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Aルート
3日目後編 覚醒
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[闘技場:通路]
人が横に8人並んでも通れるであろう広い通路は有象無象によって埋め尽くされる。
出口とは真逆の方向に治療室があるため俺は人の逆流に巻き込まれながらも少しずつ前へ進む。
先程までいた戦場からは大きな音が何回も聞こえてくる。
リアナや他の戦士は無事だろうか、いや、それよりも...
ワキオやマルタは無事だろうか。
治療室にいるならそれでいい。
ただもし部屋から出てこの波に飲まれていたら...
嫌な想像を振り払い、前へ進んでいく。
途中自分の背より少し高い位置にある窓からの光がなくなる。
...?
突然夜になったにしては星や月が何一つ見えず、突然雲が罹ったにしては暗すぎる。
よく見ればわかることだった。
いや、分かったとしても信じられなかった。
闘技場の真上には空を覆い隠すほどの巨大ななにかがあった。
このファンタジーの世界にしては機械的すぎており、まるで今だけSFの世界に迷い込んだような感覚だった。
”ウィイイイイン”
上空の物体は側面から巨大な砲台のようなものをいくつも出す。
機械音が大きく響く。
その無数の砲台はこの闘技場、いや、この国全体を狙うようにまばらな方向を向く。
嫌な予感がした。
[闘技場:VIPルーム]
「皆様、これより転送魔法でここから数キロ離れた避難所へ一斉にテレポートします。絶対に転送範囲の外、つまり部屋からは出ないでください」
兵士はその場の全員に聞こえるように言う。
「これはどういうことだヘルタール王!?我々はこのトーナメントが完璧な安全面のもと行われるという信用の元はるばる来てやったのだぞ!!」
怒り狂う隣国の王。その言葉に続いて他の国の王や貴族が続々とヘルタール、この国の王に怒りをぶつける。
「ただの賊なら見張り兵だけで用は足りただろう。しかし今回の敵は...」
罵詈雑言を無視しながらヘルタール王は人差し指を上に向ける。
その行動に一同が驚く。
「まさか、本当に他の星からの侵略者だとでも言うのか...!?」
「500年前の大予言のがついに来たのじゃ...今より遠く。星からの黒い兵地に落ち、この星赤く染まる...」
「ただのでまかせではなかったのか!?」
「だから言ったのだ!こうなる前に文明を発達させ兵器を作るべきだと!?」
「そんなものができれば星からの侵略者の前に国同士の戦争が免れなかっただろう!!」
国のトップ同士の言い争いは止まることなく繰り広げられる。
「まもなく転送魔法を起動します!!皆さん動かないでください!!」
兵士が大声をあげ騒乱を抑えようとするも、王たちの興奮は収まらない。
すると、
「なんだ...?」
一人の貴族が呟く。
さきほどまで照っていた太陽はみえなくなり部屋はいきなり暗闇に包まれる。
先程までの言い争いは嘘のように静かになった。
「転送30秒前!!」
異変にいち早く対応しようと兵士は戸惑う他の兵士に呼びかける。
ハッとした兵士達はすぐに転送魔法を唱え始める。
VIPルームを覆うように5つほどの紫色の魔法陣が現れる。
”ウィイイイイン”
上空の物体は側面から巨大な砲台のようなものをいくつも出す。
機械音は魔法陣が起動する音よりも大きく響きわたる。
何か嫌な予感を感じる一人の兵士。
「転送を開始せ...」
言い終わる前に言葉は途切れた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この闘技場、いやこの国のほぼ全員がその戦艦を見上げていた。
あるものは祈り、あるものは叫び、あるものはただ呆然と立ち止まっていた。
砲台は数秒間かけながら白い光を発す。膨大なエネルギーを貯めるように。
そして、
世界は真っ白な光に包まれた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
[???]
目を覚ますと暗闇だった。
体に重みを感じる。
ッ!?
