた、あるトラウマのせいでもあるのだけれど。
「――間もなく、……に到着します」
アナウンスが、私が降りる駅に到着したことを知らせる。カバンを担いで電車を降りた。
「ふう……。着いた」
ホッとして軽く背伸びをして、改札へ向かおうと階段方向に足を向けた。それとほぼ同時に、後ろからいきなり誰かにムギュッと抱き着かれ、胸をグワシッとわしづかみにされた。
ザザザと駆け上がる悪寒。覚えのありすぎる理不尽な感覚に、反射的に勢いよく振り返って、思いっきりエルボーをくらわす。
「グワッ!」
しっかりと鳩尾に入ったそれは、さぞ痛かっただろう。呻きながら蹲り、男は涙目で私を睨んでいる。そいつは私がさっき世間体を気にするだろうと判断した、身だしなみをきちんとしていた会社員だった。
全く、これだから男なんてあてにならない!
「何睨んでるのよ! 怒ってるのはこっちなんだからね!」
未だにゾクゾクする腕や背中を擦りながら、腹立たしさに怒鳴りつけた。こんな奴、絶対に許してやってはだめだ。
「ちょっと来てよ、オジサン」
女子だからって舐められるのにはいい加減頭に来てるんだ。腰に手を当て仁王立ちになり、下から睨みつける変態を見下ろした。
0
お気に入りに追加
64
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?
キミノ
恋愛
職場と自宅を往復するだけの枯れた生活を送っていた白石亜子(27)は、
帰宅途中に見知らぬイケメンの大谷匠に求婚される。
二日酔いで目覚めた亜子は、記憶の無いまま彼の妻になっていた。
彼は日本でもトップの大企業の御曹司で・・・。
無邪気に笑ったと思えば、大人の色気で翻弄してくる匠。戸惑いながらもお互いを知り、仲を深める日々を過ごしていた。
このまま、私は彼と生きていくんだ。
そう思っていた。
彼の心に住み付いて離れない存在を知るまでは。
「どうしようもなく好きだった人がいたんだ」
報われない想いを隠し切れない背中を見て、私はどうしたらいいの?
代わりでもいい。
それでも一緒にいられるなら。
そう思っていたけれど、そう思っていたかったけれど。
Sランクの年下旦那様に本気で愛されたいの。
―――――――――――――――
ページを捲ってみてください。
貴女の心にズンとくる重い愛を届けます。
【Sランクの男は如何でしょうか?】シリーズの匠編です。
警察官は今日も宴会ではっちゃける
饕餮
恋愛
居酒屋に勤める私に降りかかった災難。普段はとても真面目なのに、酔うと変態になる警察官に絡まれることだった。
そんな彼に告白されて――。
居酒屋の店員と捜査一課の警察官の、とある日常を切り取った恋になるかも知れない(?)お話。
★下品な言葉が出てきます。苦手な方はご注意ください。
★この物語はフィクションです。実在の団体及び登場人物とは一切関係ありません。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
彼が指輪を嵌める理由
mahiro
恋愛
顔良し、頭良し、一人あたり良し。
仕事も出来てスポーツも出来ると社内で有名な重村湊士さんの左薬指に指輪が嵌められていると噂が流れた。
これはもう結婚秒読みの彼女がいるに違いないと聞きたくもない情報が流れてくる始末。
面識なし、接点なし、稀に社内ですれ違うだけで向こうは私のことなんて知るわけもなく。
もうこの恋は諦めなきゃいけないのかな…。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。
石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。
すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。
なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる