無自覚な

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外にて

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 サディスティク晃貴もとい晃貴が手をワキャワキャさせて近寄る。僕は後退りをして逃げていたが、ついに壁に背中がぶつかり逃げ場がなくなる。僕の喉から小さく悲鳴が溢れると同時にチリンと鈴が鳴る。

「ひぃっ」

「痛いことなんてしないよ~。ほら怖がらない。」

処刑を待つ罪人の気持ち、捌かれるのを恐れる家畜の気持ちそんなのを理解できた気がした。なんとか死ぬ覚悟が出来て顔を青ざめさせてるであろう、僕を見てもなお制止にかからない晃貴。幼馴染なんて持もんじゃない。軽く後悔した。

「サディスティク晃貴。違った、こうちゃん。」

「何その売れない芸人みたいな名前?止めてよ。」

にやにやとしっぽを掴んでくる。

「いやだよ止めて。」

僕は泣きそうになって言う。

「あずが『こうちゃん、僕をお持ち帰りしてにゃー、優しくしてにゃん』って言えばやめるって言ってるじゃん。」

「難易度が高くなってる!」

僕はこうちゃんなんか嫌いと怒りを表した。すると晃貴はそうかそうかと手を僕の脇腹に這わせてくる。

「や、やぁだ!」

「言う気ないんだろ?」

僕の腹にまわされた手はくすぐったい箇所を的確に撫でたりとくすぐってくる。

「あっ…うぅ、んんっ」

「ここが良いんだろ?」

嫌だと抵抗してもニヤニヤといやらしい顔をしてくすぐり続ける。あまりにもくすぐったくて、ぼろぼろと涙がこぼれてくる。

「もう、やめてぇ…あぅ」

諦めかけていたそのとき『バシッ』と空気を裂くような乾いた音がする。脇にあった手は離れていき、僕は誰かの胸に抱かれていた。目の前にいた晃貴は床へとうずくまり、頭を抱えていた。そして周りの人たちは前屈みになったり、トイレに行く人が多く見えた。

「っっったぁぁ!」

「何を盛ってる愚図?」

僕を助けてくれたのは、クラス委員の『榊 長政』だった。そんな長政君の目線は晃貴に向けられていて、ゴミを見るような冷めた瞳をしていた。

「だってあずが可愛いんだ。仕方がないさ。」

「黙れ愚図。そんな事重々承知だ。」

僕は話の内容についていけなくなる。すると長政君の手が僕の頭の上にあったカチューシャを外すとため息を吐く。

(長政君を怒らせちゃったかな…)

「如月、だいたいお前もこんな愚図の言うことは聞くな。嫌ならはっきり言え。お前が困ることになるんだ。」

「ご、ごめんなさい。」

「あず謝ることはないぞー、長政も可愛いあずをもっと見たかったんだろ?思ったんだけどさ、しっぽだけってのもなんか良いよね。」

「うっ、うるさい!口を縫ってやろうか愚図!」

長政君は顔を真っ赤にして珍しく大きな声を上げた。晃貴は心底面白いって言う顔をしていた。

「図星かなー あとさ、さっきから愚図、愚図って酷いよ。」

晃貴は散々に長政君を挑発しにかかり、長政君は晃貴の頭を殴ったであろう、英語辞典を振り回す。
学校がちょっと憂鬱だったのに、僕は笑っていた。友達って良いなと再確認できた。そんないつも通りの日常の始まりであった。

 始業のチャイムが鳴る。









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