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Dルート
2日目後編 Lost
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[闘技場]
地面を勢いよく蹴り上げ、男の蝶の羽根めがけて剣を振り下ろす。
手背の円模様からは回路状に黒い線が伸び、右腕を覆い尽くしている。
剣は蝶男の爪によって器用に防がれると、そのままスライドするように爪を削りながら蝶男の真上を空振る。
「貴方のような人間を愚か者と言うんですよ」
蝶男はそのまま俺の懐に潜り込み、もう一方の爪を腹に突き刺そうと勢いよく伸ばす。
「うるさい!」
俺は剣をそのまま巨大な盾に変化させることで凶刃を防ぐ。
「ふーむ、確かに核石の反応が多少はありますが...私ほどではありませんね」
蝶男は両手から伸ばしていた爪を引っ込めると、羽根を大きく羽ばたかせて俺に風圧を飛ばす。
突風により前が一瞬見えなくなる。
しまった...!?
その隙を逃さないように蝶男は再び爪を伸ばし俺に斬りかかる。
「ッ!!」
「勝負において不意打ちは定石ですよ」
すぐさま盾を構え防御の姿勢を取る。
そこに無数の斬撃が放たれる。
次第に盾は崩れ落ち隙間から爪が入り込み頬を掠めた。
すぐに危機感を感じ後ろに飛び跳ねる。
が、蝶男はそれを逃すまいと羽根を羽ばたかせながら俺に飛びかかる。
だが同時に、俺と蝶男が一直線上になったことで俺にもチャンスができた。
右腕に力を込め、ボロボロの盾を鋭利な槍に変化させる。
「刺され!!」
そのまま槍投げのように男目掛けて槍を放つ。
「躱せないとでも思いましたか!?」
だが超至近距離で放たれた槍はピッチングすることによって綺麗に躱されてしまう。
そして蝶男の高速の突進が迫る。
躱せない...!!
急いで両手を前にして防御の構えを取る。
だがその程度で衝撃を防ぐことは出来ず、爪によって腕の肉を抉られながら数十メートル後ろの壁に打ち付けられる。
「ぐっ!?」
背中全体に激痛が走る。体は壁をスルスルとつたいながら地面に落ちていく。
なんでだ...力をがあるはずなのに...こんな奴に...
――お前は力を得たことで気が大きくなっているだけだ
ブレドの言葉が頭の中でループされる。
「おっと、どうやら援軍が来たみたいですね。私に」
目の前の蝶男が上を見上げると突如空に巨大な戦艦が三隻現れる。
それは不気味な機械音をあげると、下の部分を大きく開くと、そこから大量の黒いスーツを着た人間がこの闘技場に落下してきた。
だが黒い兵隊は一人の女性による巨大なバリアによって地に落ちるのを憚られる。
あれは...たしかリリス?
「まったく面倒な力を使いますねこの星の人間は」
蝶男の声が段々近くに聞こえてくる。
「まあいいでしょう。今のうちに私は貴方を殺して、もう一人の方に向かうとしましょうか」
動けよ...体...動...
躱そうとするも体は思うように動かない。
男が爪を大きく振り上げた瞬間―――
突然横から石が飛んできて男の羽根に当たる。
「ん?良かったですね。あなたにも援軍がいたようですよ?」
石を投げた方向には、避難したはずのマルタとワキオがいた。
「お前ら...どうして...」
「カナタ!お前なに一人で突っ走ってんだよ!あのおっさんも逃げろって言ってただろうが!」
「い、急いでこっちに!ぼ、僕たちが注意を引きますから!」
やめろ、お前らじゃ無理だ!俺でも勝てなかったんだぞ!!
そう言おうとした時、急に言葉が咽喉につっかかる。
俺でもって...
俺でもってなんだよ...なんで俺...
こんな化け物に挑もうと思った...?
先程までの高揚感は消え失せ、今度は後悔が心を蝕む。
勇気と無謀を履き違えていたことに手遅れになってから気づく。
「いい表情するじゃないですか!では、もっと絶望した顔を見せてもらいましょうか!」
蝶男は羽根を大きく広げるとエネルギーを貯めるかのように黄色い光を光らせ始める。
ダメだ。
ワキオとマルタが石を投げながら横に走り男から逃げる
蝶男は逃げ惑う二人に狙いを定めるように羽根を動かす。
ダメだダメだ。
必死に足に力を入れて立ち上がる。
羽根は大きな光を放ちながら轟音をあげる。
ダメだダメだダメだ。
フラフラになりながら男を止めようと左腕を伸ばす。
「彼らは貴方のせいで死ぬのです!貴方のその愚かな行動のせいで死ぬのですよ!!」
ダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだ!!