体の節々が痛む。
体はうつ伏せの体制になっているようだ。
それにしてはなぜか起き上がることができない。
立ち上がらなければ。
腕に力を入れ、体を起き上がらせる。
真上からは薄暗い光が差し込み、パラパラと破片の落ちる音がする。
上半身を暗闇から脱出させると、ようやく状況がわかってきた。
瓦礫。
先程まで闘技場だった場所はコンクリートや石など様々な瓦礫が重なってできた山になっていた。
...なんだ?これは。
状況がまるで飲み込めない。
白だった場所は無惨な残骸だけが残っており、町だった場所からは燃え広がる火と瓦礫のみが見える。
俺はただ上に浮いている戦艦を見つめることしか出来なかった。
「たす、けて...」
地面の方向から声が聞こえる。幼い少女のような声だ。
声の方向へと瓦礫をかき分ける。
「だす...け...」
声が近づくと同時に小さくなっていく。
だめだ...!
必死にかき分けると、血まみれの小さな手が見えてくる。
「いま出してあげるから!!」
返事は返ってこない。
最後の瓦礫を持ち上げる。
ようやく少女の姿は顕になった。
だが、顕になったのは少女ではなく、少女だったものだった。
首はあらぬ方向を向き、額や破片が刺さった腹からは大量の鮮血が流れている。
手を触れると、すでに冷たくなっており、少女の目をみると、すでに瞳孔が開いている。
体は反射的に後ろに飛び退ける。
その時だ。
真上の戦艦の下の部分が大きく開く。
するとそこから大量の兵士が降ってくる。
兵士たちは黒いスーツを身にまとい、頭に同じヘルメットを被っており、腕のみ肌を露出させていた。
兵士の雨に呼応するように、先程の砲撃を生き延びた兵士たちが少しずつ立ち上がっていく。
「生き残った医療部隊はすぐに怪我人を連れて避難を、戦える兵士は迎撃魔法の用意を!」
リーダー格の騎士が言い放つと、兵士達は魔法を放つ準備を始める。
そこからは戦争だった。
空からの兵士は腕を様々な形に変形させ、地上の兵士は様々な魔法詠唱を唱えている。
崩壊した国はさらに原型をなくしていく。
悲鳴と魔法の発動音が聴こえてくる。
俺はとにかくこの現場から逃げようと走った。
一度でも止まればこの争いに巻き込まれるだろう。
足を止めるな...!
自分に言い聞かせながらがむしゃらに走る。
死にたくない
ただそれだけが頭の中で連語し続ける。
途中首をはねられた兵士が目に入る。
途中全身を燃やされ苦しむ兵士が目に入る。
だが振り返らず、止まらずに走る。
いずれ大きな森が目の前に現れたので、ひとまず森の中に入り、一息つく。
戦闘の音はいつの間にか遠くで聞こえていた。
[アディビアの森]
行き先がわからないため、とりあえず前に進む。
空をみるといつの間にか夜になっていた。
一体どれだけ歩けばこの森から抜け出せるのだろうか...
突然目の前の暗闇から足音がした。
足を止め、警戒する。
ソレは暗闇から姿を月明かりに照らしながら現れた。
全長二メートルほどでガタイがよく、威厳のありそうな顔をしていて、首から下は黒いローブによって暗闇に溶けている。
しかし、人では無いことを強調するように、頭からは2本の角を生やし、灰色の肌をしていた。
その男は俺にある程度近づくと一言言う。
「...よかった」
心底安心しての一言だった。
だからこそ恐怖を覚えた。
「貴様が遠くの森に逃げ込んだという情報を受けてな。このまま姿をくらまされては探すのが面倒だからな」
男は徐にローブから右手を前方に出す。
顕になった灰色の手は徐々に分裂し数百本の細い針になると、俺の方向に放たれる。
咄嗟に右足に力を入れて大きく横に飛び跳ねる。
が、一歩間に合わず、
「...ッて!」
左手と左足に激しい痛みを覚える。
痛みの方向を見ると、指は薬指と小指が欠損しており、足には数本の針が突き刺さっていた。
「さっきの砲撃で死んでいればこんな痛みは感じることはなかっただろうに...」
男は哀れみの言葉を俺に言いながら、針を5本の剣に変形させて俺目掛けて斬りかかる。
必死に躱そうとするも痛みで足が動かない。
「がぁぁぁぁああああ!!」
あまりの痛みに悲鳴をあげる。
剣の殺傷能力自体は低いが、斬られた部分は肉が抉れ、血が滴り落ちた。
血を流しすぎたせいか、次第に体がよろめき始める。
俺は訪れようとしている自身の死を感じていた。
そのまま後ろの木にもたれかかると、意識は急激に遠のいていった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ここは死後の世界だろうか。
辺りは暗闇で自分の姿すら認識できない。
突然目の前に現れる箱。
暗闇のはずなのにはっきりと見えるそれには3重の異なる大きさの円と回路のような模様が刻まれていた。
手で触れようとすると白く光る。
――――それを使いたければ、何かを願え
頭の中で誰かの声が響く。
――――それを使いたければ、全てを投げ捨てろ
この声の主はだれだろうか。
この箱は一体なんだ?
