実はこっそりあいつに溺れてますが、何か?

らいち

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最終章

後編

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「なんで……」
「気に入ってたんだろう?」
「神……」

「今まで素直になれなくてごめんな。本当は初めてのプレゼントは、もっとちゃんとした所でデートして……それからって思っていたんだけど、加代子のあの顔見ていたら、買ってやりたくなったんだ」

 ……見て、たんだ。気づいてたんだ、あの時。

 今までにないほどの優しい口調でそんな事を言うから、胸の中がすごく熱くなって涙が溢れそうになって困った。あんまり恥ずかしくなったから、「今までっていつからよ?」と、つい憎まれ口をたたいてしまった。すると神から、とんでもない返事が返ってきた。

「加代子と初めて会った、あの時から」

 はっ?

 驚いて見上げる私に、神は気まずそうに笑った。

「一目惚れだったよ、加代子に」
「はああっ?」
「告白しようとしたところを芳樹に止められた」
「なん……っ!」

 何なの、あいつー!

「信じらんない、何であの人そんなこと言うの! 私に何か恨みでもあるの?」

 あんまり腹が立ったから、神の腕を思わず強く叩いてしまった。

「イッテ!」
「あっ、ごめん」
「大丈夫、大丈夫」

 神は笑いながら腕をさする。そして私の髪を撫でた。

「ちょっと遠回りしちゃったけどさ、結局僕は、他の女の子といてもただ楽しいと思うだけで、ドキドキしたり触りたいと思ったり、嫉妬なんて醜い感情を持たされたりするのは全部全部加代子だけだった」

「…………」
「僕にとっての全ては、加代子だけだよ」

 初めて、初めて本当にこんな真剣な顔ができるのかというくらいの表情で、神が紳士に私に告白してくれた。

 もうっ……。

 恥ずかしいくらいにポロポロと涙がこぼれてくる。神はそんな私に嬉しそうに笑い、顎を持ち上げそっと軽く唇を触れ合わせた。  

「イッテ!」
「あああっ、ごめん!」

 緊張のあまり知らないうちに、神の腕をギュウッと握りしめていた。馬鹿力の発動だ。

「ぷっ。くくくっ」
  慌てる私に神が笑う。私もホッとして、笑みがこぼれた。

「やだな、もうー!」
「大好きだよ、それでこそカッコよくて可愛い僕の加代子だ」
「神……」

 ドドーン!

 大きな音がして、また花火が舞い上がった。その光が、私の手首にはまっているキャンディーのような丸い粒を光らせる。
  視線を感じて振り向くと、花火の明かりを遮って、私の視界が暗くなった。
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