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第1章

料理作ります

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「私がお昼作ってもいいかな?」

 おじさんもおばさんも驚いている。
 そりゃそうだ。「物忘れ病」の娘が料理できるのか?ってことだ。

「料理とか覚えてるみたいなので、作ってみたいなぁと思っているんですけど……」

「覚えてることがあるのは、いいことだ。よし、作ってみな。それがきっかけで、思い出すことがあるかもしれん」

 おじさんは快く承諾してくれた。

「頑張ります」



 
 この世界には、ガスや電気がない。
 コンロは、カマド式ストーブのようなもの。薪などをストーブの中に入れ、その上で煮たり、焼いたりする。
 薪を増やしたり、減らしたりすることで、火加減の調節をする。
 私は、薪の増減で強火や弱火の調節はできないので、フライパンや鍋をストーブの上で動かして、火加減を調節することにした。

 この火加減が上手く出来るかわからないけど、頑張ってみよう。

 そして料理の味付けの基本、調味料。
 残念ながら、醤油や味噌はなかった。本当に残念。
 でも醤油の代わりになる魚醤というものがあった。

 こちらの味付けの基本は塩味である。塩は流通が多いため安い。
 反対に、砂糖や胡椒は高い。
 砂糖は塩の十倍、胡椒は塩の五十倍の値段がするらしい。高っ!日本でも、塩よりは胡椒の方が高かったけど、これ程ではなかったよね?多分…。
 砂糖が高いのはツラいね。甘いお菓子が食べたかったけど、お値段覚悟して食べなくてはいけないな。
 胡椒が高いので、代わりに香草をよく使う。これは自給自足だったよ。裏庭で、おばさんが育てているんだ。おばさん、グッジョブです!
 だから、おじさんの味付けの基本は、香草や比較的値段の安い塩味だったんだ。


 
 それでは、料理を作ってみよう!

  本日のメニューは…ハンバーグです!

 まずは、タッドボアという豚肉みたいな味の肉を包丁で細かく切り、叩いて、ひき肉を作る。

「肉をそんなに細かく切るのか…」

 おじさんがつぶやいている。

 そこへみじん切りにした玉ねぎを入れる。水に浸したパンを入れ、塩を少々入れ、よく混ぜる。丸めて、小判形にした肉をフライパンに入れて焼く。フライパンを動かしながら、焦げつかないように焼く。

 私の料理の仕方を、そばでおじさんがじっと見ている。
 あまり見ないで欲しいな。緊張するよー。

 マトの実をみじん切りにする。
 マトの実とは、普通のトマトよりもっと甘く、フルーツトマトみたいなもの。マトの実はすごく甘いので、果物として食べている。
 細かくしたマトの実とよく炒めた玉ねぎをお湯の入った鍋に入れる。塩少々と、少しピリッと辛味のする香草コシュを少し入れてみる。そして、よく煮込む。
 しばらく煮込んで、味見してみる。
 うん、こんな感じかな。上手くいったと思うよ。トマトソースになっているよ。

 煮込みハンバーグの出来上がり!

「初めて見る料理だな」

「ハンバーグっていう料理なの」

「はんばあぐ?変わった名前だな」

「食べてみて。美味しいといいんだけど…」

 お皿に盛りつけ、おじさんとおばさんに勧める。
 二人はおそるおそるといった感じで、ハンバーグを口に入れた。

「なんだ、この柔らかくて、肉汁あふれる感じは!」

 おじさんが言う。

「マトの実って、肉と合うもんだねぇ…」

 おばさんもびっくりしてる。
 後は二人とも、黙々と食べ続けた。
 私は、レタスみたいな葉とハンバーグを丸パンに挟み、出してみた。

「これはなんだ?」

「ハンバーガーです。パンにハンバーグを挟んだものです」

「どれ、食べてみようかね…」

「これも旨いぞ!」


「ごちそうさま。アリサ、美味しかったよ」

 おばさんが言ってくれる。

「よかった。美味しいって言ってもらえて」

 おじさんは腕組みをして、考え込んでいる。美味しくなかったのかな…?

「アリサ、このはんばあぐとはんばあがーとやら、店で出してみるか?」

「えっ?」

 お店に出すなんて、考えてなかったよ。自分で食べたかっただけだから。

「だ、大丈夫かな?この料理で?」

「俺は大丈夫だと思う。クレールはどう思う?」

「アタシもいいと思うよ」

「まずは誰かに食べさせて、反応をみるか…」

 こうして、試しにお店に出すこととなった。
 おじさんたちと話しあい、明日出してみることにした。


 次の日。

「おじさん、来たよー!」

 窓から外を見ていた私は、おじさんに声をかける。

 まずは誰に食べてもらうか?
 検討の結果、異世界に来たと気づいた時の狼の獣人ブライトさんと、人族のライカさんに食べてもらうことにした。
 二人は警護団に勤めていて、食堂をよく利用してくれるそうだ。
 おばさん情報によると、今日二人は早番の日のはずで、夕方より少し早めに食事をしていくはずだという。
 おばさんの言ったように、夕方少し前に二人はやって来た。

「いらっしゃいませ」

 席について、座るのを待って、おばさんが話しだした。

「今日は二人に食べてもらいたいものがあるんだけど、いいかい?」

「食べてもらいたいもの?」

 ライカさんが聞き返す。

「食べて、二人の意見を聞きたいのさ」

「いいですよ。なあ、ブライト?」

「ああ」

 ライカさんは明るい人で、気さくに話しかけてくれる。
 反対に、ブライトさんはもの静かな人で、必要なこと以外あまり話さない。

「ありがとうよ。じゃ、料理を運んでくるから、待っておくれ」

 おばさんの合図で、おじさんがハンバーグとハンバーガーを作り出す。
 もちろん、私も手伝ったよ。



「ハイよ。食べてみておくれ」

私が料理を運んでいくと、おばさんが声をかける。
 二人は初めて見る料理なので、驚いてるようだ。

「これはなんだ?」


~~~~~~~~~~~~~~~~~

 お読みいただき、ありがとうございました。

 いよいよ料理開始しました。日本と同じ野菜などは、同じ名前で出していく予定です。ご都合主義になりますが、よろしくお願いします。

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