核醒のカナタ －First Awakening－

Dルート

０日目 襲来

このルートははAルート前日からの分岐です。

［アディビアの森］
木々の隙間から月明かりがかざされ、森は神秘的な雰囲気を漂わせている。
そこに音を発さずに降りてくる一匹の蝶がいた。
それは徐々に人と同じサイズまで大きくなると、脱皮するように殻を破り、そこから蝶の羽根を生やした長身の男がでてきた。

「侵入に成功、これよりこの星の偵察を開始します」

誰かに連絡する男は、そのまま宙に羽ばたく。地面には脱皮した皮が黒い塊になっているのが見える。
蝶男はそのままこの場所を離れようとするが、一人の騎士に阻まれる。

「貴様から魔力を感じない。この星の者ではないな？」

騎士はロングヘアの金髪をなびかせながら、整った顔立ちで蝶男を睨みつけていた。

「これは想定外ですね。人気配のない場所を選んだはずですが...」

「たまたまここを通っただけだが、運が悪かったな。で、わざわざこの星になんの用だ？」

騎士は男の様子を伺いながら近づいていく。

「こちらの目的は二つ。この星の核石を回収すること。そして」

そこまで言った所で騎士は腰の長剣に手を置く。

「この星の人間を全員殺すことです！」

”キンッ”

騎士の長剣と蝶男の長い爪が十字に交差する。
初撃を制したのは騎士だった。
長剣で爪を押し飛ばすと、蝶男は数十メートル先の樹木まで吹き飛ばされる。

騎士はその軌道を追いかけるように高速で移動し、蝶男のすぐ目の前に迫る。

「またしても想定外ですね！？貴方のような人間がいるとは」

「それまた、運が悪かったな」

騎士はすぐさま追撃を放つが、ギリギリのところで回避されてしまう。
そのまま空へと飛び上がることに成功した蝶男は、騎士に向けて言い放つ。

「少し分が悪いですね。」

依然騎士は飄々（ひょうひょう）とした表情で蝶男をみつめている。

「私はここで退散するとしましょう。大事になっても面倒ですしね。ではまた会う機会があれば」

そう言うと、蝶男ははるか空へと姿を消していった。
騎士はその様子を見ると、右手の指輪を光らせながら言う。

「...リリス！」

「ハッ」

騎士の一声で目の前に魔法陣が現れると、そこからリリスと呼ばれた女性が現れた。

「他の星からの敵が来た。この国全体に探知魔法をかけてくれ。明日には全ての国民を避難させる準備も」

「他の星...まさか！？」

「どうやら奴らの目的はこの星の人間全てを殺すのと”核石”のようだ」

「核石...狙いはそれですか」

「予言はただの作り話ではなかったようだな」

リリスはそれを聞いて少し考え込むと、

「分かりました。明日国民に闘技場への避難命令を出し、兵士には探知魔法をさせましょう。私は万が一のための防御魔法の準備をします」

「頼んだぞ。俺は他国への連絡をするため少しの間留守にする」

「ハッ」

騎士は瞬時に姿を消すと、リリスもすぐに魔法陣の中に入っていき、その場が一気に静かになる。
森には不穏な空気が流れ、夜の闇は不気味な雰囲気を醸し出していた。