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第四章

彼氏と彼女みたい

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で、今僕は梓と一緒にショップの中。いるわ、いるわ。
…え?
何がいるかって? 

女の子です。あっちにも、こっちにも…。
Tシャツを体に当てて友達と楽しそうに見繕っていたり、バックを見ながら楽しそうにはしゃいでいたり。もう女の子ばっかり。
ざっと見回してみたけれど、どうやらこの店内には男の客は僕だけみたいだ。

そのせいだろう。時々ちらちらとこちらを気にする様に視線が飛んでくる。

「こういうとこって男がいると目立つんだね」
余りの居心地の悪さに、梓に小さな声で訴えてみた。

「…まあ、そうだけど、由紀だから尚更じゃない?」
「え?」
「だって由紀、美少年だし。下手な女の子より綺麗だからな」

僕がぽかんとしていると、更に笑って付け足した。

「あたしよりかは、ずっと綺麗だし」
「それは無い」

間髪入れずに否定すると、梓は失笑した。僕はそれにちょっと呆れる。

「…梓自分の事、全然わかってないな」
「…」

まあ、自覚が無い人にいろいろ言っても埒が明かないだろうから、先に進むことにする。

「で? どこみたいんだ?」

もしかしたら梓も同じことを考えていたのかもしれない。

「ああ、あっち」

やれやれといった顔をして、アクセサリー売り場に僕を案内した。

可愛い花の形のネックレスが綺麗に並んでいる。
梓はその中からいくつか手に取りながら、悩んでいるようだった。

「どれが良いと思う?」

掌にそれぞれ乗せたまま、僕の方に差し出した。
単体の花がピンク色の物と、同じ形状で黒い色の物。そして花でキューブを形作っているもので、色はピンクゴールド。

「うーん、これはピンクよりは黒の方が良いかな。でもこっちのキューブ状の物も捨てがたいし」

僕はその二つを手に取って、どれが梓により合うかと見比べてみる。

「どっちも良い感じだけど、色的にはピンクゴールドの方がより映えて良いかもしれないな」
「そっか。じゃあそれにしようかな」

梓はネックレスを受け取ろうと、僕の前に手を出してきた。だけど僕はそれをやんわりと回避して、ネックレスを手にしたまま梓に話しかける。

「もう見たいのは無いの?」
「ああ、買う気はないけどいろいろ見てみたいけど…。由紀はこの雰囲気大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。だいぶ慣れた。だいたいこういう所って普段来れないから探検気分かな」
「そっか。じゃあバッグとか見ていい?」
「うん」

僕はもちろん承諾して、楽しそうに商品を手に取る梓に付き合った。
そんな僕らにちらちらと相変わらず視線が飛んでは来るけれど、僕はそれも含めて楽しむことにする。
だって、きっとその視線を浴びせかける人たちの目には、僕らは恋人同士に見えているんだろうと思うと、それだけで気分が良かったりするから。

「そろそろ会計しようかな。由紀、それ頂戴」
「あ、いいよ。僕にプレゼントさせて?」
「え!? ダメだよ、そんなつもりじゃなかったし!」

慌てて梓は僕からネックレスを奪おうとするけれど、僕はスッとそれを梓から遠ざけた。

「初デート記念って事で。良いだろ?」

ちょっと強引かもしれないと、内心では凄いドキドキしている。引かれなきゃいいけど…。

「いや…でも」
「…迷惑?」
「そんな事ないっ!」

ちょっと焦ったように否定する梓に、僕はホッとした。

「じゃあそうさせて?」

わざと甘えるような口調で言ってみる。案の定、梓は少し拗ねたような表情に変わった。

「由紀何か狡い」

僕は梓に苦笑いを返してレジへと向かった。
プレゼント用に包装してもらって、店を出たところで梓に渡す。
梓はちょっと仕方ないなといった感じで苦笑しながら受け取った。

「ありがとう。お返しにはならないけど、明日はお母さんに美味しい料理たくさん作ってもらうから」
「あはは、期待してる。でも無理しないで良いよ。お家の方がオッケーしてくれたら喜んでお伺いするから」
「大丈夫。絶対オッケーするから、むしろ食いつくレベルだ」
「食いつくって…」

僕はおかしくなって笑い転げてしまった。

その後、○タヤによっていろいろ物色。梓がDVDを見ている内に、僕はコミックを一冊購入。
一人の時間の暇つぶしにするためだ。

気が付いたら時間はあっという間で、もう夕方になっていた。
そろそろ梓を家に返さないといけない。家の人の心証を悪くするのは本意ではないし。

出だしに変なお邪魔虫に遭遇してしまったけれど、総じて楽しい時間を過ごすことが出来た。

僕は梓を駅まで送って、家路へと着いた。
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