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第五章
友達だろ?1
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昼休みに入ったと同時に、僕は佐藤を教室の外へと連れ出す。
「何だ、どうした」
「実は…」
僕は佐藤に小田が田本を好きで、協力してほしいと言われているということを話した。ダブルデートをして欲しいと言われていることも。
「ダブルデートねえ…。遊びに行くのは、俺としては別に構わないけど」
「…」
「由紀の方には問題があるんだ」
「うん…。実は夏休みに僕舞台に立つことになっていて、稽古三昧になるから、皆と遊んでる時間が無いんだ」
「へえ? 凄いな」
「…いや、まあ。たいしたことでは無いんだけどさ…」
佐藤は僕の話しを聞いた後、何故か僕の目をじっと見つめる。
「なあ由紀」
「何?」
「行きたくない理由は本当にそれだけか?」
「え…」
な、なんだよ。まるで僕が隠し事してるみたいな言い方じゃないか。
いや、実際隠し事してはいるんだけどさ。
『佐藤は聡いから』
以前のまどかの言葉を思い出してしまい、ちょっと冷や汗…。
佐藤に真正面からじーっと見られる。余りにもじっと見られるので僕はつい視線を揺らしてしまった。あー、嫌な汗がつたう…。
「分かった! 言う。白状するよ」
僕が観念すると、佐藤は方眉を上げて小首を傾げた。
「実は僕…、梓と付き合ってるんだ」
「え!? 牧野と?」
佐藤はさもびっくりしたといった感じで、目を見開く。
「うん、ずっと片思いしてたんだけど、休み中に告白して付き合ってもらえることになった」
「ぜんっぜん気が付かなかった…」
佐藤はちょっと呆然としているような表情だ。
「うん、だって男だってばれちゃまずいから、それは色々と気を付けてたから」
「それなら俺に隠す事なんてないのに。俺は由紀が男だってもう知ってるんだから、言ってくれても良かっただろ?俺たち友達なんじゃなかったのか?」
「もちろん友達だよ! だけど…なんていうか、色々有っただろ?男だって事黙ってて、佐藤君にも迷惑かけたし…。だからちょっと言いにくくて…」
気にする事なんて無い事だってことくらい、僕だってちゃんと分かってはいるんだ。だけど幼馴染の2人に嫉妬したり、佐藤が僕の事を好きになったりとか、色々ややっこしい事があったから、何となく言いづらいと思ってしまったんだよな…。
バツの悪い気持ちで佐藤の事を上目づかいに見ていたら、佐藤はため息を吐きながら僕の頭をぐしゃぐしゃと撫でまわした。
「え、さ、佐藤君?」
「由紀の気持ちは分かった。まあ、変に俺に気を使ってしまったんだろうけど、もうそれは過去の話しなんだから、これからは流せ。分かったな」
「う、うん!」
僕の気持ちはぐんぐん浮上してきた。佐藤、なんていい奴なんだお前は!
「僕、もし女の子だったら絶対佐藤に惚れてる」
「あー、はいはい」
僕の半分本気の戯言は、佐藤に適当にいなされた。
「何だ、どうした」
「実は…」
僕は佐藤に小田が田本を好きで、協力してほしいと言われているということを話した。ダブルデートをして欲しいと言われていることも。
「ダブルデートねえ…。遊びに行くのは、俺としては別に構わないけど」
「…」
「由紀の方には問題があるんだ」
「うん…。実は夏休みに僕舞台に立つことになっていて、稽古三昧になるから、皆と遊んでる時間が無いんだ」
「へえ? 凄いな」
「…いや、まあ。たいしたことでは無いんだけどさ…」
佐藤は僕の話しを聞いた後、何故か僕の目をじっと見つめる。
「なあ由紀」
「何?」
「行きたくない理由は本当にそれだけか?」
「え…」
な、なんだよ。まるで僕が隠し事してるみたいな言い方じゃないか。
いや、実際隠し事してはいるんだけどさ。
『佐藤は聡いから』
以前のまどかの言葉を思い出してしまい、ちょっと冷や汗…。
佐藤に真正面からじーっと見られる。余りにもじっと見られるので僕はつい視線を揺らしてしまった。あー、嫌な汗がつたう…。
「分かった! 言う。白状するよ」
僕が観念すると、佐藤は方眉を上げて小首を傾げた。
「実は僕…、梓と付き合ってるんだ」
「え!? 牧野と?」
佐藤はさもびっくりしたといった感じで、目を見開く。
「うん、ずっと片思いしてたんだけど、休み中に告白して付き合ってもらえることになった」
「ぜんっぜん気が付かなかった…」
佐藤はちょっと呆然としているような表情だ。
「うん、だって男だってばれちゃまずいから、それは色々と気を付けてたから」
「それなら俺に隠す事なんてないのに。俺は由紀が男だってもう知ってるんだから、言ってくれても良かっただろ?俺たち友達なんじゃなかったのか?」
「もちろん友達だよ! だけど…なんていうか、色々有っただろ?男だって事黙ってて、佐藤君にも迷惑かけたし…。だからちょっと言いにくくて…」
気にする事なんて無い事だってことくらい、僕だってちゃんと分かってはいるんだ。だけど幼馴染の2人に嫉妬したり、佐藤が僕の事を好きになったりとか、色々ややっこしい事があったから、何となく言いづらいと思ってしまったんだよな…。
バツの悪い気持ちで佐藤の事を上目づかいに見ていたら、佐藤はため息を吐きながら僕の頭をぐしゃぐしゃと撫でまわした。
「え、さ、佐藤君?」
「由紀の気持ちは分かった。まあ、変に俺に気を使ってしまったんだろうけど、もうそれは過去の話しなんだから、これからは流せ。分かったな」
「う、うん!」
僕の気持ちはぐんぐん浮上してきた。佐藤、なんていい奴なんだお前は!
「僕、もし女の子だったら絶対佐藤に惚れてる」
「あー、はいはい」
僕の半分本気の戯言は、佐藤に適当にいなされた。
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