あと1秒早ければ間に合っただろうか。
祈りを打ち壊すように閃光は放たれた。
...
...
...激しい耳鳴りと激痛によって意識を取り戻す。
どうやら倒れていたようだ。
視界は先程の光のせいで白くぼやけており、あまり景色が見えない。
心臓の鼓動を感じ自分がまだ生きていることを実感する。
感覚が戻ってくると、今度は左腕の方に違和感を持つ。
それの方向に顔を寄せると、事態を把握した。
左腕があった場所からは黒い塵と血溜まりだけが残っていた。
もはや声すらかすれて出ない。
「どんな気分ですか?自分の実力を見誤り無謀にも私に挑んだ結果、助けに来てくれた仲間は死んだ!」
後ろの方から声がする。
な...かま...?
ふと地面に横たわりながらワキオとマルタが最後に見えた場所を見る。
だがそこに二人の姿は見えず、代わりに大量の塵が舞っていた。
...嗚呼...あああ...アアアアアアアアアアアアアアアアアアア...
目の前が暗闇に包まれていく。
[闘技場]
一般市民がほとんど避難した闘技場には数百の死体の山と、倒れている少年。そして蝶の羽根を生やした男だけが立っていた。
倒れた少年の前に立ち、長い爪を振りかざした所で蝶男は違和感を持つ。
少年の右手の手背に謎の円模様が二重に刻まれていることに。
(なんだこの紋章は。ここだけ異様に反応が強い)
蝶男が興味を持ち、しゃがんで少年の右手を触ろうとした。
その時だった。
紋章から突如黒い回路状の線が伸び、少年の右腕に広がる。
それは右腕にとどまらず少年の全身にまで伸びると、フラフラとした足を覆っていきボロボロな体を起き上がらせる。
黒い回路はなくなった左腕の代わりに巨大な黒い腕を作り上げると伸びるのを停止する。
(何が起きた?なぜ先程まで微弱だった核石反応がこんなにも強くなっているんだ...?)
「貴方、何者ですか?」
少年はなにもしゃべらない。ただひたすらに蝶男を虚ろな目で見つめている。
「まあいいでしょう、今度は全身を塵にしてくれる!」
蝶男は羽根を広げ光を貯めようとする。
その瞬間、突然目の前にいた少年の姿が消えた。
”バギギ”
骨が折れる音とともに背中に強い衝撃を受ける。
そのまま男は数百メートル先の壁まで吹き飛ばされると、そのまま闘技場の壁を突き破り、通路の地面に激突した。
(なんだ!?何が起きた!?)
頭がパニックになった蝶男はすぐに立ち上がろうとするも折れた背骨の痛みで上手く起き上がれない。
(羽根を広げなければ!)
起き上がれない蝶男は羽根を羽ばたかせることで宙に浮きあがろうとする。
だがそれを少年は許さない。
数百メートル先の男までものの十数秒で辿り着いた少年は巨大な黒い左腕を勢いよく伸ばすと、そのまま蝶男の羽根を掴む。
「やめろぉぉおお!!」
”バキバキバキッ”
という音と共に男の両羽は握り潰され、原型をなくす。
男の悲鳴を虚ろな目で見つめる少年はそのまま潰れた羽根ごと男を空中に放り投げる。
(ああ...)
