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第四章

神が助けてくれた!

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「そうそう、妙に色気があるよなあ」

 なんて気持ちの悪いことを言いながら、高橋が私の所に歩いて来る。
 ちょっと、近寄らないでよ!

「こういうのを男装の麗人って言うのか?」

 目の前の高橋に気が行っていたので、背後から聞こえた声に本気でビックリした。振り返ろうとした瞬間、突然ウエスト辺りを両脇からきゅっと挟まれて、背筋をゾゾゾと悪感が駆け上る。

「何すんのようー!」

 反射的に振りかぶって肘鉄でも食らわそうかと思った瞬間、神と目が合ってハッと我に返った。
 ヤバい、神にか弱くないことがバレちゃう!
 私は慌てて振りかぶったその腕を、不自然な格好で必死に止めた。セクハラは絶対嫌だけど、神に可愛くないと思われるのも絶対嫌~!

「セクハラ禁止ー!」

 えっ?

 急に不自然な姿勢で私の前に誰かが躍り出たと思ったら神だった。驚き過ぎてぽかんとしている間に、神は思いっ切り田中を突き飛ばしている。

「えっ、今のなに?」
「神が助けに入ったの?」
「ウソでしょ、なんで?」
「何だあれ、神が田中を邪魔したぞ」

 えっ、えっ、どういう事? セクハラ禁止って言ったの、神だった?
 もしかして私の事、……初めて助けてくれた?

「加代子!」
「え、あっ、はいっ」

 恐ろしく真顔で神に名前を呼ばれたものだから、思わず敬語で返してしまった。

「こういう時は躊躇するな。ビシッと払い退けろよ」
「えっ……あ」

 だってだって、神には可愛い子だと思われていたいじゃん。乙女心なのに!
 口を尖らせて、心の中でもごもごと文句を言った。だってそんなこと言えないもん。

「そういう格好いい加代子の方が僕はいいと思うんだけどな」
「え?」
「かっこかわいいのが加代子だろう?」
「神……」
「これからも遠慮なく痴漢は撃退しろ、いいな?」
 そう言って私の顔を覗き込んだ神が、頭をポンポンとした。

 はわわわわっ。なに、なに、何?
 神が私のこと女の子扱いしてくれている! か、顔が甘いよ。こないだも神から抱きしめてくれたし、やっぱり私、脈あり?

 嬉しすぎて私の胸はドキドキと燥ぎまくっているけれど、周りも恐ろしいくらいざわついている。

「加代子、返事は?」
「わ……わかった」

 コクンと頷く私に、神はにっこりと笑顔を作った。
 どうしよう、どうしよう、神を直視出来ない。顔、めっちゃ熱いよ。
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