核醒のカナタ -First Awakening-

ヒロ猫

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Aルート

2日目 願いを叶える星

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[城:王の玉座]

俺、ワキオ、マルタの3人は今目の前にいるこの国【エルフィンダール王国】の王様を前に頭をたれている。
周りにいる甲冑を身にまとっている兵士は物音を一切立てずに直立しており、王の近くには何人かの直属の人間が並んでいる。そこには昨日出会ったリリスの姿もあった。
「頭をあげよ」
その一言で俺達は頭を上げ、顔を王の方向に向ける。玉座の間は、某RPGで勇者に魔王を倒せ!だとか世界を救え!とか今にも言われそうなイメージの空間そのものである。
「話はすべてリリスから聞かせてもらった。」と言いリリスの方を向く。リリスはそんな王に軽くお辞儀をする。
そんな緊張感が漂う中、
「おいおい、突然言われないよな?そなた達は勇者としてこれから魔王を倒し世界をすくうのじゃ!とか」
ヒソヒソとワキオが言う。
「流石にそれは無いんじゃないかな...?多分」
マルタもヒソヒソと言葉を返す。
「もしかしたらここで特別な力がもらえたりして!」

「そんな力より元の世界に戻ることのほうが優先だろうg」

「―――何をコソコソ話しておる」

俺達の密談は王の一言で遮られた。

「では、さっこく本題に入るぞ。まず、お主達から聞いた怪物や霧、お主達がいた星の情報を配下たちに調べさせたが、こちらの持っている情報には一切当てはまらなかった」
それにはちょっと驚いた。てっきりあの化け物はこの世界と関係のあるモノかと思っていたんだけどな。

「そして、お主達が最も欲しているだろう元の星に戻る方法だが...残念ながらほぼ不可能に近いだろう」
へー、俺らが帰る方法はないと。
ん?
帰る方法がない!?
「な、なぜですか!?」
思い込んでいたんだ。この魔法という概念がある世界ならどうにかすれば元の世界に戻れるって。だがそんな淡い希望はすぐに打ち壊されてしまった。
「別にいいじゃん、こっちの世界も楽しそうだし」

「バ、バカですかあなたは!?元の世界の家族や先生、友達が今も僕たちを探し回って心配してるかもしれないんですよ!?」

呑気なワキオにマルタは流石に呆れる。
そうだ、俺がいなくなったら母さんはどんなに心配するだろうか...

「王の御前だ、静粛にしろ!」

と側近の騎士が俺達に対し怒鳴る。
俺達が静かになったのを確認すると、王は再び口を開く。
「なにも絶対に戻れないわけではない。たったひとつ、元の世界に戻れる方法があるかも知れぬ」

3人はその言葉を聞くと真剣な顔になる。

「その方法とはな...」

[城周辺の町:広場]

昼間のためか街には多くの人が歩いており、中には奇抜な服装をした人も何人かいる。町の中央にある大きな噴水が特徴的な広場には、特に人が集中しており、奥の闘技場につながる道へとガタイのいい大人たちが向かっているのが見える。
そんな広場の端っこのベンチに、狭苦しそうに3人組が座っていた。
俺達3人は王様から話を聞いた後、兵士から1枚の紙、召使いから翻訳の魔法がかけられたメガネを受け取った。早速メガネをかけて、この紙を見てみると、このようなことが書かれていた。

【100年に一度の奇跡を手にしろ!!願いの杯トーナメント開幕!!】
・100年に1度しか開かれないという伝説の祭りがやってきた。勝ち上がった者にはなんでも願いを叶えてくれるという盃、『願いの杯』の使用権を贈呈。果たして今回は誰が願いを叶えることになるのか。この紙を見ているそこの君も、ぜひトーナメントに参加して願いを叶えよう!!
・ルールは一対一の決闘。魔法の使用、武器の使用、魔道具3回までの使用あり。ただし、人を殺めてしまった場合は即刻退場。
・参加歩法。この紙の右下に書かれている「参加」の文字に手を当てながら、『ジョイン』と唱えるだけ!後は闘技場入り口にある登録者一覧に自分の名前が載っているか確認しよう!