巨大な左腕は形状を大剣に変化させるとそのまま宙に舞っている男を真っ二つに切り裂く。
「デストローク様ぁぁぁああああああ!!」
上半身と下半身が分断された男は断面から大量の血を流しながら地面に落下していく。
そのままグチャリという不快な音とともに男は息絶えていった。
血溜まりは地面に出来上がると闘技場の空を映し出す。
少年はそれを見た後に上を見上げる。
空にはドーム状のバリアの外でたった一人で大量の兵士と戦うリリスの姿と、空を覆い尽くすほど大きな戦艦が三隻あった。
少年は足に力を込めると、黒い回路が足まで伸びる。
回路は足首から下へハイヒールのような装甲を作り上げると、少年は徐にその場をジャンプする。
すると足の装甲はバッタのような形へ変化し、少年を空高くまで飛び上げる。
そのまま左肩から生えた巨大な大剣を振り上げると、大剣の刃は数十メートルまで伸びる。
そしてリリスの作ったバリアごと敵兵を数十人叩き切りながら戦艦の高さまで上り詰めた。
―――切り落としてやる
背中から服を突き破る形で黒い翼を生やすと、猛烈なスピードで戦艦の真横を滑空する。
大剣はさらに伸びていき数百メートルほどの長さになると滑空の勢いとともに戦艦を切り裂く。
火花を散らしながら上下に切断された戦艦は巨大な爆発を起こし墜落していった。
少年は次に近い戦艦に標的を定める。
「あの男を撃ち落とせぇぇ!!」
中から大きな声と共に戦艦は砲台を少年に向けてエネルギーを貯める。
だがそれよりも早く少年は飛び戦艦のすぐ間近まで来ていた。
巨大な大剣は大きく振り上げられると素早く振り下ろされ、戦艦は切断面から火花を散らしながら木端微塵になる。
と、そこに爆破する戦艦もろとも少年に向けていくつもの巨大なエネルギーが放たれる。
「撃て撃て撃てぇ!!なんとしても奴を殺し核石を手に入れろぉ!!」
最後の戦艦では船長らしき人が部下たちに命令していた。
大量に放たれたエネルギー砲と大破した戦艦の煙により少年の様子は分からなくなっている。
「も、目標沈黙...いや、依然顕在!!こちらに向かってきます!!」
「なにィ!?街ひとつ滅ぼせるほどの波動砲だぞぉ!?」
咄嗟に翼で体を覆うことで砲撃を防御していた少年は、そのまま最後の標的に向かって突き進んでいく。
「はやくデストローク様に報告を...」
部下が言い終わる前に戦艦は内側から大きな爆発を起こし、中の人間は高熱と爆風で死んでいく。
戦艦はあっけなく大破すると真下の森に墜落していった。
そうしてこの国に現れた全ての戦艦はたった一人の男によって破壊されたのだった。
―――足りない
少年は次の標的を見つけるために下に降りていく。その時...
急速に体を覆う黒い装甲は右手に戻っていき、翼や巨大な大剣が消滅していく。
そのまま元のボロボロな少年になると、体は数百メートル先の地面まで落下していった。
俺は...何を...
薄れゆく意識の中、金色の髪と甲冑が見えたような気がする。
地面を勢いよく蹴り上げ、男の蝶の羽根めがけて剣を振り下ろす。
手背の円模様からは回路状に黒い線が伸び、右腕を覆い尽くしている。
剣は蝶男の爪によって器用に防がれると、そのままスライドするように爪を削りながら蝶男の真上を空振る。
「貴方のような人間を愚か者と言うんですよ」
蝶男はそのまま俺の懐に潜り込み、もう一方の爪を腹に突き刺そうと勢いよく伸ばす。
「うるさい!」
俺は剣をそのまま巨大な盾に変化させることで凶刃を防ぐ。
「ふーむ、確かに核石の反応が多少はありますが...私ほどではありませんね」
蝶男は両手から伸ばしていた爪を引っ込めると、羽根を大きく羽ばたかせて俺に風圧を飛ばす。
突風により前が一瞬見えなくなる。
しまった...!?
その隙を逃さないように蝶男は再び爪を伸ばし俺に斬りかかる。
「ッ!!」
「勝負において不意打ちは定石ですよ」
すぐさま盾を構え防御の姿勢を取る。
そこに無数の斬撃が放たれる。
次第に盾は崩れ落ち隙間から爪が入り込み頬を掠めた。
すぐに危機感を感じ後ろに飛び跳ねる。
が、蝶男はそれを逃すまいと羽根を羽ばたかせながら俺に飛びかかる。
だが同時に、俺と蝶男が一直線上になったことで俺にもチャンスができた。
右腕に力を込め、ボロボロの盾を鋭利な槍に変化させる。
「刺され!!」
そのまま槍投げのように男目掛けて槍を放つ。
「躱せないとでも思いましたか!?」
だが超至近距離で放たれた槍はピッチングすることによって綺麗に躱されてしまう。
そして蝶男の高速の突進が迫る。
躱せない...!!
急いで両手を前にして防御の構えを取る。
だがその程度で衝撃を防ぐことは出来ず、爪によって腕の肉を抉られながら数十メートル後ろの壁に打ち付けられる。
「ぐっ!?」
背中全体に激痛が走る。体は壁をスルスルとつたいながら地面に落ちていく。
なんでだ...力をがあるはずなのに...こんな奴に...
