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第四章

こっちが本性です1

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「今日帰ったら、母さんに言っとくな」
「うん。じゃあ僕は化粧…。あ!」

あ~、ダメじゃん。それ。

「梓、無理だ」
「え?」
「…姉さんがいない」
「あ」
「化粧できないから、女装は無理だ…」

浮上していた気持ちが、ぽしゃけてしまった。
梓も同じ気持ちだったのだろう、落胆したような顔で僕の事をじっと見ていた。んだけど、何か気が付いたような顔になる。

「由紀さ、雪乃丞だってことは伏せてたりするのか?」
「いや。中学までは普通に通っていたし、むしろ知ってる奴の方が多かったと思うけど」
僕がそう言うと、梓は意味深に笑った。

「じゃあさ、雪乃丞を連れてくるってお母さんに言ってもいいか?」
「え? 別にかまわないけど…?」
「実はさ、お母さん、雪乃丞を結構気に入ってたりするんだよ」
「え!?」

これは本当にびっくりしてしまった。梓のお母さんが僕…いや雪乃丞を?

「実はさ、去年二回ほど舞台を見に行ってるんだよ。それでね、綺麗~だの、美しい~だのって、はしゃいで大変だった」
梓はいたずらっ子のように楽しそうに笑っている。

「だから雪乃丞が来るって事なら、きっと熱烈歓迎で夕飯の支度もしてくれると思うよ」

僕は呆けてしまった。

「ええっと…。なんか申し訳ないな…」
「何で?」
「いや…。僕の芸はまだまだだって親父に言われてるからさ。もっと頑張んなきゃなって思って」
「…そっか。でも、あたしも雪乃丞に…ドキドキしたけどな」

そう言って僕を見つめながら笑う梓に僕の頬が熱くなる。

「ありがと…」

ドキドキって…。
単なる舞台を見ての高揚感かもしれないけど、こっちの方がドキドキするよ。



食事を済ませて店を出ると、さっきの2人が店の外で待っていた。

「牧野」
椎名が梓に声をかけて近寄ってくる。

「え? 待ってたの?」
「うん、久しぶりだしさ。一緒に遊びたいなと思って」

冗談じゃないぞ!
今日は待ちに待った梓とのデートだっていうのに!

「でも…」
梓は言いよどみながら僕を振り返った。

「何?もしかして付き合ってるわけ?」
「あ、いや…。そう言うわけじゃ、ないけど」
「だったら良いだろ? 人数多い方が楽しいしな?」

椎名はもう一人の林とかいう奴に同意を求める。

「おう」
「悪いけど!」

僕が口を挿むように大きな声を出すと、三人が僕に視線を向けた。


「せっかく梓とのデートにこぎつけたんだから、邪魔しないでくんない?」
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