核醒のカナタ -First Awakening-

ヒロ猫

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Dルート

5日目前編 最終決戦

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[避難所:魔法陣前]
地下にある避難所にある一室には武装をした7人が円になっている。詳しいメンツは、俺(カナタ)、レイン、ブレド、リリス、プロ-ド、アリス、そして謎の忍び装束を着た男だ。

「リリス、転送魔法の準備はできたか?」

「はい、レイン様。この魔方陣を通ればすぐに敵戦艦の真上です」

「拙者も腕がなるでござるな」

いやお前誰だよ。忍びのテンプレみたいなやつにプロ-ドが話しかける。

「...影刃さん、一応自己紹介よろしくでやんす」

「よいのか?では遠慮なく。拙者は影刃、江戸国の忍者をやっている者でござる。はるばる願いの杯を求めてやって来た所、このような事態になってとても驚いているでござる」

「影刃は隠密魔法を得意としている。戦艦に潜入後は彼の力で透明になり、各自でリーダー格の男、デストロークという男を探してくれ」

「ただしこの隠密魔法には注意点があるでござる。1つ目は足音、どんなに透明でも足音をたてればバレる可能性があるでござる。2つ目は攻撃、一度攻撃したら透明状態は解除されてしまうのでがざる」

「つまりやるなら一発で殺さなくてはいけないわけだな?」

ブレドが少し心配そうにプロ-ドの方を向く。

「大丈夫でやんすよ、爆弾はバレてからやるでやんす」

「できるだけ遠くの戦艦から爆破していきなさいよ。私達まで巻き込まないでね」

リリスがプロ-ドに一応の注意をしておく。そんな様子をみながらレインは話を続けた。

「では、目標の男、デストロークの外見について説明する。まず奴は敵軍の中で唯一灰色の肌をしており、頭から角を生やしているようだ。この時点でパッと見すぐにわかると思うが、一応黒いローブで首から下を覆っているようだ」

「あと、全員にこの指輪を渡す」

とレインは二つの指輪を取り出すと、時計回りに配っていく。

「これは転送魔法が組み込まれた魔道具だ、もしデストロークと思われる人物、または自分よりも強い敵がいた時に使え。俺とブレドが使用者の元に転送される。無理して自分で戦おうとはするなよ」

レインが言い終わると、今度はアリスが俺に話しかける。
「カナタさん。貴方が帰ってきた時、話したい事があります」

「え?はい。なんでしょうか?」

「貴方が元の世界に帰る方法についてです」
それを聞いた時、脳に衝撃が走った。
今までの事ですっかり忘れていたのだ。て言うかもう帰れないとも思っていたくらいだ。

「そ、それって本当ですか!?でもどうやって!?」

「それはまだ内緒です。でもこれで貴方にも生きて帰る理由ができたでしょ?」
生きて帰る理由…たとえこの戦いに勝ったとしてももう失ったものは戻らないし、このままこの世界に永住するだけの未来が待っているだろう。
だがアリスの言葉で一筋の希望が見えてくる。

「貴方みたいな性格の人って、敵と心中してでも倒す、みたいな思考をしそうだもの」
それはちょっと偏見だが、確かにそれは頭の片隅にあった考えだ。

「大丈夫です。今回は一人じゃないって分かっているから」
俺の返事を聞くと、アリスは頷き次にレインに話しかける。

「では、私も役割を果たします。レイン、手を」
そう言われたレインは右手を優しく姫様の手に置く。

『──解放』
アリスの詠唱と共に首に掛けられているネックレスの石が金色に光ると、レインの体を包んでいく。

「死力を尽くしなさい。もし貴方がデストロークに負ければ、もうこの星の人間で勝てる人間はいなくなってしまいます」

「その命令、必ずや果たしてみせます」

それが終わると、リリスは大きな魔法陣を出す。
この場の全員が覚悟を出来ている。後は、掛け声を待つだけだ。

「では、作戦を開始する。総員突入せよ!!」
レインの掛け声と共に次々と魔法陣に入っていく。
…ワキオ、マルタ。俺は絶対に生きて帰るよ...だから見守ってくれ。
俺は魔法陣に勢いよく体を突っ込んだ。

[敵戦艦]
雲のさらに上に隠れている無数の戦艦。そのさらに上に一つの大きな魔法陣が現れる。
するとそこから六人の人間が落下しながら現れ、そのまま一番大きな戦艦へと降り立つ。
六人分の着地音と共に戦艦の甲板に小さな亀裂が出来た。