脳内で疑問を抱く。するとそれに反応するように、
――――これはお前が望むものをもたらすものであり、破滅を抑えるためのもの。この封印を解けば、お前は強大な力を得られるだろう。しかし、いずれお前を破滅へと向かわせるだろう
これを使えば目の前の男よりも強くなれるのか?
もう一度質問してみるが声は返ってこなかった。
なんとなく、触れてはいけないような気がした。
しかし、触れなくてはいけないような気がした。
右手を箱の模様の部分に乗せる。
たちまち箱は光を白から黒に変化させ、俺の体を包んでいく。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
目を開ける。
夜の森は静けさを放っており、目の前の男は俺の姿を見て少し驚いたような表情を見せる。
右手に違和感を持ち、顔の前に出す。
手背には先程触れた箱と同じような模様が黒く刻まれていた。少し違うのは円の数が一つに減っていることだけだ。
円からは指先と腕全体に向かって回路のような黒い線が広がり始めていた。
「死ぬ間際に覚醒したか」
目の前の男はそう言い放つと腕を5本の触手に変形させ俺目掛けて勢いよく伸ばす。
こいつらはなぜそんなに人を軽々しく殺そうと思えるのだろう。
なぜあんなにあっさりと大量殺戮がおこなえるのだろう。
流れる時間がとても遅く感じ、勢いよく伸びてくる触手はスローモーションのような動きをしている。
こんなやつに、殺されたくない。
今すぐに、こいつを殺してやりたい。
命を軽々しく弄ぶこの化け物を殺して、与えてやりたい。死ぬ恐怖を。
先程までの恐怖は、すべて殺意に置き換わった。
[アディビアの森]
男は違和感を覚える。
いまから殺そうとしている目の前の少年は先程までこんなに殺意をもった目をしていただろうか。
先程までの恐怖に震えていた目は何処へ言ったのだろう。
だがそんなこと考えても無駄だ。さっさと殺して目的を果たそうではないか。
5本の触手は少年に心臓に突き刺さろうとしていた。
しかし、触手の先に少年はいなかった。
少年は左に前転するとそのまま立ち上がり、男を睨みつける。
右腕に広がる回路は手のひらに集まると、小さく黒い球を生み出し始める。
その球は刀のような見た目に伸びると少年の右手で握られる。
「...少々面倒なことになったな」
触手を腕に戻した男は、腕の関節を曲げると、そこから鋭い刃を生やす。
そしてそのまま両腕をのばすと、腕先から手を細長い針状に変形させた。
刹那――――
”ガキンッ”
刀と腕のぶつかり合い。
勝ったのは腕の方だった。
腕力で無理やり剣を弾き返し、もう一つの腕で少年に突き刺そうとする。
だが目の前の少年は視界から消えていた。
回り込んだな?
