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第四章
やっぱりいつもと雰囲気が違うよね?
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パンパン!
突然鳴り響いた手を叩く音に、ハッと我に返った。振り返ると委員長が、こちらの狼狽をよそに冷静な表情で見ている。
……ちょっといい雰囲気だったのにさ。もうちょっと待ってくれてても良いのに……なんて、真面目な顔の委員長を見ると文句は言えない……。
「さっ、じゃあ衣装もメイクも確認できたわけだから、一旦着替えて体育館に行こうか」
「着替えるのはいいけど、なんで体育館?」
神がベールを剥ぎながら言った。
「明日の本番通りに練習した方がいいだろう? ランウェイの練習をさ」
「えーっ、じゃあ尚更そのままの格好の方がいいんじゃないの?」
きっとまだまだ神の女装を楽しみたいんだろう。女子の声が飛んだ。
「それは、ダメ。衣装は他のクラスの皆には、明日の本番までは秘密にしておかないと」
「あっ、そうか! 楽しみが半減しちゃうね」
「そう言うこと。じゃあモデルの皆は着替えてから体育館集合! 後の皆は悪いけど、そのまま準備を続けていって」
「了解」
残念がる声もあったけど明日は本番だ。のんびりしていて準備に間に合わないと困るので、また皆各々の作業に戻っていった。
私達が体育館に行くと、設営係の皆が椅子を置く場所やステージ上から下りて歩いて行く場所を、どんな形にするかと話し合っていた。
「歩く練習させてもいいかな」
「おう、来たか。いいよ」
設営担当に許可をもらった委員長が、きょろきょろと落ち着かない私たちを手招きした。
「そう言えば僕達、歩く順番まだ決めてないんだけど。好き勝手でいいのか?」
「ダメだよ、それは。せっかくやるんだから感じよくしなくちゃ。男女交互、と言うか男装女装だから女子が先で男子が後な」
「男女交互! じゃあ私、神の前!」
王様の衣装を着ける雛子が勢いよく手を挙げた。
ヤバい。ぼーっとしてる場合じゃなかった。どんな構成をとるのか分からないけど、神の前って言ったら並ぶ時は隣だもんね。
「私も神の前がいい!」
雛子に負けまいと、私も手を挙げて大きな声を出した。
そんな私達の様子を見て、他の女子もみんなが騒ぎ始める。
「ちょっと待って女子! 順番はもうこっちで決めてあるから」
パンパンと手を叩きながら、委員長が叫んだ。
「え~?」
みんなぶうぶうと文句を言った。もちろん私もだ。ジャンケンだったら強いから、絶対勝つって思っていたのに。
「コンテストを盛り上げるために決めた順番だから、文句は一切無しだよ」
有無を言わさない委員長の言葉に、女子はみんなムスッと押し黙った。
「じゃあみんな、言う通りに並んで。まずは佐倉さん、それから続いて鎌谷……」
「えっ、私? ヤッター!」
「ええーっ? 何で加代子? ズルい!」
「そこの女子、うるさい! その次は田野中さん、次は……」
委員長が順々に名前を呼んでいく。嬉々として神を見上げると、ぱちりと目が合った。
目が合うと同時に、神が目を細める。
ドキドキするよ。
そう言えばさっき、私……神にかっこかわいいって言われたんだよね。それに頭をポンポンって……。
思い出した途端、胸の奥が甘く温かい気持ちで溢れて来る。
聞きたいな。私のこと、少しは特別だって思い始めてくれている?
突然鳴り響いた手を叩く音に、ハッと我に返った。振り返ると委員長が、こちらの狼狽をよそに冷静な表情で見ている。
……ちょっといい雰囲気だったのにさ。もうちょっと待ってくれてても良いのに……なんて、真面目な顔の委員長を見ると文句は言えない……。
「さっ、じゃあ衣装もメイクも確認できたわけだから、一旦着替えて体育館に行こうか」
「着替えるのはいいけど、なんで体育館?」
神がベールを剥ぎながら言った。
「明日の本番通りに練習した方がいいだろう? ランウェイの練習をさ」
「えーっ、じゃあ尚更そのままの格好の方がいいんじゃないの?」
きっとまだまだ神の女装を楽しみたいんだろう。女子の声が飛んだ。
「それは、ダメ。衣装は他のクラスの皆には、明日の本番までは秘密にしておかないと」
「あっ、そうか! 楽しみが半減しちゃうね」
「そう言うこと。じゃあモデルの皆は着替えてから体育館集合! 後の皆は悪いけど、そのまま準備を続けていって」
「了解」
残念がる声もあったけど明日は本番だ。のんびりしていて準備に間に合わないと困るので、また皆各々の作業に戻っていった。
私達が体育館に行くと、設営係の皆が椅子を置く場所やステージ上から下りて歩いて行く場所を、どんな形にするかと話し合っていた。
「歩く練習させてもいいかな」
「おう、来たか。いいよ」
設営担当に許可をもらった委員長が、きょろきょろと落ち着かない私たちを手招きした。
「そう言えば僕達、歩く順番まだ決めてないんだけど。好き勝手でいいのか?」
「ダメだよ、それは。せっかくやるんだから感じよくしなくちゃ。男女交互、と言うか男装女装だから女子が先で男子が後な」
「男女交互! じゃあ私、神の前!」
王様の衣装を着ける雛子が勢いよく手を挙げた。
ヤバい。ぼーっとしてる場合じゃなかった。どんな構成をとるのか分からないけど、神の前って言ったら並ぶ時は隣だもんね。
「私も神の前がいい!」
雛子に負けまいと、私も手を挙げて大きな声を出した。
そんな私達の様子を見て、他の女子もみんなが騒ぎ始める。
「ちょっと待って女子! 順番はもうこっちで決めてあるから」
パンパンと手を叩きながら、委員長が叫んだ。
「え~?」
みんなぶうぶうと文句を言った。もちろん私もだ。ジャンケンだったら強いから、絶対勝つって思っていたのに。
「コンテストを盛り上げるために決めた順番だから、文句は一切無しだよ」
有無を言わさない委員長の言葉に、女子はみんなムスッと押し黙った。
「じゃあみんな、言う通りに並んで。まずは佐倉さん、それから続いて鎌谷……」
「えっ、私? ヤッター!」
「ええーっ? 何で加代子? ズルい!」
「そこの女子、うるさい! その次は田野中さん、次は……」
委員長が順々に名前を呼んでいく。嬉々として神を見上げると、ぱちりと目が合った。
目が合うと同時に、神が目を細める。
ドキドキするよ。
そう言えばさっき、私……神にかっこかわいいって言われたんだよね。それに頭をポンポンって……。
思い出した途端、胸の奥が甘く温かい気持ちで溢れて来る。
聞きたいな。私のこと、少しは特別だって思い始めてくれている?
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