「なるほどな」
つまりこれに俺達3人のうち誰かが勝てれば願いの杯とやらを使って元の世界に帰れると。

「や、やっぱ元の世界に帰るのはやめませんか?」

何かを察したマルタ。
「なんでだよ、一位になったら帰れるんだろ?挑戦しようぜ!!」

「しっかり文章読みました?魔法の使用ありなんですよ?そんなの元々勝てる見込みが1%だったのに0%になったようなものじゃないですか」
とマルタが少し早口気味に言う。

「そうだな、おそらく闘技場に向かっている強そうな人たちはほぼこのトーナメント狙いだ。俺達はただの一般人、対してあの人達は戦闘のプロ。入り込む隙間はほぼないな」

そう言うと、3人は気を落としため息をついた。
しばらくすると噴水の方から一際大きな声が聞こえてきた。

「てめえ、このバファリン様に向かってその態度。覚悟はできてんだろうなぁ」

「どけ、三下。私が用があるのは貴様ではない」

どうやら噴水の前で小競り合いが起きているようだ。少し耳を傾け、その様子を観察してみる。
自分のことをバファリン様とか言う大男の後ろには二人の子分が、甲冑を着た赤毛が特徴の女性の方は一人のようだ。

「親方、こんな女さっさとかたしてしまいましょうや!」
と言う子分Aをバファリンは睨みつける。たちまち子分二人は萎縮してしまった。
「まあ待て、どうやら目的地はおなじみたいだなぁ」

「ならば明日のトーナメントで決着をつけるか?お前が予選を突破できたらの話だが」
赤毛の女性はフッとバファリンを嘲笑する。

「ガハハハ!!そう言うからには簡単に負けてくれるなよぉ!女ぁ!!」

捨て台詞を吐いたバファリンは手下を連れて闘技場への道に向かう。
その後ろ姿が見えなくなるまで睨みつけた後、女性はほっと胸を撫で下ろした。
その一部始終をポカンと見続けていた俺達に気づいたのか、女性はこちらに近づいてくる。
「見慣れない服装ね、遠くからきた観光客?」

「え、あはい」
まああながち間違えでもない。女性は俺が持っている紙を見つめている。
「それとも、あなた達もトーナメントに参加するの?」

「えーと、それはまだ相談中でー」
なあ?とワキオとマルタの方を向く。
「ぼ、僕ら、別に強いわけではないですし...」

「それに魔法を使うことができない。つまり、出たところで負けるのが落ちです!」

ワキオが珍しくまともな事を言う。

「そんなことでこのチャンスを諦めてしまうの?」

「じゃあ何か俺達でも勝ち上がれる方法でもあるんですか?」
あるもんなら是非とも教えてほしいものだ。

「それはあなたたち次第よ」
と懐にあるポケットから赤い瓶を取り出す。

「それは?」

「見たことないの?これは赤のポーション。効果は自身の筋力を上げてくれる。次にこれ、青のポーション。脚力をあげ、一定時間だけど素早い移動が可能。このように、この町には無数の魔道具が揃っているわ。」

「そして今回は魔道具の使用が許可されるなど多少ルールが軽くなっている。つまりあなた達の戦い方次第では、強力な相手にも一矢報いることだってできるかもしれない」

「まあ参加するか決めるのはあなた達。出ないならそれも一つの選択だわ。じゃあ私は闘技場で名簿を確認してくる。」

じゃあねと女性は闘技場の方向に姿を消そうとしていたが、一瞬こちらを振り向くと、

「ああ、言うのを忘れていた。もし参加を諦めるならそれでいいけど、参加するなら...死ぬ覚悟を決めておくんだな」
今度こそ女性は闘技場の方向に姿をけした。

・・・‥‥‥‥

しばらくの沈黙が続く。最初に口を開いたのはマルタだった。
「な、なんだったんだあの人...」

「参加を促しておいて参加するなら死ぬ覚悟を決めろって」
俺達を遠くから来たのはいいけど直前で参加をためらう臆病な田舎者か何かと感違いしてるのだろうか。広く捉えれば間違ってはないかもしれないけど。

