接近禁止!なのにその壁を、溺愛男子に破られました

らいち

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プロローグ

前編

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 満員電車は嫌い。そんなものに乗ると碌なことにならないから。だから私は、いつも出来るだけ朝早くに起きて、通学には空いた電車に乗るようにしている。

 階段を上る私の目に、七時二十分発の電車が滑り込んできた。慌てて駆け上がり、電車へと飛び乗る。

「はあ~、間に合ったあ」

 ハアッ、ハアッ、ハア。
 全力疾走で階段を上ったせいで、いまだに息が落ち着かない。肩で息をしながらドアに凭れかかり、息が落ち着いてから空いている端の席に着いた。

 さりげなく車内をぐるりと見まわしてみた。同じ車両に乗っているのは七人。私と同じ制服を着ている子が一人、端の方に座っている。そして会社員らしき人が六人で、そのうちの二人が男性だった。男性の感じはどちらもきちんとした身なりをしていて、世間体を気にするタイプに見えた。

 そんな無難な自分の判断がなんだかおかしくて、クスリと小さく笑みをこぼす。

 目を伏せて、シートに身を預けた。ゴトゴトと揺れる電車が心地いい。

 ついうつらうつらとしそうになるけれど、私は未だかつてバスや電車で居眠りをしたことは無かった。それは私が小さな頃から受けてきた、あるトラウマのせいでもあるのだけれど。

「――間もなく、……に到着します」

 アナウンスが、私が降りる駅に到着したことを知らせる。カバンを担いで電車を降りた。

「ふう……。着いた」

  ホッとして軽く背伸びをして、改札へ向かおうと階段方向に足を向けた。それとほぼ同時に、後ろからいきなり誰かにムギュッと抱き着かれ、胸をグワシッとわしづかみにされた。
 ザザザと駆け上がる悪寒。覚えのありすぎる理不尽な感覚に、反射的に勢いよく振り返って、思いっきりエルボーをくらわす。

「グワッ!」

 しっかりと鳩尾に入ったそれは、さぞ痛かっただろう。呻きながら蹲り、男は涙目で私を睨んでいる。そいつは私がさっき世間体を気にするだろうと判断した、身だしなみをきちんとしていた会社員だった。

 全く、これだから男なんてあてにならない!

「何睨んでるのよ! 怒ってるのはこっちなんだからね!」

 未だにゾクゾクする腕や背中を擦りながら、腹立たしさに怒鳴りつけた。こんな奴、絶対に許してやってはだめだ。

「ちょっと来てよ、オジサン」

 女子だからって舐められるのにはいい加減頭に来てるんだ。腰に手を当て仁王立ちになり、下から睨みつける変態を見下ろした。
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