黒銀のフェンリル

chii

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黒銀の館

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 あれから半年が経ちリルは、12才になった。
誕生日のパーティーが開かれる。
俺も、リルのパートナーとして出なくてはいけないようだ。
記憶の中に残るダンスは、大分古い物のようだった。
それもそうだろう。その記憶は初代と二代目の物、もう3000年ほど前のものだ。
俺もリルと練習させられ今日がお披露目だ。

「娘も12才になりました。ありがとうございます。本来ならデビュタントの年でございますが、娘はデビュタントは致しません。」
その宣言に会場はザワザワと騒つく。
そこへ、教皇と王太子が入ってくる。
個人的なパーティーに教皇や王太子が来る事は無い。
二人は俺の前へ来ると礼をして隣に並ぶ。
「こちらは 今代の黒銀様です。リシェール.メリル様は今代の乙女。お二人の披露目は、これが最初で最後です。」
俺の隣でリルが綺麗にカテーシーをする。このまま表に出さないのは勿体無いような気がする。
そう思っていると、ダンスの音楽が流れて来る。俺は、リルの前に膝を突きダンスに誘う。
「踊ってくれるか?」
「はい!」
二人向かい合い、音楽に合わせて踊り出す。
可愛く、楽しそうに踊るリル。
見つめ合い、笑い合い、くるくる笑う。音楽が終わりダンスも終わる。
周りからため息が聞こえる。
「黒銀様と娘リルは、ここまでです。」
ラフィエルの宣言の中、俺はリルを伴い部屋へ戻る。その後ろから教皇と王太子も続く。



「リル、暫く離れる。お前に何か有ればすぐに戻る!」
「………はい。」
「アンナ、マーク、リルを頼む!」
「「はい!」」
俺は、教皇と王太子を伴い侯爵邸を後にした。




 黒銀の館は綺麗に整えられていた。
「さて、ジェームス、最近体調はどうだ?」
「少し、疲れやすくなっておりますね……」
「そうか、手を出せ!」
「いえ、あの……」
「出せ!!」
観念したように手を出す教皇。
それを、不思議そうに見る王太子。
前回よりも少し強めに生命力を流す。
「今回は、特別に50年ほど流しておいた。なかなか死ねんぞ!」
ニヤリと笑って行ってやると。
「この老体に鞭打って、せいぜいお役に立ってみせます」

「あの………」
「黒銀は、自分の生命力を、他人に渡すことが出来る。だから、人間の乙女も1000年生きられるのだ」
「これは、他で話してはなりませんよ。話せば………分かりますね。」
「はい!肝に銘じます!」
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