男の予想どうり少年はすばやく男の後ろに回り込んでいた。
しかしすぐに男の背中はボコボコという音とともに膨らむ。
生成された6本の棘は背中のローブを突き破る形で少年に伸びた。
少年は反射的に刀でガードしながら後ろに飛びのける。
棘に当たった刃の部分には亀裂が入っていていた。
少年はその部分を無理やりへし折ると、左手で握る。
両手に持つ元々1つだったはずの黒い刀は、今度は双剣に姿を変えた。
「その力...だが完全には覚醒してないようだな。ならば」
男は針を背中に戻すと少年の方に振り返り、自身の腕が届く範囲まで間合いを詰める。
「完全に覚醒する前にここで息の根を止めるのみ」
腕はドロドロとした液体のように溶けるとカナタを飲み込むように覆いかぶさる。
そのまま液体になった腕を個体に固まらせると、胸と腹から大量の棘を生やし、
そのまま個体の内部を串刺しにした。
しかし、
その瞬間、棘は個体になっている腕ごとバラバラに斬られる。
そこから飛び出てきたのは少年ではなく...
まっすぐ飛ばされた二本の双剣だった。
放り投げられた双剣は男の両胸に勢いよく突き刺さる。
刺さった部分からは赤い鮮血が滴り落ちていく。
その突き刺さった双剣の取手をつかむように少年はぬっと姿を現し、そのまま✕の形になるように男の体を切り裂く。
だが少年の剣撃は止まらない。
片方の剣を振り上げるとそのまま男の右腕を切り落とし、もう一つの剣を横に振るとそのまま男の横腹を斬りつける。
宙に打ち上げられた男の右腕は、
「小僧を飛ばせ!!」
という一言で巨大に膨れ上がり、そのまま少年に向かって体当たりした。
咄嗟に受け身をとるも、大きく飛ばされた少年はそのまま数十メートル先の木に激突する。
「うっ!?」
衝撃と痛みを感じながらもすぐに立ち上がろうとするが、男は少年が立ち上がるまでの間も攻撃の手をゆるめない。
新たに生やした右腕を左腕とともに巨大化させ、そこから大きな花が咲くように触手を分裂させると、その中心から光を発する。
「覚醒直後でこの戦闘能力!面白いぞ小僧!!」
二つの光は触手でできた発射口から開放され、巨大なビームとなって少年に放たれた。
「だがさらばだぁ!」
少年は立ち上がり右手を前に出す。手のひらに双剣は集まると巨大な盾に姿を変える。
そのまま盾を構え、左足で地面を蹴る。
放たれた二つのエネルギー波は巨大な黒い盾に直撃した。
森全体が大きく震える。
巨大な風圧により周りの木々は倒れ、小動物は現場から離れようと一斉に逃げ出す。
爆心地は大きなケムリで覆われており、中の様子は見えなくなっている。
「...終わりか」
煙の中で男は呟いた。
少年の死骸を探そうとゆっくりと前に歩き出す。
男にとって大きな楽しみだった戦闘の時間は終わりを告げ、先程までの興奮は収まっていた。
先程の少年の位置に近づいた所で、目の前に人の気配を感じた。
「勝手に終わらせてんじゃねえよ」
ケムリから現れたのは先程葬ったはずに少年だった。
少年の手には黒い槍が持たれており、男に向かって構えられている。
「貴様、何故!?」
ボロボロの体からはいたるところから血が流れており、血走った目が男を睨みつける。
「死ね」
そのまま大きく槍を槍を振りかぶり、勢いよく槍を放つ。
まっすぐと飛ぶ槍は風を切り、男の胸に勢いよく当たる。
そのまま心臓を突き破ると、大きな衝撃波を放ち、男を大きく後ろにのけぞらせた。
男は口から血を流しながら笑う。
「ハハ、ハハハハハ、面白い。面白いぞ小僧!」
男の体が砂となって消滅していく。
「だがそれ故に惜しいな。その体、もう長くは持つまい。万全な状態なら本体と多少は殺り合えただろうに...」
「何、言ってんだ...?」
目の前の男の体はついに全て砂となり消滅した。
急激に視界が暗くなる。
平衡感覚がつかめず、血を流しすぎたせいか貧血を起こしているようだ。
そのまま草むらにぐったりと倒れると、先程まで騒がしかった森は途端に物静かになった。
人が横に8人並んでも通れるであろう広い通路は有象無象によって埋め尽くされる。
出口とは真逆の方向に治療室があるため俺は人の逆流に巻き込まれながらも少しずつ前へ進む。
先程までいた戦場からは大きな音が何回も聞こえてくる。
リアナや他の戦士は無事だろうか、いや、それよりも...
