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第二章
もっと近づきたい
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ついに来ました、新歓スポーツ大会。
とはいえ、僕は朝からテンションが落ちている。
準備運動にも参加しない僕は、今みんなが運動場に勢ぞろいしている間にとバニーの姿に着替え中。
せめて必要な時から着替えに行きたかったのだけど、制服のままでウロウロするのはよろしくないという理由から、あろうことか、こんな早い時間から僕だけ独りバニーの姿だ。
制服よりもバニーの姿の方が良いなんて、どう考えてもおかしいと思うんだけど!
独りだけこんな恰好でみんなの前に行くのが嫌な僕は、ため息を吐きながら教室で一人机の上に腰を掛けていた。
「やっぱりここか」
開会式が終わったらしく、梓が僕を迎えに来ていた。
「終わったの?」
「うん。由紀がまだ来てないって西村が騒いでいたからさ、連れてくるって言って出てきた」
「西村…。ほっときゃ良かったのに」
「放っといて良かったのか? 西村、自分が連れてくるって言いそうな勢いだったけど」
「…それは困る」
嬉々として迎えに来る西村を想像してしまった。ブルルッ…
「あー、もう!西村ってホントキモいんだよな。変な目で見てくるし、なんなんだよあいつ」
僕は机に座ったまま大きく脱力した。
「…由紀が可愛いからね。仕方ないんじゃないの?」
「本気で言ってる?」
「もちろん。由紀の正体知ってしまってるあたしでも可愛いと思うもの。知らない人なら尚更だよ」
「…まあ、仕方ないんだけどさ」
僕はため息を吐きながら机から降りた。梓が、そんな僕を気の毒そうに見ている。
…何も話さないと、しんとしている教室。
ああそうか、久しぶりに梓と二人っきりになっているんだ。
その事実に気が付いた時、僕は梓に自分の気持ちを少しだけでも伝えたくなってしまった。
意識して梓を強く見つめ返す。
「梓」
作らない地声で名前を呼ぶと、一瞬ピクリと梓の体が揺れた。
…意識してくれている。
そのことに気を良くした僕は、手を伸ばして梓の左手を握る。
驚いた顔で僕を見上げる梓に、僕は口角を上げてゆっくりと笑った。
とはいえ、僕は朝からテンションが落ちている。
準備運動にも参加しない僕は、今みんなが運動場に勢ぞろいしている間にとバニーの姿に着替え中。
せめて必要な時から着替えに行きたかったのだけど、制服のままでウロウロするのはよろしくないという理由から、あろうことか、こんな早い時間から僕だけ独りバニーの姿だ。
制服よりもバニーの姿の方が良いなんて、どう考えてもおかしいと思うんだけど!
独りだけこんな恰好でみんなの前に行くのが嫌な僕は、ため息を吐きながら教室で一人机の上に腰を掛けていた。
「やっぱりここか」
開会式が終わったらしく、梓が僕を迎えに来ていた。
「終わったの?」
「うん。由紀がまだ来てないって西村が騒いでいたからさ、連れてくるって言って出てきた」
「西村…。ほっときゃ良かったのに」
「放っといて良かったのか? 西村、自分が連れてくるって言いそうな勢いだったけど」
「…それは困る」
嬉々として迎えに来る西村を想像してしまった。ブルルッ…
「あー、もう!西村ってホントキモいんだよな。変な目で見てくるし、なんなんだよあいつ」
僕は机に座ったまま大きく脱力した。
「…由紀が可愛いからね。仕方ないんじゃないの?」
「本気で言ってる?」
「もちろん。由紀の正体知ってしまってるあたしでも可愛いと思うもの。知らない人なら尚更だよ」
「…まあ、仕方ないんだけどさ」
僕はため息を吐きながら机から降りた。梓が、そんな僕を気の毒そうに見ている。
…何も話さないと、しんとしている教室。
ああそうか、久しぶりに梓と二人っきりになっているんだ。
その事実に気が付いた時、僕は梓に自分の気持ちを少しだけでも伝えたくなってしまった。
意識して梓を強く見つめ返す。
「梓」
作らない地声で名前を呼ぶと、一瞬ピクリと梓の体が揺れた。
…意識してくれている。
そのことに気を良くした僕は、手を伸ばして梓の左手を握る。
驚いた顔で僕を見上げる梓に、僕は口角を上げてゆっくりと笑った。
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