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Aルート
3日目前編 トーナメント開始
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[城周辺:闘技場]
「うわあああああああああああ!?」
一人の少年が場外へ吹き飛ばされ、それと同時に観客も
「「うおおおおおおおおおおおおお!!!」」
という歓声で盛り上がる。一体どれくらいの人がこのトーナメントを見ているのだろう。東京ドーム何個分かわからないほど広い闘技場の観客席に座る客は皆、闘技場の中央にある縦横20メートルほどの正方形状の決闘場を見ている。
「第5試合の勝者、バファリン!!!!」
司会者の勝者宣言で再び観客が盛り上がる。
闘技場のVIP席には各国の王や女王や姫に王子、貴族たちがいらっしゃるようだ。
俺とワキオはというと、今の試合で敗北したマルタのいる治療室にいる。
「いててて...」
「大丈夫か?マルタ!」
「う、うん。怪我自体はさっきのお姉さんが『ヒール』で治してくれたから...」
「さっきのやつ、凄かったな。マルタが撃った弓をいなしきった後は一瞬で近づきやがった」
あのバファリンとかいうやつ、昨日の威勢は嘘ではなかったらしい。
「でもマルタも途中まで善戦できてたし、いい勝負だったよ」
落ち込んでるマルタを励ます。実際、途中まではバファリンを近づけさせないように立ち回りいい感じに戦えていた。
「第8試合、勝者レイン!!エルフィンダール国最強の騎士は圧倒的な速さで相手選手を場外へリングアウト!!これには会場も大盛り上がり!さあ続いて第9試合を開始します!選手の方は入場口で準備してください」
司会者の声が治療室まで響いて来る。
あれ?第8試合ってさっき始まったばっかりじゃなかったっけ。
「もう終わったのか、マルタの分までがんばってくるぜ!」
「うん、頑張って!ワキオくん!」
「ぶっ飛ばしてこいよー!」
「おうよ!!」
とワキオが言うと治療室を後にする。
こういう時はしっかり鼓舞して士気を上げるのが一番だろう。
俺もマルタと一緒に観客席に戻って観戦しなければ。
「そういえばワキオの相手って誰だっけ?」
「ええと、確か、ブレドっていう戦士らしいんだけど...」
…‥‥‥‥‥‥
「さあ、続いて第9試合の選手が入場します!!まず出場する選手はこいつだ!!ワキオ!!第5試合のマルタ選手と同様に素性は不明ですが、どうやら槍を使用するようです!」
観客の歓声とともにワキオが入場してくる。
「続いての選手は、な、なんと!エルフィンダール国随一の剣使い!剣聖アルターの右腕、ブレド・アイアン!!」
観客の歓声は更に大きくなる。ワキオの前にブレドと言われている男が現れる。甲冑から露わになっている両腕には歴戦の傷が刻まれており、顔には濃いヒゲが生えており威厳のある顔つきだ。背中に1本、腰に2本の異なる長さの剣を鞘に入れている。
「それでは両者、武器を構え!」
ワキオは槍を構える、が、ブレドは構えず仁王立ちしていた。
「それでは第9試合、開始ィィイイ!!」
観客の歓声とともにワキオが素早く間合いを詰める。
ブレドは右腰の鞘に手を添える。
お互いの距離5メートル前後になったとき、ワキオは一言詠唱する。
『アクティベートマジック:スピードリング』
左手の人差し指にはめている魔道具の指輪が起動して光り、ワキオの体を青く覆う。
魔道具、それは外付けの魔力機関であり、自身の魔法と一定の魔力を道具に注ぎ込むことで、誰でも注がれた魔法を一定時間使用可能となる物。つまりこれがあれば魔法や魔力を扱えないカナタ達でも一定時間は魔法を扱うことができる。
「このまま速攻決めさせてもらうぜ!」
槍の連撃がブレドに向かって放たれるが、
「指輪か...」
ブレドは左手で剣の取手を握ると、素早く右腰から剣を抜く。
それは3本の剣のうち一番短い剣だった。
そして――――――
一振り、たった一振りだ。
強烈な風圧が決闘場全体に放たれ、ワキオはいつの間にかリングアウトギリギリのところまで吹き飛ばされていた。
