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第3章

お守りをもらいました

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「本当に、ハンバーガー、うまかったよ」

「食った、食った!」

 マエリスさんの言ったように、レオンさんたちの食べっぷりはスゴかった。どれくらい食べたか、途中で数えるのを止めたほどだ。おじさんも、団の人たちの分を貰わないと言ったことを後悔しているに違いない。

「さてと、そろそろ本当に行かなくては。でもその前に…」

 レオンさんが言いだした。

「さっきの伯爵のことは、大丈夫だと思うが…。もしもの時のために、お守りを渡しておくよ」

「「「お守り?」」」


「マエリス、アレを作ってくれ」

 レオンさんが言うと、

「わかったわ」

 マエリスさんが答え、ポケットから一枚の布を取り出し、何か呟く。

「オペレ プルマリ」

 すると、花をくわえ、羽を広げた鳥のマークが、布に浮かびあがる。
 なに、これ?刺繍?なんだか、プリントアウトしたみたいにも見えるんだけど?

「このマークは、ウチの団のマークなんだ」

「団のマーク?」

 冒険者のグループには、それぞれのマークがあるんだって。マークのないグループもあるそうだ。マークの有り無しは自由らしい。そして、マークはギルドに登録され、管理されている。いわゆる紋章というものだね。
 そのマークがお守りになるの?

「ミニックの守護魔法とまではいかないが、充分にお守りとして、役に立つ」

 レオンさんが言った。

「ミニックの守護魔法?ミニックって、なに?」

「アリサ、まさかミニックを知らないのぉ?」

 思わず、私が呟いた言葉に、ダフネが驚く。そして、レオンさんたちも驚き、私を見る。

「えっ⁉ミニックを知らない?」

「ミニックを知らない人がいるなんて…」

 そんなに有名なの?
 すると、おばさんが慌てて、

「実はこの、物忘れ病なんです!」

と言ってくれた。

「「「物忘れ病?」」」

 皆、驚いてる。

「そうなんです。アリサはいろいろ忘れていることがあるけれど、良い子なんだ。仲良くしてやっておくれ」

 おじさんがダフネとティモに、私のことを頼んでいる。

「そうなんですかぁ。大丈夫ですよぉ。アリサが忘れちゃってることがあったら、私が教えますからぁ」

 ダフネがニッコリ笑って、言ってくれる。その横で、ティモも頷いている。

「ありがとう。これから、いろいろよろしくね」

 私も二人に、お願いした。

 話に出ていた「ミニック」とは、昔話にもなっているスゴイ魔法使いの名前なんだって。
 "ミニックの守護魔法"というのは、その伝説のミニックが作った魔法の1つ。物理的、精神的、すべての攻撃から守ってくれるという守護魔法のことだった。
 昔話になっているエピソードでは、"ミニックの守護魔法"で守られているミニックの友人の店は、物理的な攻撃では、建物に石すらあたらなかった。
 そして精神的攻撃では、悪意ある者は、その店に一歩も足を踏み入れなかったという。
 なに、それ。セキュリティー万全な魔法。スゴすぎだよ。

「ミニックのスゴイところは、精神的攻撃すら防いでしまえるってところなんだ」

 レオンさんが言う。

「私も、そこまでは使えないの。修練が足りないわ」

 マエリスさんが、ため息をつく。

「いや、マエリスは今のままで、充分スゴイ魔法使いだぞ。自信を持っていい」

 レオンさんが、マエリスさんを励ましている。

 でも、話を聞いただけでも、ミニックって、スゴイ魔法使い…なんてもんじゃないよね。魔法の神様って感じ?

 ところで、ミニックの話って、どうしてみんな知ってるんだろう?
 本はあることはある。でもスゴく高いの。学校へ行く人も限られた人だけだ。どうやって、昔話は伝わっていくんだろう?
 その答えは"口伝え"だった。
 こちらの世界にも、大道芸人とか大衆演劇のような劇団があった。その人たちが、町から町へお話を伝えていく。
 それを見た人たちが、家族や友人へ話していく。
 その話を聞いた人は、親から子へ、子から孫へと話が伝わっていく。
 こうして、多くの人たちが「ミニックの伝説」を知っているという状態になっていく。
 ここまで多くの人たちに、知られている"ミニック"さんって、スゴイ人なんだね。

「今度、ミニックの昔話をいろいろ教えてあげるわ」

 ダフネが言ってくれた。
 昔話をいろいろって…。そんなに、ミニックさんの伝説ってあるの?

 さて、そのミニックの守護魔法ほどではないけれど、お守りというマーク入りの布ってなに?

「この布があれば、大丈夫だから」

 この言葉がわかるのは、後日のことだった。



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 お読みいただき、ありがとうございます。
 "平成"の内に、更新ができてよかったです。今度の更新は"令和"になってからかな。






    
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