『忍法:隠密の術』
影刃の詠唱と共に俺たちの体はすぐさま透明になっていく。
そしてすぐにレインが話し始める。
「情報通りならこの戦艦で間違えないはずだ。プロードとリリスは他の戦艦に出来るだけ多くの火薬と攻撃魔法を仕掛けてくれ。それ以外は各自でデストロークを探すぞ」

「「 了解 」」

レインの言葉と共に周りから気配が消える。
さて、俺も足音を出さないように慎重に移動しないと...
そうやって甲板の先にある司令塔らしき高台に入っていく。
中にはヘルメットを被り顔が見えなくなっている黒いスーツの敵兵が2人歩いていた。
ヤッベ...
すぐに道の壁沿いに体を寄せる。
「おい、なんか音しなかったか?」

「気のせいだろ。それより知ってるか?次向かうのは炎の星だそうだ」

「ハハッ。戦艦が焼かれないように気をつけないとな?」
こいつら、他の星まで...
ぐっと怒りを抑え込む。
「てかさっきのデストローク様怖かったなぁ。なんか威圧感がいつもより...」
「おい!聞かれてたらどうするんだ!」
さっき、つまりこいつらが出てきた方向に奴はいるのか?
足音を出さないように少しずつ道を進むと、一つのドアがあった。
幸い鍵は掛かっていなかったので、中を除いてみる。そこには...
レインの情報通りの男、つまりデストロークがいた。
黒いローブで首から下を隠し、頭からは二本の角が生えている黒い肌の大男。
こっそりとドアを開け入る。ドアの音が小さく鳴るもまだ気づかれていないようだ。
そのままデストロークの真後ろに回り込む。
右手に力を込めると手背から黒い回路上の線が伸び右手を覆っていく。そして掌にエネルギーが集まると、次第に黒い剣が生成された。
攻撃すれば透明状態は解ける、つまり脳か心臓を確実に刺し殺さなければならない。
しっかりと狙いを定めて...

”グサッ”
デストロークの胸から勢いよく血が噴き出す。それと同時に俺の透明も解ける。
「き、貴様...」

「終わりだ、クソ野郎」
だがデストロークは倒れる事なく姿を砂のように崩していった。

「この体は分身だ。そして終わるのは...お前の方だ」
突如戦艦中に警報が響き渡る。
やられた...
急いで部屋をでて甲板に向かう。
そのまま到着地点まで走ろうとすると、突然目の前に大男が降ってきた。
衝撃で地面が震え木材が軋む音がする。
「ハハハ!!わざわざ核石持ちが乗り込んでくるなんてよぉ、ご苦労なこった!」
男は両腕を触手に変えながらこちらに歩いてくる。
こいつからは蝶男と同じ感じがする。人殺しに何の躊躇いのない、血に塗れた狂人の目だ。
右手にはめている指輪を使おうとした所で、目の前の大男の四肢にそれぞれ魔法陣と共に鎖が放たれ、男の動きを封じ込める。
「あ?」

「周りが見えないのが貴方の甘いところね?」
大男の後ろには、魔法を発動中のリリスが宙に浮いていた。

「なら、手足を封じただけで勝った気になるのがお前らの甘いところか?」
そう言いながら笑う大男は全身を肥大化させ、そこから大量の触手が迫ってくる。
「化け物かよ...!」
脚に力を入れ甲板を走りながら迫る触手を躱していく。
だが触手の伸びは異常に早く、すぐに追いつかれそうになる。
『忍法:分身の術』

その鋭い触手は、大量の忍者によってあっけなく切り落とされた。

「大丈夫で御座るか?カナタ殿!」

「すっげぇ...ありがと!」
影刃のおかげで肥大化した化け物は悶絶している。
攻めるなら今しかない!
逃げている足を今度は近づくために走らせる。
明確な殺意を持って、黒い左腕を数十倍まで巨大化させる。
「図体の割に案外弱いんじゃないか!?」

「このクソガキがぁ!!」
もはや人の形を保っていない大男はこちらに向けて触手を放とうとする。
だがその判断は3秒程遅かった。
既に俺は、目の前で左腕を振りかざしていたのだから。
「一発風穴開けてやるよ」
化け物の中心をよく狙い、左ストレートを放つ。

"パァンッ"

風船が割れるような音と一緒に大男の体を巨大な左腕が貫く。
中から肉と血を吹き出しながら大男はその場に倒れ、二度と動かなくなった。
巨大化した左腕はしゅるしゅると元の大きさに戻っていく。

「貴方、戦闘の時だけ性格でも変わるの?」
リリスが地面に降りてきて俺に話しかける。
「いや、そういう訳じゃないんですけど」
いや、もしかしたらそういう性格なのか?俺って。

