会談道中

shishamo346

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深夜の稲荷巡り

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 月末の真夜中から、月始めの朝方まで、稲荷神社は徹夜で賑わうという、妙なイベントがあるという。

 僕は、元々は別の県出身だ。こちらに大学で進学して、そのまま就職したので、実は、稲荷神社のことは、そう詳しくない。


「大学では、そういう遊び、しませんでしたか?」

「やらなかったな。サークルで話題に出なかったし」

「好きな人は、毎月、行くんですよ。俺も、たまたま知り合いに誘われて知ったんですけどね」


 そんな話を会社の同期から聞いた。この同期だって、出身地はかなり遠い県だ。お互い、知らないことばかりで、驚いたよ、みたいな終わり方をした。

 そういう話を聞いてしまうと、行かないといけないな、なんて思ってしまう。何せ、今日が月末だ。これはもう、お導きだな、なんて神をこれっぽっちも信じていないというのに、そう思って、車で行ってみる。

 電車バスで行ける場所ではない、かなりの僻地にある稲荷神社であるが、観光地として賑わっているので、休日はかなり賑わっている。その日は、金曜日なので、それ以上だったのかもしれない。車で行けば、駐車場渋滞に巻き込まれた。途中、諦めそうになったが、ここまで来たんだし、と頑張って行ってみれば、もう、人、人、人!! 真夜中なのに、人で溢れている。このまま、朝日を拝もう、なんて輩も多いだろう。

 飲食店も、お土産屋も、もう、どこも人で溢れていた。毎日、お祭り気分が味わえるように、という出店もあちこち出ている。そういうものを見て歩いていると、思う。

 ここは一人で来る場所じゃないな。

 どこも、家族だったり友達だったり連れだっている。そういう所に、急に決めて行った僕は、ちょっと馴染んでいなかった。次は、話を持ってきた同僚か、それとも、詳しそうな知り合い木野観世と一緒に来よう、なんて考え、帰路につく。

 帰る時も車が酷いものだ。出ていく方も入る方も、渋滞している。それを抜けて、いつもの木野の自宅近くを通る道に出る。そこは、見通しのよいT字路だ。そこを曲がって突き当りが木野の自宅だ。もう真夜中なので、さすがに寝ているだろうな、なんて思って走らせていると、その見通しのよいT字路でバイクが一台、倒れていた。傍らに人が倒れているので、僕は車のハザードを出して、停車し、バイクの所にいく。


「どうした? 大丈夫か?」


 意識がないようだ。少し頬を叩いてやれば、意識を戻して、起きようとするも、苦痛で呻いた。暗くてわからなかったが、服のあちこちが流血で汚れていた。

 僕はこの怪我人をそのままにしておくわけにはいかず、救急車を呼んで、指示を仰ぎ、とやっている内に、警察までやってきた。

 意識を戻したライダーは、辺りを見回していた。警察と僕がいるだけなのに、安心している。警察は、バイクの状態とか見ていた。

 ライダーはまだ近くにいる僕の腕をつかんだ。


「ババアが、追いかけてきたんだ」

「………」

「信じてないだろう! ババアが追いかけてきて、バイクに乗ってきたんだ。それで、操作ミスして、気づいたら、こうだった」

「そうか。災難だったな」

「いってぇー」


 僕はそういうしかない。ライダーは、自らに起こった出来事を僕に話したことで、満足したようだ。それからは、痛みに呻いていた。

 警察に簡単な事情聴取をその場で受けている内に、救急車がやってきた。そうして、ライダーとはお別れした。

 僕はただ、通りかかっただけだったので、警察はそれ以上、僕に聞き取りはしなかった。ただの人命救助だ。一応、連絡先とかは聞かれたので、答えて、解放された。

 そうして、いつもの通り、木野の自宅の前で車を一時停止して、おかしなことがあった。

 なんと、木野が外でタバコを吸っているのだ。

 木野も、もう見慣れてしまった僕の車が真夜中に来たので、物凄く驚いている。

 僕はいつもの通り、木野の自宅の駐車場に車を停めた。木野は僕が来るのが当然、とばかりに、タバコの煙をふかしながら、駐車場にやってくる。


「お前、真夜中にタバコを吸う趣味はないって言ってたよな」

「今日は月末月始めで賑やかすぎるから、眠れないんだ」

「そうなんだ」


 稲荷神社とはそれなりの距離があるというのに、木野にとっては煩いらしい。

 木野はいつもの通り、僕を縁側に迎え入れた。そして、いつもの通り、酒を持ってくる。


「いや、さすがに帰るから」

「そんなの背負って行くのはやめろ」

「何が!?」


 僕の背中に何かいるらしい。僕は背中を見るも、何もない。

 木野は僕の背中をポンポンと叩いた。それだけなのに、急に軽くなったような気になる。


「ああいう騒がしい所に行くと、色々と持って帰ってくることとなるぞ。部屋に戻ったら、あなたの知らない世界、だな」


 わざと、タバコの煙を僕の顔にふきつける。


「やめろ!!」

「こういうのは嫌われるんだよ。ほら、離れて行った。いったい、どこで拾ったんだか」


 僕は先ほどの事故現場について簡単に説明する。木野はタバコの煙をまた、祠のほうに吐きながら、無言で耳を傾けてくれた。

「あそこかー。しっかりしないから、こういうものが集まるんだよ」

「何があったのか? やはり、曰くがあるんだな」

「あそこはな、元は木野家の自宅があった場所だ」


 話はこうだった。
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