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第六章
男前な彼女 2
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「梓…」
僕の呟きに宇野が大きく反応する。
後ろを振り返って梓を確認し、「なんで…」とつぶやいた。
「あたしは、宇野さんが由…由紀也を好きになるのは止めることは出来ない。でも、だからと言って渡す気はないの。あたしにとって由紀也は、一番大切で大好きな人だから」
梓は真正面から宇野を見て、はっきりとした口調で話している。その凛とした瞳に宇野は圧倒されているようだった。
そしてハアッと息を吐いた。
その宇野の表情は先ほどと違い、まるで毒気の抜けたような感じだ。
「あ~あ、やんなっちゃう。美人でカッコいいって嫌味よね」
「え?」
宇野の言葉に梓はキョトンと目を丸くしている。
「…何この反応」
梓の表情を見た宇野が、僕に振り返って問いかける。
「…自覚ないから」
「はあ?」
相変わらず目を丸くしたままの梓に、「参った…」と宇野は呟いた。
「由紀也に見る目があったって事だよね」
そう言って僕から梓に視線を移した宇野は、「もう横やり入れたりしないから。…でも、好きでいるのは良いよね?」と言った。
梓はその言葉に、一瞬ピクンと揺れる。でも、宇野に向かいしっかりと言った。
「ダメって言いたいけど、気持ちって自分で何とかなるわけじゃないもんな…。仕方ないとしか…言えないかな」
「そっか。うん、だよね…」
そしてクルッと僕の方に向き直った。
「公演、見に行くから頑張ってね。応援してるから!」
そう言った宇野の表情は、久しぶりに晴れ晴れとしている。
「ありがとう、頑張るよ」
僕が笑顔でそう返すと、宇野は明るく笑って「じゃあね」と門から出て行った。
今まで愚図ついていた気持ちが、一挙に晴れたような気分だ。
振りかえると梓が、微妙な顔で僕を見ていた。
「梓?」
「モテるよね、由紀って。学校では男に、プライベートでは女に。何なのもう」
「え、いや…」
す、拗ねてるのか?
どうしようと焦っていると、梓がぷっと噴出した。
「いいよ、もう。今の顔で溜飲が下がった」
「え~、なんだよもう、びっくりするだろー」
僕が剥れると更に楽しそうに笑うから、僕もつられて笑ってしまった。
梓はやっぱり笑っている方がいい。
それだけで、僕の気持ちは癒されるんだよな。
「ああ、そうそう。公演の初日に行くからな」
「え? 初日なの?」
「うん、だって、初日ってなんか特別な感じするだろ? 本当は千秋楽だと良かったんだけど、その日は都合が悪くてさ」
「そう…か」
「夜、会おうな」
「…母さんも一緒になると思うけど、いい?」
梓が笑いを堪えるような顔で聞いてくる。
「いいよ。大歓迎」
僕はそう言って、そっと梓を引き寄せ抱きしめた。
僕の呟きに宇野が大きく反応する。
後ろを振り返って梓を確認し、「なんで…」とつぶやいた。
「あたしは、宇野さんが由…由紀也を好きになるのは止めることは出来ない。でも、だからと言って渡す気はないの。あたしにとって由紀也は、一番大切で大好きな人だから」
梓は真正面から宇野を見て、はっきりとした口調で話している。その凛とした瞳に宇野は圧倒されているようだった。
そしてハアッと息を吐いた。
その宇野の表情は先ほどと違い、まるで毒気の抜けたような感じだ。
「あ~あ、やんなっちゃう。美人でカッコいいって嫌味よね」
「え?」
宇野の言葉に梓はキョトンと目を丸くしている。
「…何この反応」
梓の表情を見た宇野が、僕に振り返って問いかける。
「…自覚ないから」
「はあ?」
相変わらず目を丸くしたままの梓に、「参った…」と宇野は呟いた。
「由紀也に見る目があったって事だよね」
そう言って僕から梓に視線を移した宇野は、「もう横やり入れたりしないから。…でも、好きでいるのは良いよね?」と言った。
梓はその言葉に、一瞬ピクンと揺れる。でも、宇野に向かいしっかりと言った。
「ダメって言いたいけど、気持ちって自分で何とかなるわけじゃないもんな…。仕方ないとしか…言えないかな」
「そっか。うん、だよね…」
そしてクルッと僕の方に向き直った。
「公演、見に行くから頑張ってね。応援してるから!」
そう言った宇野の表情は、久しぶりに晴れ晴れとしている。
「ありがとう、頑張るよ」
僕が笑顔でそう返すと、宇野は明るく笑って「じゃあね」と門から出て行った。
今まで愚図ついていた気持ちが、一挙に晴れたような気分だ。
振りかえると梓が、微妙な顔で僕を見ていた。
「梓?」
「モテるよね、由紀って。学校では男に、プライベートでは女に。何なのもう」
「え、いや…」
す、拗ねてるのか?
どうしようと焦っていると、梓がぷっと噴出した。
「いいよ、もう。今の顔で溜飲が下がった」
「え~、なんだよもう、びっくりするだろー」
僕が剥れると更に楽しそうに笑うから、僕もつられて笑ってしまった。
梓はやっぱり笑っている方がいい。
それだけで、僕の気持ちは癒されるんだよな。
「ああ、そうそう。公演の初日に行くからな」
「え? 初日なの?」
「うん、だって、初日ってなんか特別な感じするだろ? 本当は千秋楽だと良かったんだけど、その日は都合が悪くてさ」
「そう…か」
「夜、会おうな」
「…母さんも一緒になると思うけど、いい?」
梓が笑いを堪えるような顔で聞いてくる。
「いいよ。大歓迎」
僕はそう言って、そっと梓を引き寄せ抱きしめた。
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