ワキオやマルタは無事だろうか。
治療室にいるならそれでいい。
ただもし部屋から出てこの波に飲まれていたら...
嫌な想像を振り払い、前へ進んでいく。
途中自分の背より少し高い位置にある窓からの光がなくなる。
...?
突然夜になったにしては星や月が何一つ見えず、突然雲が罹ったにしては暗すぎる。
よく見ればわかることだった。
いや、分かったとしても信じられなかった。
闘技場の真上には空を覆い隠すほどの巨大ななにかがあった。
このファンタジーの世界にしては機械的すぎており、まるで今だけSFの世界に迷い込んだような感覚だった。
”ウィイイイイン”
上空の物体は側面から巨大な砲台のようなものをいくつも出す。
機械音が大きく響く。
その無数の砲台はこの闘技場、いや、この国全体を狙うようにまばらな方向を向く。
嫌な予感がした。
[闘技場:VIPルーム]
「皆様、これより転送魔法でここから数キロ離れた避難所へ一斉にテレポートします。絶対に転送範囲の外、つまり部屋からは出ないでください」
兵士はその場の全員に聞こえるように言う。
「これはどういうことだヘルタール王!?我々はこのトーナメントが完璧な安全面のもと行われるという信用の元はるばる来てやったのだぞ!!」
怒り狂う隣国の王。その言葉に続いて他の国の王や貴族が続々とヘルタール、この国の王に怒りをぶつける。
「ただの賊なら見張り兵だけで用は足りただろう。しかし今回の敵は...」
罵詈雑言を無視しながらヘルタール王は人差し指を上に向ける。
その行動に一同が驚く。
「まさか、本当に他の星からの侵略者だとでも言うのか...!?」
「500年前の大予言のがついに来たのじゃ...今より遠く。星からの黒い兵地に落ち、この星赤く染まる...」
「ただのでまかせではなかったのか!?」
「だから言ったのだ!こうなる前に文明を発達させ兵器を作るべきだと!?」
「そんなものができれば星からの侵略者の前に国同士の戦争が免れなかっただろう!!」
国のトップ同士の言い争いは止まることなく繰り広げられる。
「まもなく転送魔法を起動します!!皆さん動かないでください!!」
兵士が大声をあげ騒乱を抑えようとするも、王たちの興奮は収まらない。
すると、
「なんだ...?」
一人の貴族が呟く。
さきほどまで照っていた太陽はみえなくなり部屋はいきなり暗闇に包まれる。
先程までの言い争いは嘘のように静かになった。
「転送30秒前!!」
異変にいち早く対応しようと兵士は戸惑う他の兵士に呼びかける。
ハッとした兵士達はすぐに転送魔法を唱え始める。
VIPルームを覆うように5つほどの紫色の魔法陣が現れる。
”ウィイイイイン”
上空の物体は側面から巨大な砲台のようなものをいくつも出す。
機械音は魔法陣が起動する音よりも大きく響きわたる。
何か嫌な予感を感じる一人の兵士。
「転送を開始せ...」
言い終わる前に言葉は途切れた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この闘技場、いやこの国のほぼ全員がその戦艦を見上げていた。
あるものは祈り、あるものは叫び、あるものはただ呆然と立ち止まっていた。
砲台は数秒間かけながら白い光を発す。膨大なエネルギーを貯めるように。
そして、
世界は真っ白な光に包まれた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
[???]
目を覚ますと暗闇だった。
体に重みを感じる。
ッ!?
