修行のため、女装して高校に通っています

らいち

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第六章

やっかいな恋心 2

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パンパン。
「はい、十五分ほど休憩!」

親父が手を叩き休憩の合図をすると、みんな隅に置いてあるテーブルへと向かっていく。
テーブルには麦茶と茶菓子が準備されていた。

「由紀也、はい」

母さんが気を遣って、宇野と僕の分の麦茶と茶菓子をお盆に乗せて立っていた。

…宇野の相手をしろと言うことですよね…。
分かってますよ。

思わずため息を吐いてしまった僕に、母さんがあからさまにうんざりしたような顔をする。

「あんたの蒔いた種なんでしょ? ちゃんとしなさいよ」
「だから、僕はとっくに断ってるんだよ」

すると母さんは目を見開いて驚いた顔をする。

「そうなの? …困ったわね。知ってたら見学は出来ないって断ってあげられたのに」
「しょうがないよ、知らなかったんだし。まあ期待は持たせないようにするから」

僕はお盆を母さんから受け取って、宇野の方へと近寄って行った。

「いらっしゃい」

お盆を宇野の横に置き、僕はその隣に座った。
意地悪をするつもりは無いのだけど、以前会った時の宇野の印象が強すぎて、おそらく僕の表情はあまりにこやかではない。

「…怒ってるの? 由紀也」
それに気が付いたのだろう宇野は、気まずそうに僕に声をかけた。

「そうじゃないけど…、戸惑ってはいるよ」

宇野に対して言葉をオブラートで包んでしまうと後々厄介な事になりそうなので、僕は出来るだけストレートな言葉をぶつけることにした。その甲斐あってか(?)宇野の顔が曇る。

「…だって、好きなんだもん。由紀也とは高校違ってなかなか会えないから、その内気持ちが薄れてくるんじゃないかと思っていたのに、今でも由紀也の事忘れられないし…。私だって苦しいんだよ」

いつもの元気さは無く、宇野は俯いて小さな声で訴えた。
その様子があまりにも痛々しくて、僕は過度に誤解されてもまずいと思い、さっきの言葉のフォローをすべく言葉を続けた。

「僕だって宇野の事を嫌いってわけじゃないんだよ。ただ、宇野に対する気持ちはやっぱり友達どまりで、それ以上の感情にはなれないだけなんだ」

僕がそう言うと、宇野は顔を上げて少し潤んだ目で僕を見た。

「分かってるよ。…でも好きなのは仕方ないでしょ? 由紀也だったらもし振られたら、その人に会わないでいられるの?」

宇野にそう言われて、僕はちょっと考えてみた。
もし、相手に自分の事を好きじゃない、付き合ってる人がいるんだと言われたとしたら…?

…そう簡単に思いを捨てることは出来ないかもしれない。
真っ直ぐ僕を見て素直に気持ちをぶつけてくる宇野に、僕は何も言えなくなってしまった。
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