――お前は力を得たことで気が大きくなっているだけだ
ブレドの言葉が頭の中でループされる。
「おっと、どうやら援軍が来たみたいですね。私に」
目の前の蝶男が上を見上げると突如空に巨大な戦艦が三隻現れる。
それは不気味な機械音をあげると、下の部分を大きく開くと、そこから大量の黒いスーツを着た人間がこの闘技場に落下してきた。
だが黒い兵隊は一人の女性による巨大なバリアによって地に落ちるのを憚られる。
あれは...たしかリリス?
「まったく面倒な力を使いますねこの星の人間は」
蝶男の声が段々近くに聞こえてくる。
「まあいいでしょう。今のうちに私は貴方を殺して、もう一人の方に向かうとしましょうか」
動けよ...体...動...
躱そうとするも体は思うように動かない。
男が爪を大きく振り上げた瞬間―――
突然横から石が飛んできて男の羽根に当たる。
「ん?良かったですね。あなたにも援軍がいたようですよ?」
石を投げた方向には、避難したはずのマルタとワキオがいた。
「お前ら...どうして...」
「カナタ!お前なに一人で突っ走ってんだよ!あのおっさんも逃げろって言ってただろうが!」
「い、急いでこっちに!ぼ、僕たちが注意を引きますから!」
やめろ、お前らじゃ無理だ!俺でも勝てなかったんだぞ!!
そう言おうとした時、急に言葉が咽喉につっかかる。
俺でもって...
俺でもってなんだよ...なんで俺...
こんな化け物に挑もうと思った...?
先程までの高揚感は消え失せ、今度は後悔が心を蝕む。
勇気と無謀を履き違えていたことに手遅れになってから気づく。
「いい表情するじゃないですか!では、もっと絶望した顔を見せてもらいましょうか!」
蝶男は羽根を大きく広げるとエネルギーを貯めるかのように黄色い光を光らせ始める。
ダメだ。
ワキオとマルタが石を投げながら横に走り男から逃げる
蝶男は逃げ惑う二人に狙いを定めるように羽根を動かす。
ダメだダメだ。
必死に足に力を入れて立ち上がる。
羽根は大きな光を放ちながら轟音をあげる。
ダメだダメだダメだ。
フラフラになりながら男を止めようと左腕を伸ばす。
「彼らは貴方のせいで死ぬのです!貴方のその愚かな行動のせいで死ぬのですよ!!」
ダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだ!!
あと1秒早ければ間に合っただろうか。
祈りを打ち壊すように閃光は放たれた。
...
...
...激しい耳鳴りと激痛によって意識を取り戻す。
どうやら倒れていたようだ。
視界は先程の光のせいで白くぼやけており、あまり景色が見えない。
心臓の鼓動を感じ自分がまだ生きていることを実感する。
感覚が戻ってくると、今度は左腕の方に違和感を持つ。
それの方向に顔を寄せると、事態を把握した。
左腕があった場所からは黒い塵と血溜まりだけが残っていた。
もはや声すらかすれて出ない。
「どんな気分ですか?自分の実力を見誤り無謀にも私に挑んだ結果、助けに来てくれた仲間は死んだ!」
後ろの方から声がする。
な...かま...?
ふと地面に横たわりながらワキオとマルタが最後に見えた場所を見る。
だがそこに二人の姿は見えず、代わりに大量の塵が舞っていた。
...嗚呼...あああ...アアアアアアアアアアアアアアアアアアア...
目の前が暗闇に包まれていく。
[闘技場]
一般市民がほとんど避難した闘技場には数百の死体の山と、倒れている少年。そして蝶の羽根を生やした男だけが立っていた。
倒れた少年の前に立ち、長い爪を振りかざした所で蝶男は違和感を持つ。
少年の右手の手背に謎の円模様が二重に刻まれていることに。
(なんだこの紋章は。ここだけ異様に反応が強い)
蝶男が興味を持ち、しゃがんで少年の右手を触ろうとした。
その時だった。
紋章から突如黒い回路状の線が伸び、少年の右腕に広がる。
それは右腕にとどまらず少年の全身にまで伸びると、フラフラとした足を覆っていきボロボロな体を起き上がらせる。
黒い回路はなくなった左腕の代わりに巨大な黒い腕を作り上げると伸びるのを停止する。
(何が起きた?なぜ先程まで微弱だった核石反応がこんなにも強くなっているんだ...?)