「話は後で、この船には"ですとろーく"とやらは居なさそうで御座る」

「奴は分身を創れる。もしかしたら全部の船にいるかもしれない!」

「ならもう暗殺は無理ね。片っ端からぶっ壊すわよ。遠くの戦艦からプロードに爆弾を詰めさせてる。影刃は右、カナタは左の方から各自戦艦内の敵を殲滅して、私はこの戦艦を破壊してから合流する」
俺はふと隣の戦艦を見るが、この戦艦から短く見積もっても100メートルは離れていることがわかる。
「えっと、一応聞きますけどどうやって隣の船に移動すればいいんですか?」

「貴方、翼生やせるんじゃなかったっけ?」
リリスはさも当然のように話す。
嫌だからそんな事した覚えないんですけどね!

「出来ないの?」

「出来ると思いますか!?」
リリスは大層面倒くさそうな顔をした後に俺に向けて魔法を使う。
すると身体が次第に宙に浮き始め、重力が軽く感じられる
「じゃああの船まで飛ばすから、その後は出来るだけ多くの敵を倒して。いざとなったら指輪使えばレイン様が来てくれるから」

「えぇ!?」
急に雑すぎないか!?

「嫌なら自分で飛びなさい。記憶が無くても事実があるんだから、頑張れば出来るんじゃない?」

「二人とも、敵が来るで御座るよ!」
司令塔の扉から大量の兵士達がこちらに向かって出てくる。

「じゃあ、衝撃に備えなさい」
リリスは手を上にあげると俺の身体も空高く舞い上がっていく。
「ちょ、ちょっと待って!!」

「行くわよ!」
その言葉と同時に俺は左へとんでもないスピードで飛んでいく。
ジェットコースターに乗っているような感覚と共にすぐさま隣の戦艦に到着すると、扉がついている壁に勢いよく激突した。

「いってぇ!!」
すぐに起き上がり、後ろの扉に手をかける。
ついている窓を見ると扉の向こうには下への階段が設置されていた。
「敵がなかに侵入したぞ!見つけ次第殺せ!」
大量の足音と声が聞こえてくる。
俺は咄嗟の判断で扉に入り、地下へと向かった。
地下は赤い照明で照らされており、長い廊下は不気味な雰囲気を漂わせている。
歩いていると、重厚な扉にぶち当たった。
鍵は...やはり空いている。
静かに扉を開けると、部屋の中は暗闇に包まれていた。
...なんの部屋だ?
暗闇を進んでいくと布?のような感触に当たった。
そして人の感触も。
敵!?
すぐに後ろに飛び跳ねる。
「また会ったな、核石持ち」

「デストローク!?」
また分身か?
黒いローブで体を暗闇に溶かしている男は、ギロリと俺を睨みつける。
「貴様はイレギュラーな存在だと奴から聞いている。そのため生かして捕えろともな」
右手の指輪に目を向ける。
「手荒な真似はしたくない。大人しく投降してもらおうか?」

「この星を散々破壊し尽くしたくせによくも...」

「その言葉、抵抗の意志ありと受け取っていいかな?」
指輪を...
脳が右手に伝達する前に俺の体は天井に打ち付けられていた。
胴体は灰色の大きな腕で力強く握りしめられている。
「ここは狭い。どうせなら広い場所で戦おう」
背中に強烈な衝撃が伝わる。
それと同時に目まぐるしい景色の転換が行われ、次まばたきをした時には俺の体は戦艦の10メートル高い空まで打ち上げられていた。
下を見ると破壊された天井と甲板の床からデストロークが飛び上がってくる。
「クソッ!!」
右手に力を...
だがそれよりも早く俺の体はデストロークの右手から伸びる触手に捕まり、そのまま戦艦の端の壁まで振り下ろされた。
”ガンッ”
鋼鉄の音が背中から響く。
立ち上がろうとするも体は痺れて言うことを聞かない。
デストロークはいつの間にか俺の目の前まで来ている。
...今使うしか無い!

『アクティベートマジック!!』
右手の指輪を黄色に光らせる。

「何かする気だな?その前に気絶して貰おうか!」
デストロークは大量の触手を両手から生やし、俺に勢いよく伸ばす。
思わず目を瞑る。
頼む...

風を感じて目を開く。
目の前には触手ではなく、一人の騎士が立っていた。
黄色の長い髪を靡かせ、右手には金色に光る剣を握っている。

「貴様が本体...でいいな?」

「報告にあった騎士とはお前だな?」
両者が見合う。
間合いは5メートル前後。
レインは剣を、デストロークは右腕を変形させた鋭い針をお互い構える。

刹那――

火花を散らしながら強者がぶつかり合う。
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