体の節々が痛む。
体はうつ伏せの体制になっているようだ。
それにしてはなぜか起き上がることができない。
立ち上がらなければ。
腕に力を入れ、体を起き上がらせる。
真上からは薄暗い光が差し込み、パラパラと破片の落ちる音がする。
上半身を暗闇から脱出させると、ようやく状況がわかってきた。
瓦礫。
先程まで闘技場だった場所はコンクリートや石など様々な瓦礫が重なってできた山になっていた。
...なんだ?これは。
状況がまるで飲み込めない。
白だった場所は無惨な残骸だけが残っており、町だった場所からは燃え広がる火と瓦礫のみが見える。
俺はただ上に浮いている戦艦を見つめることしか出来なかった。
「たす、けて...」
地面の方向から声が聞こえる。幼い少女のような声だ。
声の方向へと瓦礫をかき分ける。
「だす...け...」
声が近づくと同時に小さくなっていく。
だめだ...!
必死にかき分けると、血まみれの小さな手が見えてくる。
「いま出してあげるから!!」
返事は返ってこない。
最後の瓦礫を持ち上げる。
ようやく少女の姿は顕になった。
だが、顕になったのは少女ではなく、少女だったものだった。
首はあらぬ方向を向き、額や破片が刺さった腹からは大量の鮮血が流れている。
手を触れると、すでに冷たくなっており、少女の目をみると、すでに瞳孔が開いている。
体は反射的に後ろに飛び退ける。
その時だ。
真上の戦艦の下の部分が大きく開く。
するとそこから大量の兵士が降ってくる。
兵士たちは黒いスーツを身にまとい、頭に同じヘルメットを被っており、腕のみ肌を露出させていた。
兵士の雨に呼応するように、先程の砲撃を生き延びた兵士たちが少しずつ立ち上がっていく。
「生き残った医療部隊はすぐに怪我人を連れて避難を、戦える兵士は迎撃魔法の用意を!」
リーダー格の騎士が言い放つと、兵士達は魔法を放つ準備を始める。
そこからは戦争だった。
空からの兵士は腕を様々な形に変形させ、地上の兵士は様々な魔法詠唱を唱えている。
崩壊した国はさらに原型をなくしていく。
悲鳴と魔法の発動音が聴こえてくる。
俺はとにかくこの現場から逃げようと走った。
一度でも止まればこの争いに巻き込まれるだろう。
足を止めるな...!
自分に言い聞かせながらがむしゃらに走る。
死にたくない
ただそれだけが頭の中で連語し続ける。
途中首をはねられた兵士が目に入る。
途中全身を燃やされ苦しむ兵士が目に入る。
だが振り返らず、止まらずに走る。
いずれ大きな森が目の前に現れたので、ひとまず森の中に入り、一息つく。
戦闘の音はいつの間にか遠くで聞こえていた。
[アディビアの森]
行き先がわからないため、とりあえず前に進む。
空をみるといつの間にか夜になっていた。
一体どれだけ歩けばこの森から抜け出せるのだろうか...
突然目の前の暗闇から足音がした。
足を止め、警戒する。
ソレは暗闇から姿を月明かりに照らしながら現れた。
全長二メートルほどでガタイがよく、威厳のありそうな顔をしていて、首から下は黒いローブによって暗闇に溶けている。
しかし、人では無いことを強調するように、頭からは2本の角を生やし、灰色の肌をしていた。
その男は俺にある程度近づくと一言言う。
「...よかった」
心底安心しての一言だった。
だからこそ恐怖を覚えた。
「貴様が遠くの森に逃げ込んだという情報を受けてな。このまま姿をくらまされては探すのが面倒だからな」
男は徐にローブから右手を前方に出す。
顕になった灰色の手は徐々に分裂し数百本の細い針になると、俺の方向に放たれる。
咄嗟に右足に力を入れて大きく横に飛び跳ねる。
が、一歩間に合わず、
「...ッて!」
左手と左足に激しい痛みを覚える。
痛みの方向を見ると、指は薬指と小指が欠損しており、足には数本の針が突き刺さっていた。
「さっきの砲撃で死んでいればこんな痛みは感じることはなかっただろうに...」
男は哀れみの言葉を俺に言いながら、針を5本の剣に変形させて俺目掛けて斬りかかる。
必死に躱そうとするも痛みで足が動かない。
「がぁぁぁぁああああ!!」
あまりの痛みに悲鳴をあげる。
剣の殺傷能力自体は低いが、斬られた部分は肉が抉れ、血が滴り落ちた。
血を流しすぎたせいか、次第に体がよろめき始める。
俺は訪れようとしている自身の死を感じていた。
そのまま後ろの木にもたれかかると、意識は急激に遠のいていった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ここは死後の世界だろうか。
辺りは暗闇で自分の姿すら認識できない。
突然目の前に現れる箱。
暗闇のはずなのにはっきりと見えるそれには3重の異なる大きさの円と回路のような模様が刻まれていた。
手で触れようとすると白く光る。
――――それを使いたければ、何かを願え
頭の中で誰かの声が響く。
――――それを使いたければ、全てを投げ捨てろ
この声の主はだれだろうか。
この箱は一体なんだ?
