27 / 106
第二章
もっと近づきたい
しおりを挟む
ついに来ました、新歓スポーツ大会。
とはいえ、僕は朝からテンションが落ちている。
準備運動にも参加しない僕は、今みんなが運動場に勢ぞろいしている間にとバニーの姿に着替え中。
せめて必要な時から着替えに行きたかったのだけど、制服のままでウロウロするのはよろしくないという理由から、あろうことか、こんな早い時間から僕だけ独りバニーの姿だ。
制服よりもバニーの姿の方が良いなんて、どう考えてもおかしいと思うんだけど!
独りだけこんな恰好でみんなの前に行くのが嫌な僕は、ため息を吐きながら教室で一人机の上に腰を掛けていた。
「やっぱりここか」
開会式が終わったらしく、梓が僕を迎えに来ていた。
「終わったの?」
「うん。由紀がまだ来てないって西村が騒いでいたからさ、連れてくるって言って出てきた」
「西村…。ほっときゃ良かったのに」
「放っといて良かったのか? 西村、自分が連れてくるって言いそうな勢いだったけど」
「…それは困る」
嬉々として迎えに来る西村を想像してしまった。ブルルッ…
「あー、もう!西村ってホントキモいんだよな。変な目で見てくるし、なんなんだよあいつ」
僕は机に座ったまま大きく脱力した。
「…由紀が可愛いからね。仕方ないんじゃないの?」
「本気で言ってる?」
「もちろん。由紀の正体知ってしまってるあたしでも可愛いと思うもの。知らない人なら尚更だよ」
「…まあ、仕方ないんだけどさ」
僕はため息を吐きながら机から降りた。梓が、そんな僕を気の毒そうに見ている。
…何も話さないと、しんとしている教室。
ああそうか、久しぶりに梓と二人っきりになっているんだ。
その事実に気が付いた時、僕は梓に自分の気持ちを少しだけでも伝えたくなってしまった。
意識して梓を強く見つめ返す。
「梓」
作らない地声で名前を呼ぶと、一瞬ピクリと梓の体が揺れた。
…意識してくれている。
そのことに気を良くした僕は、手を伸ばして梓の左手を握る。
驚いた顔で僕を見上げる梓に、僕は口角を上げてゆっくりと笑った。
とはいえ、僕は朝からテンションが落ちている。
準備運動にも参加しない僕は、今みんなが運動場に勢ぞろいしている間にとバニーの姿に着替え中。
せめて必要な時から着替えに行きたかったのだけど、制服のままでウロウロするのはよろしくないという理由から、あろうことか、こんな早い時間から僕だけ独りバニーの姿だ。
制服よりもバニーの姿の方が良いなんて、どう考えてもおかしいと思うんだけど!
独りだけこんな恰好でみんなの前に行くのが嫌な僕は、ため息を吐きながら教室で一人机の上に腰を掛けていた。
「やっぱりここか」
開会式が終わったらしく、梓が僕を迎えに来ていた。
「終わったの?」
「うん。由紀がまだ来てないって西村が騒いでいたからさ、連れてくるって言って出てきた」
「西村…。ほっときゃ良かったのに」
「放っといて良かったのか? 西村、自分が連れてくるって言いそうな勢いだったけど」
「…それは困る」
嬉々として迎えに来る西村を想像してしまった。ブルルッ…
「あー、もう!西村ってホントキモいんだよな。変な目で見てくるし、なんなんだよあいつ」
僕は机に座ったまま大きく脱力した。
「…由紀が可愛いからね。仕方ないんじゃないの?」
「本気で言ってる?」
「もちろん。由紀の正体知ってしまってるあたしでも可愛いと思うもの。知らない人なら尚更だよ」
「…まあ、仕方ないんだけどさ」
僕はため息を吐きながら机から降りた。梓が、そんな僕を気の毒そうに見ている。
…何も話さないと、しんとしている教室。
ああそうか、久しぶりに梓と二人っきりになっているんだ。
その事実に気が付いた時、僕は梓に自分の気持ちを少しだけでも伝えたくなってしまった。
意識して梓を強く見つめ返す。
「梓」
作らない地声で名前を呼ぶと、一瞬ピクリと梓の体が揺れた。
…意識してくれている。
そのことに気を良くした僕は、手を伸ばして梓の左手を握る。
驚いた顔で僕を見上げる梓に、僕は口角を上げてゆっくりと笑った。
0
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説
かつて僕を振った幼馴染に、お月見をしながら「月が綺麗ですね」と言われた件。それって告白?
久野真一
青春
2021年5月26日。「スーパームーン」と呼ばれる、満月としては1年で最も地球に近づく日。
同時に皆既月食が重なった稀有な日でもある。
社会人一年目の僕、荒木遊真(あらきゆうま)は、
実家のマンションの屋上で物思いにふけっていた。
それもそのはず。かつて、僕を振った、一生の親友を、お月見に誘ってみたのだ。
「せっかくの夜だし、マンションの屋上で、思い出話でもしない?」って。
僕を振った一生の親友の名前は、矢崎久遠(やざきくおん)。
亡くなった彼女のお母さんが、つけた大切な名前。
あの時の告白は応えてもらえなかったけど、今なら、あるいは。
そんな思いを抱えつつ、久遠と共に、かつての僕らについて語りあうことに。
そして、皆既月食の中で、僕は彼女から言われた。「月が綺麗だね」と。
夏目漱石が、I love youの和訳として「月が綺麗ですね」と言ったという逸話は有名だ。
とにかく、月が見えないその中で彼女は僕にそう言ったのだった。
これは、家族愛が強すぎて、恋愛を諦めざるを得なかった、「一生の親友」な久遠。
そして、彼女と一緒に生きてきた僕の一夜の物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。
ながしょー
青春
ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。
このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる