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第3章

食事の時間

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 夕食の時間になったら、一緒に食堂へ行こうと、ダフネと約束した。
 その時になって、気がついた。
 シロガネ、どうしよう…。

 今まで、シロガネはいつも一緒に食事をしていた。
 学校で召喚獣は控えさせることが普通ならば、寮の食堂へシロガネを連れて行くのもマズイことかなぁ?

『オレも食堂へ行くぞ』

「でも召喚獣は連れて歩かない方がいいって、言われてるから」

『なんだと⁉そんなことで、オレになにも食べさせないつもりか?』

「でもシロガネは物を食べなくても、私の魔力で大丈夫なんじゃないの?」

『食べることは、召喚獣の特権だぞ!』

「そんな特権なんてないでしょ?」


 話し合いの結果、シロガネは部屋で待っている代わりに、料理を持ってくることで、合意となった。

 シロガネは食いしん坊だなぁ。



 食事の時間になり、ダフネと食堂へ向かう。

「私はまだ召喚獣がいないから、わからないんだけどぉ…」

 ダフネが話しかけてきた。

「なに?」

「召喚獣にご飯を食べさせるって、見たことないのぉ。それに、聞いたこともないのよぉ」

 えっ⁉そ、そうなの?

「シロガネちゃんって、変わってるのねぇ」

 ダフネの私を見る目が、
「アリサも変わっている人」
って、言ってる気がする…。気のせいだよね?

 食堂に着くと、たくさんの生徒がいた。本当にいろいろな種族、年齢の人がいるみたいだ。

 食事はメイン料理2種、野菜料理2種、スープ2種、デザート2種の中から、それぞれひとつずつ取っていくというセルフサービス形式だった。

「今日のメニューはなにかしらぁ?」

 今日のメニューは…
 メイン料理
     ・ビーフェルの香草焼き
     ・ランケアヘッドの塩焼き
 野菜料理
     ・5種の野菜炒め
     ・生野菜の香草サラダ
 スープ
     ・野菜たっぷりスープ
     ・肉入りスープ
 デザート
     ・木の実のケーキ
     ・季節の果物
というものだった。

 パンは白い丸パンと食パンで、いくつ食べてもいい。
 いろいろなジャムがあり、自由につけて食べていいそうだ。

 ダフネは、ビーフェルの香草焼き、5種の野菜炒め、肉入りスープ、季節の果物を取った。

 私は、ランケアヘッドの塩焼き、生野菜の香草サラダ、野菜たっぷりスープ、木の実のケーキを取った。

 席は自由だということで、空いてる席を探し、並んで座った。

 ダフネは食パンを3枚取っていた。
 スタイルがいいのに、意外と食べるんだね。

「スゴいでしょ~?今流行りの食パンよぉ~!ふわふわして、とっても美味しいのぉ~♥」

「そ、そうなんだ…」

 食パンは流行っているの…。よかったよ。だけど、発案は私だということは、秘密にしておこう。騒がれると面倒だしね。
 私は白い丸パンを取った。これだって、ふわふわだよ?
 取ってきたジャムをつけてみる。赤いのは、イチゴジャムだね。うわー、美味しい。紫色のジャムは、おー、ブルーベリーだ。モグモグ。ジャムをたっぷりつけて食べてもいいって、幸せ~。
 魔法学校は国営で、食事代も全て国が持ってくれる。自分で払う必要はない。お代わり自由。そんなに食べられないけどね。

 ランケアヘッドの塩焼きを食べてみる。ランケアヘッドは白身魚の魔魚だという。頭に刃物のような角があるんだって。
 モグモグ。塩味が効いているね。隠し味に、香草を使っているみたい。香草を使う料理が多いなぁ。料理によって、使う香草を変えているみたい。だけど、料理には"香草"としか、書いてない。大雑把だなぁ。

 でも、さすが国営の魔法学校。材料がたっぷりあるからだろうけど、食事は美味しいね。

「ねぇ、美味しいでしょ~?」

 ダフネが聞いてくる。

「うん、美味しいね」

 そして、二人でモグモグ食べる。しばらくして、ダフネが話しかけてきた。

「私、隣町の出身なんだけどぉ。アリサはぁ?」

「私はこの町の出身よ」

 本当は異世界の出身なんだけどね…と心の中で呟く。

「そうなのぉ?じゃあ"川の夕暮れ亭"って、行ったことあるぅ?」

 ダフネが私の方へ身を寄せながら、勢いよく聞いてくる。

「"川の夕暮れ亭"?え、えっと…」

 まさか、食堂の名前が急に出てくるなんて、驚きだ。そしてダフネの勢いに圧され、私は少し引きぎみになる。

「そこの料理がスゴい美味しいんですってぇ。私、この町に来たら、絶対行くつもりなのぉ」

「そ、そうなんだ…。えっと、隣町で、その食堂のうわさを聞いたの?」

「えぇ、私の実家は隣町で雑貨屋をしてるんだけどぉ、仕入れ先の人から聞いたのぉ。その人は、この町に来た時”川の夕暮れ亭”で食事をしたんですってぇ。ものすごぉーく、美味しかったって、何回も話してるのぉ」

「何回も話してるんだ…」

「そうなのよぉー。毎回毎回『あんなに美味しいもの、食べたことなかった』って言うのぉ。もぉー、みんな羨ましくってぇ」

「みんな?」

「取引先の人みんなに話してるからぁ」

 まさか、隣町まで食堂のことが広まっているとは思わなかった。宣伝になってて、いいと思うけど。私の実家がその食堂だと言うべきか、黙っているべきか…。

「だから、魔法学校に入学するために、この町に来ることになったら、みんなうらやましがったわぁ。だからここにいる間に、絶対行くんだからぁ!」

 ダフネは両手を握りしめ、力強く宣言した。みんながうらやましがるところ、食堂に行けるってところ⁉

 繰返し言ってるね…本当に食堂に絶対行くんだね…。ならば、話しておかないといけないね。これから寮の部屋も一緒だしね。

「あのね、私の実家、食堂をやってるの…」

「そうなのぉ?奇遇ねぇ」

「それで名前が"川の夕暮れ亭"って言うんだ…」

「"川の夕暮れ亭"ですってぇ⁉」



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 お読みいただき、ありがとうございます。

 
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