脳内で疑問を抱く。するとそれに反応するように、
――――これはお前が望むものをもたらすものであり、破滅を抑えるためのもの。この封印を解けば、お前は強大な力を得られるだろう。しかし、いずれお前を破滅へと向かわせるだろう
これを使えば目の前の男よりも強くなれるのか?
もう一度質問してみるが声は返ってこなかった。
なんとなく、触れてはいけないような気がした。
しかし、触れなくてはいけないような気がした。
右手を箱の模様の部分に乗せる。
たちまち箱は光を白から黒に変化させ、俺の体を包んでいく。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
目を開ける。
夜の森は静けさを放っており、目の前の男は俺の姿を見て少し驚いたような表情を見せる。
右手に違和感を持ち、顔の前に出す。
手背には先程触れた箱と同じような模様が黒く刻まれていた。少し違うのは円の数が一つに減っていることだけだ。
円からは指先と腕全体に向かって回路のような黒い線が広がり始めていた。
「死ぬ間際に覚醒したか」
目の前の男はそう言い放つと腕を5本の触手に変形させ俺目掛けて勢いよく伸ばす。
こいつらはなぜそんなに人を軽々しく殺そうと思えるのだろう。
なぜあんなにあっさりと大量殺戮がおこなえるのだろう。
流れる時間がとても遅く感じ、勢いよく伸びてくる触手はスローモーションのような動きをしている。
こんなやつに、殺されたくない。
今すぐに、こいつを殺してやりたい。
命を軽々しく弄ぶこの化け物を殺して、与えてやりたい。死ぬ恐怖を。
先程までの恐怖は、すべて殺意に置き換わった。
[アディビアの森]
男は違和感を覚える。
いまから殺そうとしている目の前の少年は先程までこんなに殺意をもった目をしていただろうか。
先程までの恐怖に震えていた目は何処へ言ったのだろう。
だがそんなこと考えても無駄だ。さっさと殺して目的を果たそうではないか。
5本の触手は少年に心臓に突き刺さろうとしていた。
しかし、触手の先に少年はいなかった。
少年は左に前転するとそのまま立ち上がり、男を睨みつける。
右腕に広がる回路は手のひらに集まると、小さく黒い球を生み出し始める。
その球は刀のような見た目に伸びると少年の右手で握られる。
「...少々面倒なことになったな」
触手を腕に戻した男は、腕の関節を曲げると、そこから鋭い刃を生やす。
そしてそのまま両腕をのばすと、腕先から手を細長い針状に変形させた。
刹那――――
”ガキンッ”
刀と腕のぶつかり合い。
勝ったのは腕の方だった。
腕力で無理やり剣を弾き返し、もう一つの腕で少年に突き刺そうとする。
だが目の前の少年は視界から消えていた。
回り込んだな?
