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第二章

恋のキューピット?2

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呼ばれた田本は、ちょっと引き気味だ。眉をしかめてまどかを見た。

「何だよ島田、大声出して」
「アンケート、取ってまーす」
「…はい?」
「好きな人、いますかあ?」

余りにもあっけらかんとしたまどかの態度に、僕と梓は冷や汗を流した。二人そろってまどか達に背を向けて、知らんふりを決め込む。

「まどかって、いつもああなのか?」
ボソボソと僕は梓に尋ねた。

「…いつもというわけでは無いと思うけど…。たまに変なスイッチが入るんだよな」

小田を盗み見てみると、困惑したような顔で二人を見ていた。

うわ~、そうだよな、出来ればこっそりと聞いて欲しいよな、こういう事は…。
小田、ごめんーっと心の中で謝っていると、田本の声が聞こえてきた。

「お前ホントに情緒のカケラも無い奴だな。ま、人の事は言えないけど、俺も」
「だよね、だよね! 絶対田本には好きな人なんていないと思ったから、聞いてみた!」
「てめえ…。悪かったな、ご推察通り今んトコいねーよ。好きな奴なんて」
「今んトコって、前はいたの?」

さも驚いたとばかりに、まどかが目をまん丸くして田本に詰め寄った。

「…今も昔もいねーよ」

佐藤が隣で肩を揺らして笑っていた。

「…そういやお前、中学の時も結構モテてたのに、彼女作るのが面倒臭いとかそんな理由で、片っ端から断ってたもんな」

「…お子様なんですね~」

ほよよ~んと、まどかが失礼な発言をしてよこす。
それに対して、お前になんか絶対言われたくないと田本が憤慨して騒いでいた。

…ごめん、小田。
だけどやっぱり田本の恋愛観まで知る事が出来たのは、まどかのおかげかもしれないと僕は苦笑いをしていた。

困惑気味の小田を前に、いつもの三人で並ぶ。

「…小田さん、あの…ごめんね? まどかの方が上手く聞いてくれると思って頼んだんだけど…」
「あ、うん」

あー、これは二人にまでばらした事、あんま良くは思ってないのかもしんないな。

「もしかしてまどか、失敗しちゃってた?」
心配そうにまどかが小田に聞いてくる。

「ううん。そんな事ないよ、ありがとう。…今好きな人いないってことが分かっただけでも、ちょっとホッとしたし」

「そっか。良かったー」
心底安心したようにまどかが笑った。

「あ、ひとつ思い出した。田本の情報」
突然の梓の発言に小田が、視線を梓に向けた。

「確か、田本ってさ、甘い卵焼きが好きだった」
「あー! そうそう。こないだ最近、お母さんが甘い卵焼きをあんまり作ってくれなくなったってぼやいてたよね」
「甘い…卵焼き…」
「優奈作って来てあげたら? それであたしたちと一緒にお昼食べれば、田本にあげる機会があるかもしれないよ?」
「あ、それいい! ねっ、そうしちゃったら?」
「だ、大丈夫かな。変に思われない?」
「大丈夫だよー、田本ってそこまで神経細かくないし大雑把で大らかな奴だよ」
「そういうとこ、佐藤とは違うよな」
「佐藤は聡いからね~」
「…」
「ちょっと! 引かないでよ。そんなつもりで言ったんじゃないんだからね!」

まどかが不本意そうに剥れていた。
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