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第四章

初めての訪問2

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「ありがとうございました」

いよいよ今日だ。稽古が終わり前田さんに挨拶をしている僕。
そわそわしているのが分かったのか、前田さんが少し笑いながら僕を見ていた。

「由紀也君は今日、不思議なテンションでしたね」
「え!」

しっかり集中しようと頑張っていたけど、浮ついてたんだろうか。
焦って前田さんに目を向けたが、どうやらニュアンスが違うらしい。穏やかに笑っていて、呆れているような感じはしない。

「稽古を始める前、ふわふわした感じだったので心配してましたけど、稽古に入った途端、ちゃんと切り替えられてましたよね。かと思うと休憩に入った途端、またふわふわしてしまってて…」

思わず僕は目をぱちぱちさせてしまった。

何だか恥ずかしい…。僕ってそんなに態度に出るタイプだったんだ…。

前田さんはクスッと笑って、僕の頭をくしゃくしゃ撫でた。

「良いと思いますよ。楽しんできてくださいね」
「あー、はい」

僕は顔が熱くてしょうがなかった。ざっと汗を流すためシャワーを浴びて、支度にかかる。

ケーキは止めにして、ゼリーでも買っていこう。○○屋で確かフルーツゼリーの詰め合わせが売っていたはずだ。
そう決めて僕は、勢いよく玄関を飛び出した。

駅に着くと、梓がすでに改札口で待っていた。

「ごめん、待った?」
「大丈夫、今来たとこだから」

梓は僕が手にしている紙の手提げ袋に目をやって、眉を下げる。

「気ぃ遣わなくて良かったのに…」
「いや、大したものじゃないから。それこそ気にしないで」

僕がそう言っても、梓は気にしている様子で未だ手提げに目をやっている。
僕は梓の気をそらそうと、以前から気になっていたことを梓に聞くことにした。

「そう言えばさ、佐藤君と幼馴染なんだよな。それってお隣さんだったりするの?」
「え? ああ、そうだよ」
「良いよなー、そう言うの。佐藤君と交代したいよ」
「ええっ? …由紀には幼馴染っていないのか?」
「特にそういう子はいないな。僕の近所には歳の近い子はいなかったから」
「そうなんだ…。まあでも、佐藤みたいにモテる奴が近くにいると、それなりに面倒臭かったりするぞ?」
「ああ、嫉妬の対象か」

「それだけじゃなくて、佐藤とお近づきになりたいから協力してとかさ。チョコレート渡したいからお膳立てしてくれとか、とかとか…」

「あー…」
「だいたい佐藤はああ見えて、遊びとかで簡単に付き合おうとかするタイプじゃないからさ、ダメなものはダメだって感じで。あたしはよく佐藤と女の子の間で板挟みで苦労させられたわけよ」

「な、なるほど…」
「あ、そこ。あたしんち。で、あれが佐藤の家」
「へえー、結構近いな。あれくらいだと頑張れば二階の窓から飛び移れそうだ」
「した事は無いぞ」

梓はおかしそうに笑いながら、僕を家に案内してくれた。
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