男の予想どうり少年はすばやく男の後ろに回り込んでいた。
しかしすぐに男の背中はボコボコという音とともに膨らむ。
生成された6本の棘は背中のローブを突き破る形で少年に伸びた。
少年は反射的に刀でガードしながら後ろに飛びのける。
棘に当たった刃の部分には亀裂が入っていていた。
少年はその部分を無理やりへし折ると、左手で握る。
両手に持つ元々1つだったはずの黒い刀は、今度は双剣に姿を変えた。
「その力...だが完全には覚醒してないようだな。ならば」
男は針を背中に戻すと少年の方に振り返り、自身の腕が届く範囲まで間合いを詰める。
「完全に覚醒する前にここで息の根を止めるのみ」
腕はドロドロとした液体のように溶けるとカナタを飲み込むように覆いかぶさる。
そのまま液体になった腕を個体に固まらせると、胸と腹から大量の棘を生やし、
そのまま個体の内部を串刺しにした。
しかし、
その瞬間、棘は個体になっている腕ごとバラバラに斬られる。
そこから飛び出てきたのは少年ではなく...
まっすぐ飛ばされた二本の双剣だった。
放り投げられた双剣は男の両胸に勢いよく突き刺さる。
刺さった部分からは赤い鮮血が滴り落ちていく。
その突き刺さった双剣の取手をつかむように少年はぬっと姿を現し、そのまま✕の形になるように男の体を切り裂く。
だが少年の剣撃は止まらない。
片方の剣を振り上げるとそのまま男の右腕を切り落とし、もう一つの剣を横に振るとそのまま男の横腹を斬りつける。
宙に打ち上げられた男の右腕は、
「小僧を飛ばせ!!」
という一言で巨大に膨れ上がり、そのまま少年に向かって体当たりした。
咄嗟に受け身をとるも、大きく飛ばされた少年はそのまま数十メートル先の木に激突する。
「うっ!?」
衝撃と痛みを感じながらもすぐに立ち上がろうとするが、男は少年が立ち上がるまでの間も攻撃の手をゆるめない。
新たに生やした右腕を左腕とともに巨大化させ、そこから大きな花が咲くように触手を分裂させると、その中心から光を発する。
「覚醒直後でこの戦闘能力!面白いぞ小僧!!」
二つの光は触手でできた発射口から開放され、巨大なビームとなって少年に放たれた。
「だがさらばだぁ!」
少年は立ち上がり右手を前に出す。手のひらに双剣は集まると巨大な盾に姿を変える。
そのまま盾を構え、左足で地面を蹴る。
放たれた二つのエネルギー波は巨大な黒い盾に直撃した。
森全体が大きく震える。
巨大な風圧により周りの木々は倒れ、小動物は現場から離れようと一斉に逃げ出す。
爆心地は大きなケムリで覆われており、中の様子は見えなくなっている。
「...終わりか」
煙の中で男は呟いた。
少年の死骸を探そうとゆっくりと前に歩き出す。
男にとって大きな楽しみだった戦闘の時間は終わりを告げ、先程までの興奮は収まっていた。
先程の少年の位置に近づいた所で、目の前に人の気配を感じた。
「勝手に終わらせてんじゃねえよ」
ケムリから現れたのは先程葬ったはずに少年だった。
少年の手には黒い槍が持たれており、男に向かって構えられている。
「貴様、何故!?」
ボロボロの体からはいたるところから血が流れており、血走った目が男を睨みつける。
「死ね」
そのまま大きく槍を槍を振りかぶり、勢いよく槍を放つ。
まっすぐと飛ぶ槍は風を切り、男の胸に勢いよく当たる。
そのまま心臓を突き破ると、大きな衝撃波を放ち、男を大きく後ろにのけぞらせた。
男は口から血を流しながら笑う。
「ハハ、ハハハハハ、面白い。面白いぞ小僧!」
男の体が砂となって消滅していく。
「だがそれ故に惜しいな。その体、もう長くは持つまい。万全な状態なら本体と多少は殺り合えただろうに...」
「何、言ってんだ...?」
目の前の男の体はついに全て砂となり消滅した。
急激に視界が暗くなる。
平衡感覚がつかめず、血を流しすぎたせいか貧血を起こしているようだ。
そのまま草むらにぐったりと倒れると、先程まで騒がしかった森は途端に物静かになった。
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