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第四章

付き合って下さい2

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僕は梓の手をギュッと握りしめた。

「梓」
「…」

呼ばれた梓は何も返事はしなかったけど、しっかり僕の目を見つめ返してくれる。

「僕と付き合って」
「由紀…」
「ね?」

ニコリと笑って小首を傾げ、おねだりしてみる。

途端にぶわっと、梓の顔がこれでもかというくらい真っ赤になった。

あ~、ホント可愛い!
この手を引き寄せて、ギューッてしたい!
(もちろんこんな道の真ん中で、絶対しないけど!)

きゅっ。
へ?

梓が僕の手を握り返してきたのだ。

「あ、あたしも…」

普段の梓からは想像もつかない、絞り出すような声が聞こえてきた。

決心したような梓の目がこちらを見ている。

「あたしも由紀の事が…好き、だから」
「あず……、さ」

ぎゅううううううっ。

ほんの二、三分前には、人前では絶対しないと思っていたことを、僕は今やっていた。
気が付いたら体が、というか僕の腕が梓を引き寄せ思いっきり抱きしめていたのだ。

だって、仕方ないだろう? 
余りにも嬉しすぎて、何が何だかわけわかんない事になってしまっていたんだから(僕の頭が!)。

びっくり仰天で驚いたのは梓の方だった。僕の腕の中で、慌てて思いっきり抵抗して、僕を引きはがす。

「バ、バカッ。何してんだよ、ひ…人いるし!」

思いっきり睨みつけてきているけど、真っ赤な顔では可愛いだけだ。僕は頬が緩むのを抑えられない。

「ごめん、嬉しすぎて理性が飛んだ。怒らないで?」

きっと僕の今の顔は、蕩けるようになっているんだと思う。梓は一瞬呆けた顔をして、目線をずらした。

「…別に、怒ってなんかない…」

拗ねたような口調が可愛すぎる。おかげで僕はなけなしの理性を総動員させる羽目に陥っている。
だけど梓は僕がそんな状態になっているなんて気が付いてもいないんだろうなあ…。

僕は梓の手をキュッと握りなおした。

「梓、送ってく」
「え?」

何言ってんの?って顔で梓が僕を見た。

そりゃそうだ。だって今、僕は梓に駅まで送ってもらっている途中なのだから。
だけどやっぱり彼氏としては、大事な彼女を送っていく権利があるだろう。

「梓の彼氏だから、梓を家まで送って行きたい」
「由…紀」
「良いよな?」

梓の顔を覗き込むと、何も言わずにコクンと頷いた。
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