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第五章
公言できなくても彼女だから2
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「由紀」
後ろから声をかけられて振り返ると、小田が立っていた。
「小田さん、おはよう。何?」
「おはよう。…あのね、この前一緒にダブルデートしてって言ったでしょ?」
「ああ、うん」
「あの時は由紀は佐藤君の事好きじゃないからって断ったけど、今は付き合ってるんだよね」
「…まあ」
小田の言いたいことが分かってしまった。
「今なら、OKしてくれるよね?」
「あー、えーと…」
チラッと梓を窺うと、案の定少し拗ねたような顔をしている。
まずいよな、やっぱ。
いくら表面には出せない関係とはいえ、彼女をほっといて別の面々でデートとか…。
僕がされてもやっぱり嫌な気分になるし。
「…佐藤君に相談してからね」
「ありがとう! お願いね!」
期待に満ちた顔で、小田が僕の手を握った。
振りほどくわけにもいかないので、僕は曖昧に乾いた笑いを溢すしかなかったのだ…。
まどかが教科書を忘れたと言って、隣のクラスに借りに行っている最中、僕と梓は先ほどの件で話をしていた。
「…行くの? さっきのアレ」
「行く気はないよ。本当のところ、あんまり遊んでる時間は取れそうにないんだよな。言ったろ? 夏の公演には出るって。その稽古に今入っていて、めちゃくちゃしんどい最中なんだよ」
「…そうなんだ」
「そ。だからもし休みが取れるんなら、そんな他人のデートじゃなくて梓とデートに行くし。な?」
僕が同意を求めると、一瞬梓の表情が止まり、はにかんだ笑顔に変わって行った。
可愛い!
あ~失敗したなあ。まどかキャラにしていれば、思いっきり梓に抱き付けたのに!
だけど、由紀キャラでも出来ることはある。
僕は何気に梓の腕にすがり、甘えたように頭を梓の方に傾けた。そして誰にも聞かれないくらいの小声で、梓に言う。
「可愛い梓。誰も居なかったら抱きしめたのに」
途端にピクンと揺れる体。見ると顔も真っ赤になっていた。
…失敗したかも…。
僕は慌てて梓を引っ張って、教室から連れ出した。
「ちょ、由紀?」
「ごめん、見せたくなかった」
「え?」
「…みんなに、梓のその可愛い顔…見せたくなかったから」
「由…紀」
「は~っ」
僕は壁にもたれて手で額を覆い、顔を上げた。
そんな僕の様子を梓がキョトンと見ている。
「知らなかった。僕って結構、独占欲が強いみたいだ」
梓は目をぱちぱちさせ、小首を傾げる。
やっぱ自覚ないか。
「大好きなんだよな、梓の事」
「…バカ」
梓は視線を下に落とす。耳まで真っ赤になっていた。
「そんなの、あたしだって一緒だ」
このままずっと梓と二人だけで一緒に居たいけど、そろそろ授業が始まる。
「そろそろ戻ろうか」
「そうだね」
僕は梓の手を引いて教室へと戻った。
女の子同士ってこういう時、便利だよなーと、梓の手をギュッと握りしめながら。
後ろから声をかけられて振り返ると、小田が立っていた。
「小田さん、おはよう。何?」
「おはよう。…あのね、この前一緒にダブルデートしてって言ったでしょ?」
「ああ、うん」
「あの時は由紀は佐藤君の事好きじゃないからって断ったけど、今は付き合ってるんだよね」
「…まあ」
小田の言いたいことが分かってしまった。
「今なら、OKしてくれるよね?」
「あー、えーと…」
チラッと梓を窺うと、案の定少し拗ねたような顔をしている。
まずいよな、やっぱ。
いくら表面には出せない関係とはいえ、彼女をほっといて別の面々でデートとか…。
僕がされてもやっぱり嫌な気分になるし。
「…佐藤君に相談してからね」
「ありがとう! お願いね!」
期待に満ちた顔で、小田が僕の手を握った。
振りほどくわけにもいかないので、僕は曖昧に乾いた笑いを溢すしかなかったのだ…。
まどかが教科書を忘れたと言って、隣のクラスに借りに行っている最中、僕と梓は先ほどの件で話をしていた。
「…行くの? さっきのアレ」
「行く気はないよ。本当のところ、あんまり遊んでる時間は取れそうにないんだよな。言ったろ? 夏の公演には出るって。その稽古に今入っていて、めちゃくちゃしんどい最中なんだよ」
「…そうなんだ」
「そ。だからもし休みが取れるんなら、そんな他人のデートじゃなくて梓とデートに行くし。な?」
僕が同意を求めると、一瞬梓の表情が止まり、はにかんだ笑顔に変わって行った。
可愛い!
あ~失敗したなあ。まどかキャラにしていれば、思いっきり梓に抱き付けたのに!
だけど、由紀キャラでも出来ることはある。
僕は何気に梓の腕にすがり、甘えたように頭を梓の方に傾けた。そして誰にも聞かれないくらいの小声で、梓に言う。
「可愛い梓。誰も居なかったら抱きしめたのに」
途端にピクンと揺れる体。見ると顔も真っ赤になっていた。
…失敗したかも…。
僕は慌てて梓を引っ張って、教室から連れ出した。
「ちょ、由紀?」
「ごめん、見せたくなかった」
「え?」
「…みんなに、梓のその可愛い顔…見せたくなかったから」
「由…紀」
「は~っ」
僕は壁にもたれて手で額を覆い、顔を上げた。
そんな僕の様子を梓がキョトンと見ている。
「知らなかった。僕って結構、独占欲が強いみたいだ」
梓は目をぱちぱちさせ、小首を傾げる。
やっぱ自覚ないか。
「大好きなんだよな、梓の事」
「…バカ」
梓は視線を下に落とす。耳まで真っ赤になっていた。
「そんなの、あたしだって一緒だ」
このままずっと梓と二人だけで一緒に居たいけど、そろそろ授業が始まる。
「そろそろ戻ろうか」
「そうだね」
僕は梓の手を引いて教室へと戻った。
女の子同士ってこういう時、便利だよなーと、梓の手をギュッと握りしめながら。
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