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第四章
やっちまった……?
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「さて、これで全員のパフォーマンスが終了しました。これからチケットを購入された皆さんには、一番気に入った人に札を上げてもらいたいと思います。登場順にいきましょう。それでは、執事に扮した佐倉さんがいいと思う人!」
委員長の呼び掛けに、投票権を持っている男子のほとんどが札を上げた。チラリと加代子を横目に見ると、若干引いているような感じがする。
そうだよな。こいつ最初からモデルを了承することも乗り気じゃなかったし、僕がいたから渋々OKしたようなものだったもんな。
「大多数ですね……。それでは申し訳ありませんけど、今札を上げている方は立ってもらえますか? 札は下げてもらって結構です」
彼らが立ち上がった事で、加代子にどれくらいの人が票を上げたのかが分かりやすくなった。男子の割合で言うと、八割強といったところだ。これはもう女子の方は、加代子に決まりだろう。
面白くは無いけど仕方がない。だいたいの想像はついていたしな。
「では次に、花嫁に扮した鎌谷君がいいと思う人は札を上げて下さい」
これもまた凄い人が札を上げてくれた。残りの人数の割合から言うと、九割といったところか。
……まあまあかな。
「ありがとうございます。言うまでもなく大多数の票をこの二人が獲得しましたので、男装の一位は執事に扮した佐倉加代子さん、女装の一位は花嫁に扮した鎌谷神君と決まりました。皆さん大きな拍手をお願い致します」
委員長の言葉に、みんな一斉に拍手をくれた。気持ちのいい事、この上ない。
「それではチェキの抽選をします。お手数ですが、先ほど票を上げた方々は一列十人で並んでください」
みんなワクワクしたような感じで、誰も文句など言わずに委員長の指示に従った。その人数を確認した小林さんが、横でせっせと紙に番号を書いていく。そして折りたたんで、箱の中へと入れていった。
「では、左の先頭から一番という事にします。引きますね。……まず佐倉さんのチェキ権を引き当てた五人の方は――、三番、十一番、二十番、二十三番、それから三十五番です。番号を呼ばれた方は前に出て来て下さい」
「よっしゃー!」
呼ばれた男達がうれしそうにガッツポーズを取った。そして走って壇上に上がる。
ある程度予想していたとはいえ、そんな光景を目の当たりにするとやっぱり面白いものではない。
まあ、お触り禁止だし、ちゃんと距離を取るようにとの約束事もあるわけだから……。
「加代子ちゃん、肩組もう肩ー!」
あろうことかその中の一人が、約束をすっかり無視して両手を広げながら加代子に向かって一直線に突進してきた。館内にどよめきが起こる。
「それ以上加代子に近づくな!」
考える余地なんてない。まさしく思わず、だった。
カッとした僕はなりふり構わず加代子の所に駆け寄って、両手を広げてそいつがそれ以上加代子に近づくのを阻止していたんだ。
なんか文句があるなら言ってみろ、というくらいの気持ちでおそらく上級生であろうそいつをギッと睨みつける。
睨み続けること数秒、何だかみんなの様子がおかしいことに気が付いた。
あ……れ?
一瞬ざわざわと煩くなった会場は一転し、すぐに恐ろしいくらいにシーンと静まり返っている。
あー、やっちまったー。これはもう加代子にも、僕の気持ちバレちゃったよな……。
照れくさいと言うか不味ったなと言うか、そんな微妙な気持ちでチラリと加代子の方を窺ってみた。だけど加代子の表情は僕の予想とは反していて、驚いた顔はしていても、恥ずかしそうにも嬉しそうにもしていなかった。
委員長の呼び掛けに、投票権を持っている男子のほとんどが札を上げた。チラリと加代子を横目に見ると、若干引いているような感じがする。
そうだよな。こいつ最初からモデルを了承することも乗り気じゃなかったし、僕がいたから渋々OKしたようなものだったもんな。
「大多数ですね……。それでは申し訳ありませんけど、今札を上げている方は立ってもらえますか? 札は下げてもらって結構です」
彼らが立ち上がった事で、加代子にどれくらいの人が票を上げたのかが分かりやすくなった。男子の割合で言うと、八割強といったところだ。これはもう女子の方は、加代子に決まりだろう。
面白くは無いけど仕方がない。だいたいの想像はついていたしな。
「では次に、花嫁に扮した鎌谷君がいいと思う人は札を上げて下さい」
これもまた凄い人が札を上げてくれた。残りの人数の割合から言うと、九割といったところか。
……まあまあかな。
「ありがとうございます。言うまでもなく大多数の票をこの二人が獲得しましたので、男装の一位は執事に扮した佐倉加代子さん、女装の一位は花嫁に扮した鎌谷神君と決まりました。皆さん大きな拍手をお願い致します」
委員長の言葉に、みんな一斉に拍手をくれた。気持ちのいい事、この上ない。
「それではチェキの抽選をします。お手数ですが、先ほど票を上げた方々は一列十人で並んでください」
みんなワクワクしたような感じで、誰も文句など言わずに委員長の指示に従った。その人数を確認した小林さんが、横でせっせと紙に番号を書いていく。そして折りたたんで、箱の中へと入れていった。
「では、左の先頭から一番という事にします。引きますね。……まず佐倉さんのチェキ権を引き当てた五人の方は――、三番、十一番、二十番、二十三番、それから三十五番です。番号を呼ばれた方は前に出て来て下さい」
「よっしゃー!」
呼ばれた男達がうれしそうにガッツポーズを取った。そして走って壇上に上がる。
ある程度予想していたとはいえ、そんな光景を目の当たりにするとやっぱり面白いものではない。
まあ、お触り禁止だし、ちゃんと距離を取るようにとの約束事もあるわけだから……。
「加代子ちゃん、肩組もう肩ー!」
あろうことかその中の一人が、約束をすっかり無視して両手を広げながら加代子に向かって一直線に突進してきた。館内にどよめきが起こる。
「それ以上加代子に近づくな!」
考える余地なんてない。まさしく思わず、だった。
カッとした僕はなりふり構わず加代子の所に駆け寄って、両手を広げてそいつがそれ以上加代子に近づくのを阻止していたんだ。
なんか文句があるなら言ってみろ、というくらいの気持ちでおそらく上級生であろうそいつをギッと睨みつける。
睨み続けること数秒、何だかみんなの様子がおかしいことに気が付いた。
あ……れ?
一瞬ざわざわと煩くなった会場は一転し、すぐに恐ろしいくらいにシーンと静まり返っている。
あー、やっちまったー。これはもう加代子にも、僕の気持ちバレちゃったよな……。
照れくさいと言うか不味ったなと言うか、そんな微妙な気持ちでチラリと加代子の方を窺ってみた。だけど加代子の表情は僕の予想とは反していて、驚いた顔はしていても、恥ずかしそうにも嬉しそうにもしていなかった。
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