ブレドはそのまま、驚いて尻餅をついているワキオにゆっくりと近づいてくる。
「魔道具は3つ用意してるのだろう?すべて使うがいい。そして、全力でかかってこい」
そう言うと、ワキオが立ち上がる猶予を与えるかのように残り5メートルほどのところで歩くのをやめた。
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうぜ!」
ゆっくりと立ち上がり、ワキオは3つのアイテムをブレドに晒す。
『アクティベートマジック:スピードリング』
『アクティベートマジック:パワーリング』
左手の人差し指と中指の指輪が光り、ワキオを覆う。そしてさらに青のポーションをゴクッと一気飲みする。
「ハァァァァアアアアア!!!!」
スピードリングと青のポーションの効果で通常の2倍ほどのスピードになったワキオは全力の槍の嵐をブレドに撃ち込む。
対するブレドは短剣を鞘にしまうと、今度は背中に背負っている長剣を抜く。
それは3秒ほどの出来事だった。
渾身の槍攻撃は、全て丁寧に弾かれてしまった。
「マジ!?」
全力をいともたやすく打ち破られた衝撃と驚きで一瞬固まるワキオ。
「生憎だが、貴様よりも速い男を知っている」
そのスキを見逃さなかったブレドは先程同様一振りで強烈な風圧を飛ばし、ワキオを決闘場から数10メートル離れた地面に吹き飛ばした。
「し、勝者ブレドォォォオオオ!!!!圧倒的な強さでワキオ選手に触れることなく場外へ吹き飛ばしたぁぁ!!!」
闘技場は観客のうおおおおおおおおおおお!!と言う歓声で包まれた。
「やはりブレドは強いのぉ、お前もそう思うだろう?アリス?」
「はい、お父様」
VIP席ではこの国の王と姫アリスがこの試合を見ていた。
そこに護衛の騎士がどこからともなく現れる。
「王様、姫様、ご談笑中失礼します。先程アディビアの森の見張りの兵士が全員行方不明になりました」
「何!?」
大イベントのため国周辺には賊などが入り込まないよう厳重に兵士を数百名配置していた。中にはかなりの強者もいたはず。
それが全員行方不明になるということはただの賊などでは無いということだ。
「今現在探知魔法で捜索しておりますが、兵士の足跡を追ったところ、こんなものが複数発見されました」
騎士は懐から奇妙なものを取り出す。それはどす黒く光っている肉片のようなものだった。
「これは...?」
「解析を試みていますが、この物体の正体は分かっておりません」
「うむ、どうやら杯を狙っているのは人だけではないらしい。至急国内と周辺に探知魔法をかけよ」
「はっ!」
騎士は一瞬で姿を消した。
「お父様、今の話...」
「安心しなさい、トーナメントは無事に終れるさ」
「...はい」
盛り上がりを見せるトーナメントの裏では、何か巨大な影が蠢いていた。
…………………
治療室には気絶しているワキオと傷が癒えきったマルタ、そして俺がいた。
「...さ、さっきのブレドって人、すごかったね」
「...ああ」
すでに二人は敗退。
元の世界に戻るためには、残りの俺が優勝するしかなくなってしまった。
「カナタの相手は、隣国の有望な剣士らしいね...」
「...ああ」
ワキオのやられようを思い出す。あれと同じようなやつが俺の相手ってことか。
―――おそらく勝つことは不可能だろう。
「やっぱり、僕らこのままこの世界で生きなきゃいけないのかな?」
「...」
それ以上言葉は出てこなかった。
「さあ、熱狂しているトーナメント予選も、次で最後の試合となりました!!果たして最後の戦士たちはどのような勝負を魅せてくれるのでしょうか!!」
俺達の空気とは裏腹にオーディエンス共は盛り上がりを見せている。
「じゃあ、行ってくる」
「う...うん」
正直不安しか無い。まさか試合前にこれほどの実力差を見せつけられるとは思っていなかった。
昨日みんなで決めた覚悟は何処に行ってしまったのだろうか。
いや、最初から考えが甘かったのかもしれない。
「参加するなら...死ぬ覚悟を決めておくんだな」
昨日の女性の一言が頭によぎる。
