修行のため、女装して高校に通っています

らいち

文字の大きさ
上 下
13 / 106
第二章

バレちゃった!1

しおりを挟む
 積極的かつ希望的観測で冨岡を信じるのではなく、様々な可能性を考え、その中で最も納得できる答えが『信じる』ことであった。
 冨岡としても、ノノノカが信じてくれていることを信じる理由になる。
 だからこそ、安心して話が続けられた。

「今話したように、俺は異世界から来ました。向こうの世界で生まれ育ったんです。つまり俺の母親、シャーナ・ベルソードは」
「異世界転移によって、トミオカが生まれ育った世界に行っていたというわけじゃな。ふっ、随分複雑で荒唐無稽な話だ。だが、腑に落ちる話でもある。それで、シャーナはどうなったのじゃ?」

 シャーナが異世界転移してからのことを尋ねられた冨岡は、一瞬言い淀む。冨岡もシャーナの半生について詳しいわけではない。
 美作から話を聞いている間も、どこか他人事のように感じていたくらいだ。
 どう説明しようか、と考えてみたものの、冨岡は自分が知っていることをそのまま話すことにする。

「えっと、俺もこの話を聞いたばかりでまだ半信半疑だったんです。だから詳しい話を聞いていなくて」
「何を言っておるんじゃ? 半信半疑だからこそ、詳しく聞かんでどうする」
「・・・・・・確かに。いや、でも困惑もあったんですよ。母親の話なんて聞いたことなかったから。それに俺以外の異世界転移の話も相まって」

 ノノノカの言う通り、もっと美作から聞いておくべきだったと反省する冨岡。
 だが、あの状況では何がわからないのかわからない。質問すべきことも浮かばないほど、わからないことだらけだった。
 冨岡の言葉を聞いたノノノカは少し考えてから質問を変える。

「ふむ、過ぎたことの失敗を指摘しても仕方ないか。では、お前が知っているシャーナの情報を聞かせてくれ。何かないか? 冨岡の母シャーナとワシの娘シャーナを繋ぐ何か」
「俺が知っていること・・・・・・えっと確か『魔王の操る魔物の群れを一人で討伐した』って話をしてたそうです」
「あのスタンピードの話か。冒険者ギルドから報告が上がっておったのう。シャーナが偽名で参加したパーティーの話じゃ。魔物の群れ討伐依頼を受けたパーティーが、突然起きた地形変化によって分断され、結局シャーナ一人で討伐に当たったという。その際、偽名を使用していたことからそれがシャーナであると知っているのは、ギルドの幹部クラスとパーティーメンバー、そしてシャーナ本人。可能性は非常に高い・・・・・・か」

 一つのエピソードから情報を繋いだノノノカは、全てを納得したように頷いた。その動きをきっかけにノノノカの目には慈しみが宿る。

「そうか、シャーナは・・・・・・異世界で死んだか。親不孝な娘じゃ」
「あ・・・・・・」

 ここで冨岡は気づいた。自分が話したことによって、失踪していた娘の死を確定させてしまったことを。
 そんな相手に何を言えばいいのだろうか。なんとか振り絞ろうとする冨岡だったが、言葉が出てこない。

「あの、えっと」
「ふっ、気を遣わずとも良い。シャーナはベルソードの庇護下で生きることを窮屈に感じておった。新たな世界でこれまでとは違う人生を歩んだのなら、不幸ではなかったのだろう」
「その、幸せだったかどうかはわからないですけど・・・・・・不幸だったなら、俺は生まれていないと思います」
「そうじゃな。恋を知り、愛を知った・・・・・・それも一つの幸せじゃろう」

 ノノノカはそう言うとソファから立ち上がり、机を迂回して富岡に近づく。

「すまんが、顔を見せてくれんか、トミオカ」
「冨岡は家名で、名前は浩哉です」
「ヒロヤ・・・・・・ふっ、聞き慣れん響きだな。じゃが、優しい音じゃ」

 彼女はそのまま冨岡の頬に触れ、じっと顔を眺めた。

「そう言われれば、目元が似ておるかもしれんな。優しさの奥に力強さを感じる。確定はできんが、ワシは納得してしまった。理論ではない、本能で感じるぞ。お前はシャーナの息子、そしてワシの孫じゃヒロヤ」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。

ながしょー
青春
 ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。  このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。

小学生をもう一度

廣瀬純一
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた

久野真一
青春
 最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、  幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。  堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。  猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。  百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。    そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。  男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。  とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。  そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から 「修二は私と恋人になりたい?」  なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。  百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。 「なれたらいいと思ってる」    少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。  食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。  恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。  そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。  夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと  新婚生活も満喫中。  これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、  新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

かつて僕を振った幼馴染に、お月見をしながら「月が綺麗ですね」と言われた件。それって告白?

久野真一
青春
 2021年5月26日。「スーパームーン」と呼ばれる、満月としては1年で最も地球に近づく日。  同時に皆既月食が重なった稀有な日でもある。  社会人一年目の僕、荒木遊真(あらきゆうま)は、  実家のマンションの屋上で物思いにふけっていた。  それもそのはず。かつて、僕を振った、一生の親友を、お月見に誘ってみたのだ。  「せっかくの夜だし、マンションの屋上で、思い出話でもしない?」って。  僕を振った一生の親友の名前は、矢崎久遠(やざきくおん)。  亡くなった彼女のお母さんが、つけた大切な名前。  あの時の告白は応えてもらえなかったけど、今なら、あるいは。  そんな思いを抱えつつ、久遠と共に、かつての僕らについて語りあうことに。  そして、皆既月食の中で、僕は彼女から言われた。「月が綺麗だね」と。  夏目漱石が、I love youの和訳として「月が綺麗ですね」と言ったという逸話は有名だ。  とにかく、月が見えないその中で彼女は僕にそう言ったのだった。  これは、家族愛が強すぎて、恋愛を諦めざるを得なかった、「一生の親友」な久遠。  そして、彼女と一緒に生きてきた僕の一夜の物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...