修行のため、女装して高校に通っています

らいち

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第三章

佐藤との密約1

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「…付き合うふり?」
「そ、お互いにとって、メリットがあると思うんだけど」

メリットって何?
僕は佐藤が何を言いたいのか正直見当もつかない。複雑な表情で佐藤を見ていると、苦笑交じりに教えてくれた。

「沢村ってさ、本当に鈍感なんだな」
「鈍感って何だよ」

僕はムッとしてしまう。
そりゃ、佐藤みたいに他人の心の機微みたいなものまで分かったりしないけどさ。

「沢村の事を好きなのは、西村だけじゃないってこと」
「へ?」

佐藤の脈絡のない言葉にぽかんとする。
そんな僕に呆れた顔を見せながら、やっぱりなと佐藤はつぶやいていた。

「いいか? 思い出してみろよ。西村が沢村をバニーに押したとき、他の男子もかなりの数が賛成しただろ?」
「うん。便乗されてからかわれた」

あの時の事を思い出して僕はむすっとした。
僕のそんな表情を見た佐藤は、しょうがないなという顔で僕を見た後、思いもよらない事を口にした。

「そうじゃないよ、あれはあいつらの本心。クラスの半分くらいの男子は沢村の事が好きなんだよ」
「へ?」
佐藤のとんでもない発言に、僕は目が点になる。

な、何ですと…? 

びっくりして固まったまま佐藤を凝視してしまった。

「だから、付き合っているふりをしようって言ってるんだ」
「…」

いや、でも…。

「このまま放置していたら、西村だけじゃなくて他の奴らも沢村に近寄ろうと画策して来るぞ? それでもいいわけ?」

佐藤にそう言われ、ちょっと想像して気持ち悪くなってしまった。
青ざめた僕を見て、佐藤は「だろ?」という顔をした。

「…僕のメリットがそれとして、佐藤君には何のメリットがあるんだよ」

「俺? たくさんあるよー。好きでもない女の子を断る手間が省けるし、断った後に、その友達に『酷い』とか、『冷たい、付き合ってあげても良いじゃない』とか罵倒されなくて済むし」

「…そんな事言われてたのか?」
「まあね、断った後に一カ月くらい付きまとわれたこともあるな」
「大変なんだな…」

イケメンにはフツメンには分からない苦労があるんだな。

「…てかさ、沢村も似たような苦労を抱えているはずなんだけどな」
「いや、僕は」
「絶対そろそろやってくるぞ。『俺と付き合って下さい』攻撃が」

真面目くさった顔でそう言う佐藤に、僕は背筋が寒くなってきた。
それは嫌だ。可愛い女の子ならまだしも、むさい男にそんな攻撃はされたくもない。

「…佐藤君」
「乗るか? この案」
「…う、うん」

背に腹は代えられない。僕はしぶしぶだけど、佐藤の案に乗る事にした。
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