修行のため、女装して高校に通っています

らいち

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第三章

親友になりたい1

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姉さんは、あれから荷物を置いてすぐに佐藤のカーディガンをクリーニング店に出しに行っている。

僕は佐藤を部屋に案内して、お茶の準備をした。
陽も傾き始めて少し肌寒くなりかけているので、麦茶は止めて紅茶を入れることにした。とは言っても、ティーバッグの簡単なものだけど。

部屋に戻って戸を開けたら、佐藤は僕と姉さんの写真が入っている写真立てを手に持っていた。

「これ、沢村さん?」
「うん。左が僕で右が姉さん」

その写真は二年前に、舞台を終えた僕らを母さんが写したものだ。女形姿の僕に旅人役の姉さん。

「男の方が綺麗な格好してるんだな」
佐藤がため息交じりにつぶやいた。

「姉さんは役者志望じゃないからね。重要な役はしないんだよ」
「へえ…」

僕は写真を見ている佐藤を促して、座ってもらった。
そして梓の時にも話したように、すべてを包み隠さずに説明する。
全部聞き終えた佐藤は、どこか同情するような目で僕を見ていた。

「…大変な思いしてたんだな」
「うん、ごめんね。僕みんなの事だましてた」

佐藤は複雑な顔をして僕を見ていたが、はあ~っと大きなため息を吐いて脱力する。

「何か力抜けた」
「…」
佐藤が何を言いたいのか、大体の想像はついたので、僕は黙って佐藤を見ていた。

「…呼び捨てにしていい?」
「どうぞ」
「俺にも呼び捨てでいいから」
「あ、それは止めとく」
「何で?」
「だって、一応僕は学校では恥ずかしがり屋の女子設定だから、呼び捨てになれちゃって学校でもそれが出たらヤバいだろ」

そう返事をしたら佐藤は一瞬ぽかんとした。そして呆れたように笑う。

「プロだな」

茶化した口調で言うから、本心ではないのだろう。
ちょっとムカつく。

だけど僕が佐藤にしてしまったことは、いくら本意ではないとはいえ、余り好ましい事だとは言えないだろう。
僕はちゃんと本心を佐藤に伝えなければと、佐藤の前で正座した。

僕の改まった態度に、佐藤も何か感じたらしく真面目な顔を作る。

「いくら自分の本意ではないとはいえ、佐藤君には本当に申し訳ないと思ってる。佐藤君が勘違いしちゃった…その、僕への気持ちは、僕が女装をしている時に完璧な女子を演じなければいけないっていうスイッチが入ってしまっていたから生じてしまった事だから、気にしなくていい事だと思うし…その、あれだから…?」

あれ?
えっと、何か変な言い回しになってないか? 

佐藤に気を使うあまり、後半に関しては結果わけの分からない事を並べ立てただけになってしまっていたような…。

えーっと、えーっとと考えていたら、横から佐藤の噴き出す声が聞こえた。
え?と思って佐藤を見たら、案の定肩を震わせて笑っていた。
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