死ぬ覚悟...もしかしたら俺にはそれはまだ出来ていなかったのかもしれない。
試合会場までの入口が遠く感じた。
「うわあああああああああああ!?」
一人の少年が場外へ吹き飛ばされ、それと同時に観客も
「「うおおおおおおおおおおおおお!!!」」
という歓声で盛り上がる。一体どれくらいの人がこのトーナメントを見ているのだろう。東京ドーム何個分かわからないほど広い闘技場の観客席に座る客は皆、闘技場の中央にある縦横20メートルほどの正方形状の決闘場を見ている。
「第5試合の勝者、バファリン!!!!」
司会者の勝者宣言で再び観客が盛り上がる。
闘技場のVIP席には各国の王や女王や姫に王子、貴族たちがいらっしゃるようだ。
俺とワキオはというと、今の試合で敗北したマルタのいる治療室にいる。
「いててて...」
「大丈夫か?マルタ!」
「う、うん。怪我自体はさっきのお姉さんが『ヒール』で治してくれたから...」
「さっきのやつ、凄かったな。マルタが撃った弓をいなしきった後は一瞬で近づきやがった」
あのバファリンとかいうやつ、昨日の威勢は嘘ではなかったらしい。
「でもマルタも途中まで善戦できてたし、いい勝負だったよ」
落ち込んでるマルタを励ます。実際、途中まではバファリンを近づけさせないように立ち回りいい感じに戦えていた。
「第8試合、勝者レイン!!エルフィンダール国最強の騎士は圧倒的な速さで相手選手を場外へリングアウト!!これには会場も大盛り上がり!さあ続いて第9試合を開始します!選手の方は入場口で準備してください」
司会者の声が治療室まで響いて来る。
あれ?第8試合ってさっき始まったばっかりじゃなかったっけ。
「もう終わったのか、マルタの分までがんばってくるぜ!」
「うん、頑張って!ワキオくん!」
「ぶっ飛ばしてこいよー!」
「おうよ!!」
とワキオが言うと治療室を後にする。
こういう時はしっかり鼓舞して士気を上げるのが一番だろう。
俺もマルタと一緒に観客席に戻って観戦しなければ。
「そういえばワキオの相手って誰だっけ?」
「ええと、確か、ブレドっていう戦士らしいんだけど...」
…‥‥‥‥‥‥
「さあ、続いて第9試合の選手が入場します!!まず出場する選手はこいつだ!!ワキオ!!第5試合のマルタ選手と同様に素性は不明ですが、どうやら槍を使用するようです!」
観客の歓声とともにワキオが入場してくる。
「続いての選手は、な、なんと!エルフィンダール国随一の剣使い!剣聖アルターの右腕、ブレド・アイアン!!」
観客の歓声は更に大きくなる。ワキオの前にブレドと言われている男が現れる。甲冑から露わになっている両腕には歴戦の傷が刻まれており、顔には濃いヒゲが生えており威厳のある顔つきだ。背中に1本、腰に2本の異なる長さの剣を鞘に入れている。
「それでは両者、武器を構え!」
ワキオは槍を構える、が、ブレドは構えず仁王立ちしていた。
「それでは第9試合、開始ィィイイ!!」
観客の歓声とともにワキオが素早く間合いを詰める。
ブレドは右腰の鞘に手を添える。
お互いの距離5メートル前後になったとき、ワキオは一言詠唱する。
『アクティベートマジック:スピードリング』
左手の人差し指にはめている魔道具の指輪が起動して光り、ワキオの体を青く覆う。
魔道具、それは外付けの魔力機関であり、自身の魔法と一定の魔力を道具に注ぎ込むことで、誰でも注がれた魔法を一定時間使用可能となる物。つまりこれがあれば魔法や魔力を扱えないカナタ達でも一定時間は魔法を扱うことができる。
「このまま速攻決めさせてもらうぜ!」
槍の連撃がブレドに向かって放たれるが、
「指輪か...」
ブレドは左手で剣の取手を握ると、素早く右腰から剣を抜く。
それは3本の剣のうち一番短い剣だった。
そして――――――
一振り、たった一振りだ。
強烈な風圧が決闘場全体に放たれ、ワキオはいつの間にかリングアウトギリギリのところまで吹き飛ばされていた。
ブレドはそのまま、驚いて尻餅をついているワキオにゆっくりと近づいてくる。
「魔道具は3つ用意してるのだろう?すべて使うがいい。そして、全力でかかってこい」