「でも、あの女性の言い分を素直に受け取れば、俺達にも勝てる可能性があるってことだな!」

「魔道具をうまく使用できなければ俺達はすぐに退場してしまうってことでもあるが」
まあだが、少しは解決の糸口が見えてきたな。

「まあ、どうせこれを逃せば本当に戻る方法がなくなるかもしれないしな」

「じゃ、じゃあやってみるの?ぼ、ぼくはやめておこうかなぁ...」

「2人で挑むより3人で挑んだほうが可能性は広がるだろ!」

「それに、この町の魔道具で何か俺らでも使える強いモノがあるかもしれないしな」

俺とワキオでマルタを説得する。

「わ、わかったよ、でも、予選は一回戦で敗戦しても絶対文句は言わないでね!!」

「わかってるよ、じゃあこれで決まりだな」
ワキオとマルタの方を向く。二人からの反論はもうない。

「たしかこの文字に指を当てて詠唱すればいいんだっけ?」
ワキオは紙の右下の文字に指を当てる。
俺とマルタもそれに続いて人差し指を文字に当てる。

「じゃあ、いくぞ!」

「「「ジョイン」」」

途端に紙は光を放ち俺達を覆った。

[城付近の町]

俺達は武器や魔道具が売ってそうな店を探し回っていた。
中には胡散臭そうな店やこれなにに使うの?と思ってしまうほどニッチな店もあった。

「次はこの店にしようぜ!」
とワキオが言いながら元気に店に入っていく。外観を見た感じ普通の武器屋って感じだな。外ガラスから見える展示品には剣、盾、弓に槍などRPGで使われそうな種類の武器がいくつか並んでいた。
店に入ると
「いらっしゃい!」と元気のいい店員の声が聞こえる。

「まずはやっぱり武器だよなぁ!二人は何にする?」

「うーん...僕は軽そうなやつがいいなぁ」

「俺は...」
やっぱり剣道部だったから剣か?王道っぽいし。

「お客様、武器選びにお困りですか?」
と店主らしき人物が話しかけてきた。

「よろしかったら当店のサービス、適正武器診断をしていきませんか?」

「「適正武器診断?」」
三人の声が重なる。

「あなた方に合う武器を私の鑑定魔法で見極めるというサービスです。無料ですのでぜひお困りなら!」

そんな便利な魔法があるのか。
「じゃあお願いします」

「ではそちらのお客様から」
と言ってマルタの頭の上に右手を置く。

一瞬店主の右手が光ると、頭においた手を離した。

「どうやらお客様に一番適合している武器はこちらですね」
と店においてある弓を持つ。
「え、弓?でも僕そんなの使ったこと無いんですが...」

「誠に申し上げにくいのですが、お客様は近接系の武器の適正はほとんどありませんでしたので...その代わり弓の適正はピカイチでございました。もし近接を希望するならこちらのダガーが一番適正していますので」

「わ、わかりましたぁ...」
ちょっとしょんぼりとするマルタ。

「では次のお客様」

「俺か!」
マルタと同じようにワキオの頭の上に手を乗せる。

「ほう、どうやらお客様に一番適しているのはこちらの槍でございますね」
店の一番上に飾ってある長い槍を取り出す。

「おおお!かっけぇ!ありがとうございます!」
テンションが上りまくりなワキオ。
そして、ついに俺の番がまわってきた。

「では鑑定をさせて頂きます」
手を頭の上に置かれ、頭の上が光り魔法が発動される。

「これは...」
店長は驚いたような声を出す。
「どうしたんですか?」

「大変申し上げにくいのですが...お客様の武器への適正はすべて平均的、特に抜き出た適正はございませんでした。ただ、強いて言うなら長剣、いや短剣...まあ良く言えばどの武器も比較的まともに扱うことができるので」
店主は苦しそうに言う。
いいんだ店主。俺に武器の才能がないことがよくわかってよかったよ...

「じゃ、じゃあそこの剣でお願いしまーす...」

「で、ではお決まりになられたでしょうか」
若干店主との会話がギクシャクとなる。

「合計40,000ゴールドでございます」
なるほど、40000ゴールドね?

ゴールド...ゴールド?

「俺達が持ってる金って...」
財布を確認すると千円札が複数枚入ってる。
そういえばこの世界に来てからすぐ捕まっては王に呼び出されてとお金を使う機会がなかった。ご飯はすべて貸し切りの宿屋の定食だったし、そりゃ別の世界なんだからお金の種類も違うに決まってるか。

「あのぉ、通貨の換金魔法とかってありますか?」

「ございません」

「よし、トーナメントは欠場しよう」

その後王様にどうにかお願いし100000ゴールド貸してもらったとさ。
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