「貴方、何者ですか?」
少年はなにもしゃべらない。ただひたすらに蝶男を虚ろな目で見つめている。
「まあいいでしょう、今度は全身を塵にしてくれる!」
蝶男は羽根を広げ光を貯めようとする。
その瞬間、突然目の前にいた少年の姿が消えた。
”バギギ”
骨が折れる音とともに背中に強い衝撃を受ける。
そのまま男は数百メートル先の壁まで吹き飛ばされると、そのまま闘技場の壁を突き破り、通路の地面に激突した。
(なんだ!?何が起きた!?)
頭がパニックになった蝶男はすぐに立ち上がろうとするも折れた背骨の痛みで上手く起き上がれない。
(羽根を広げなければ!)
起き上がれない蝶男は羽根を羽ばたかせることで宙に浮きあがろうとする。
だがそれを少年は許さない。
数百メートル先の男までものの十数秒で辿り着いた少年は巨大な黒い左腕を勢いよく伸ばすと、そのまま蝶男の羽根を掴む。
「やめろぉぉおお!!」
”バキバキバキッ”
という音と共に男の両羽は握り潰され、原型をなくす。
男の悲鳴を虚ろな目で見つめる少年はそのまま潰れた羽根ごと男を空中に放り投げる。
(ああ...)
巨大な左腕は形状を大剣に変化させるとそのまま宙に舞っている男を真っ二つに切り裂く。
「デストローク様ぁぁぁああああああ!!」
上半身と下半身が分断された男は断面から大量の血を流しながら地面に落下していく。
そのままグチャリという不快な音とともに男は息絶えていった。
血溜まりは地面に出来上がると闘技場の空を映し出す。
少年はそれを見た後に上を見上げる。
空にはドーム状のバリアの外でたった一人で大量の兵士と戦うリリスの姿と、空を覆い尽くすほど大きな戦艦が三隻あった。
少年は足に力を込めると、黒い回路が足まで伸びる。
回路は足首から下へハイヒールのような装甲を作り上げると、少年は徐にその場をジャンプする。
すると足の装甲はバッタのような形へ変化し、少年を空高くまで飛び上げる。
そのまま左肩から生えた巨大な大剣を振り上げると、大剣の刃は数十メートルまで伸びる。
そしてリリスの作ったバリアごと敵兵を数十人叩き切りながら戦艦の高さまで上り詰めた。
―――切り落としてやる
背中から服を突き破る形で黒い翼を生やすと、猛烈なスピードで戦艦の真横を滑空する。
大剣はさらに伸びていき数百メートルほどの長さになると滑空の勢いとともに戦艦を切り裂く。
火花を散らしながら上下に切断された戦艦は巨大な爆発を起こし墜落していった。
少年は次に近い戦艦に標的を定める。
「あの男を撃ち落とせぇぇ!!」
中から大きな声と共に戦艦は砲台を少年に向けてエネルギーを貯める。
だがそれよりも早く少年は飛び戦艦のすぐ間近まで来ていた。
巨大な大剣は大きく振り上げられると素早く振り下ろされ、戦艦は切断面から火花を散らしながら木端微塵になる。
と、そこに爆破する戦艦もろとも少年に向けていくつもの巨大なエネルギーが放たれる。
「撃て撃て撃てぇ!!なんとしても奴を殺し核石を手に入れろぉ!!」
最後の戦艦では船長らしき人が部下たちに命令していた。
大量に放たれたエネルギー砲と大破した戦艦の煙により少年の様子は分からなくなっている。
「も、目標沈黙...いや、依然顕在!!こちらに向かってきます!!」
「なにィ!?街ひとつ滅ぼせるほどの波動砲だぞぉ!?」
咄嗟に翼で体を覆うことで砲撃を防御していた少年は、そのまま最後の標的に向かって突き進んでいく。
「はやくデストローク様に報告を...」
部下が言い終わる前に戦艦は内側から大きな爆発を起こし、中の人間は高熱と爆風で死んでいく。
戦艦はあっけなく大破すると真下の森に墜落していった。
そうしてこの国に現れた全ての戦艦はたった一人の男によって破壊されたのだった。
―――足りない
少年は次の標的を見つけるために下に降りていく。その時...
急速に体を覆う黒い装甲は右手に戻っていき、翼や巨大な大剣が消滅していく。
そのまま元のボロボロな少年になると、体は数百メートル先の地面まで落下していった。
俺は...何を...
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