そう言うと、ワキオが立ち上がる猶予を与えるかのように残り5メートルほどのところで歩くのをやめた。
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうぜ!」
ゆっくりと立ち上がり、ワキオは3つのアイテムをブレドに晒す。
『アクティベートマジック:スピードリング』
『アクティベートマジック:パワーリング』
左手の人差し指と中指の指輪が光り、ワキオを覆う。そしてさらに青のポーションをゴクッと一気飲みする。
「ハァァァァアアアアア!!!!」
スピードリングと青のポーションの効果で通常の2倍ほどのスピードになったワキオは全力の槍の嵐をブレドに撃ち込む。
対するブレドは短剣を鞘にしまうと、今度は背中に背負っている長剣を抜く。
それは3秒ほどの出来事だった。
渾身の槍攻撃は、全て丁寧に弾かれてしまった。
「マジ!?」
全力をいともたやすく打ち破られた衝撃と驚きで一瞬固まるワキオ。
「生憎だが、貴様よりも速い男を知っている」
そのスキを見逃さなかったブレドは先程同様一振りで強烈な風圧を飛ばし、ワキオを決闘場から数10メートル離れた地面に吹き飛ばした。
「し、勝者ブレドォォォオオオ!!!!圧倒的な強さでワキオ選手に触れることなく場外へ吹き飛ばしたぁぁ!!!」
闘技場は観客のうおおおおおおおおおおお!!と言う歓声で包まれた。
「やはりブレドは強いのぉ、お前もそう思うだろう?アリス?」
「はい、お父様」
VIP席ではこの国の王と姫アリスがこの試合を見ていた。
そこに護衛の騎士がどこからともなく現れる。
「王様、姫様、ご談笑中失礼します。先程アディビアの森の見張りの兵士が全員行方不明になりました」
「何!?」
大イベントのため国周辺には賊などが入り込まないよう厳重に兵士を数百名配置していた。中にはかなりの強者もいたはず。
それが全員行方不明になるということはただの賊などでは無いということだ。
「今現在探知魔法で捜索しておりますが、兵士の足跡を追ったところ、こんなものが複数発見されました」
騎士は懐から奇妙なものを取り出す。それはどす黒く光っている肉片のようなものだった。
「これは...?」
「解析を試みていますが、この物体の正体は分かっておりません」
「うむ、どうやら杯を狙っているのは人だけではないらしい。至急国内と周辺に探知魔法をかけよ」
「はっ!」
騎士は一瞬で姿を消した。
「お父様、今の話...」
「安心しなさい、トーナメントは無事に終れるさ」
「...はい」
盛り上がりを見せるトーナメントの裏では、何か巨大な影が蠢いていた。
…………………
治療室には気絶しているワキオと傷が癒えきったマルタ、そして俺がいた。
「...さ、さっきのブレドって人、すごかったね」
「...ああ」
すでに二人は敗退。
元の世界に戻るためには、残りの俺が優勝するしかなくなってしまった。
「カナタの相手は、隣国の有望な剣士らしいね...」
「...ああ」
ワキオのやられようを思い出す。あれと同じようなやつが俺の相手ってことか。
―――おそらく勝つことは不可能だろう。
「やっぱり、僕らこのままこの世界で生きなきゃいけないのかな?」
「...」
それ以上言葉は出てこなかった。
「さあ、熱狂しているトーナメント予選も、次で最後の試合となりました!!果たして最後の戦士たちはどのような勝負を魅せてくれるのでしょうか!!」
俺達の空気とは裏腹にオーディエンス共は盛り上がりを見せている。
「じゃあ、行ってくる」
「う...うん」
正直不安しか無い。まさか試合前にこれほどの実力差を見せつけられるとは思っていなかった。
昨日みんなで決めた覚悟は何処に行ってしまったのだろうか。
いや、最初から考えが甘かったのかもしれない。
「参加するなら...死ぬ覚悟を決めておくんだな」
昨日の女性の一言が頭によぎる。
死ぬ覚悟...もしかしたら俺にはそれはまだ出来ていなかったのかもしれない。
試合会場までの入口が遠く感じた。
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