7 / 13
深夜の稲荷巡り
しおりを挟む
月末の真夜中から、月始めの朝方まで、稲荷神社は徹夜で賑わうという、妙なイベントがあるという。
僕は、元々は別の県出身だ。こちらに大学で進学して、そのまま就職したので、実は、稲荷神社のことは、そう詳しくない。
「大学では、そういう遊び、しませんでしたか?」
「やらなかったな。サークルで話題に出なかったし」
「好きな人は、毎月、行くんですよ。俺も、たまたま知り合いに誘われて知ったんですけどね」
そんな話を会社の同期から聞いた。この同期だって、出身地はかなり遠い県だ。お互い、知らないことばかりで、驚いたよ、みたいな終わり方をした。
そういう話を聞いてしまうと、行かないといけないな、なんて思ってしまう。何せ、今日が月末だ。これはもう、お導きだな、なんて神をこれっぽっちも信じていないというのに、そう思って、車で行ってみる。
電車バスで行ける場所ではない、かなりの僻地にある稲荷神社であるが、観光地として賑わっているので、休日はかなり賑わっている。その日は、金曜日なので、それ以上だったのかもしれない。車で行けば、駐車場渋滞に巻き込まれた。途中、諦めそうになったが、ここまで来たんだし、と頑張って行ってみれば、もう、人、人、人!! 真夜中なのに、人で溢れている。このまま、朝日を拝もう、なんて輩も多いだろう。
飲食店も、お土産屋も、もう、どこも人で溢れていた。毎日、お祭り気分が味わえるように、という出店もあちこち出ている。そういうものを見て歩いていると、思う。
ここは一人で来る場所じゃないな。
どこも、家族だったり友達だったり連れだっている。そういう所に、急に決めて行った僕は、ちょっと馴染んでいなかった。次は、話を持ってきた同僚か、それとも、詳しそうな知り合い木野観世と一緒に来よう、なんて考え、帰路につく。
帰る時も車が酷いものだ。出ていく方も入る方も、渋滞している。それを抜けて、いつもの木野の自宅近くを通る道に出る。そこは、見通しのよいT字路だ。そこを曲がって突き当りが木野の自宅だ。もう真夜中なので、さすがに寝ているだろうな、なんて思って走らせていると、その見通しのよいT字路でバイクが一台、倒れていた。傍らに人が倒れているので、僕は車のハザードを出して、停車し、バイクの所にいく。
「どうした? 大丈夫か?」
意識がないようだ。少し頬を叩いてやれば、意識を戻して、起きようとするも、苦痛で呻いた。暗くてわからなかったが、服のあちこちが流血で汚れていた。
僕はこの怪我人をそのままにしておくわけにはいかず、救急車を呼んで、指示を仰ぎ、とやっている内に、警察までやってきた。
意識を戻したライダーは、辺りを見回していた。警察と僕がいるだけなのに、安心している。警察は、バイクの状態とか見ていた。
ライダーはまだ近くにいる僕の腕をつかんだ。
「ババアが、追いかけてきたんだ」
「………」
「信じてないだろう! ババアが追いかけてきて、バイクに乗ってきたんだ。それで、操作ミスして、気づいたら、こうだった」
「そうか。災難だったな」
「いってぇー」
僕はそういうしかない。ライダーは、自らに起こった出来事を僕に話したことで、満足したようだ。それからは、痛みに呻いていた。
警察に簡単な事情聴取をその場で受けている内に、救急車がやってきた。そうして、ライダーとはお別れした。
僕はただ、通りかかっただけだったので、警察はそれ以上、僕に聞き取りはしなかった。ただの人命救助だ。一応、連絡先とかは聞かれたので、答えて、解放された。
そうして、いつもの通り、木野の自宅の前で車を一時停止して、おかしなことがあった。
なんと、木野が外でタバコを吸っているのだ。
木野も、もう見慣れてしまった僕の車が真夜中に来たので、物凄く驚いている。
僕はいつもの通り、木野の自宅の駐車場に車を停めた。木野は僕が来るのが当然、とばかりに、タバコの煙をふかしながら、駐車場にやってくる。
「お前、真夜中にタバコを吸う趣味はないって言ってたよな」
「今日は月末月始めで賑やかすぎるから、眠れないんだ」
「そうなんだ」
稲荷神社とはそれなりの距離があるというのに、木野にとっては煩いらしい。
木野はいつもの通り、僕を縁側に迎え入れた。そして、いつもの通り、酒を持ってくる。
「いや、さすがに帰るから」
「そんなの背負って行くのはやめろ」
「何が!?」
僕の背中に何かいるらしい。僕は背中を見るも、何もない。
木野は僕の背中をポンポンと叩いた。それだけなのに、急に軽くなったような気になる。
「ああいう騒がしい所に行くと、色々と持って帰ってくることとなるぞ。部屋に戻ったら、あなたの知らない世界、だな」
わざと、タバコの煙を僕の顔にふきつける。
「やめろ!!」
「こういうのは嫌われるんだよ。ほら、離れて行った。いったい、どこで拾ったんだか」
僕は先ほどの事故現場について簡単に説明する。木野はタバコの煙をまた、祠のほうに吐きながら、無言で耳を傾けてくれた。
「あそこかー。しっかりしないから、こういうものが集まるんだよ」
「何があったのか? やはり、曰くがあるんだな」
「あそこはな、元は木野家の自宅があった場所だ」
話はこうだった。
僕は、元々は別の県出身だ。こちらに大学で進学して、そのまま就職したので、実は、稲荷神社のことは、そう詳しくない。
「大学では、そういう遊び、しませんでしたか?」
「やらなかったな。サークルで話題に出なかったし」
「好きな人は、毎月、行くんですよ。俺も、たまたま知り合いに誘われて知ったんですけどね」
そんな話を会社の同期から聞いた。この同期だって、出身地はかなり遠い県だ。お互い、知らないことばかりで、驚いたよ、みたいな終わり方をした。
そういう話を聞いてしまうと、行かないといけないな、なんて思ってしまう。何せ、今日が月末だ。これはもう、お導きだな、なんて神をこれっぽっちも信じていないというのに、そう思って、車で行ってみる。
電車バスで行ける場所ではない、かなりの僻地にある稲荷神社であるが、観光地として賑わっているので、休日はかなり賑わっている。その日は、金曜日なので、それ以上だったのかもしれない。車で行けば、駐車場渋滞に巻き込まれた。途中、諦めそうになったが、ここまで来たんだし、と頑張って行ってみれば、もう、人、人、人!! 真夜中なのに、人で溢れている。このまま、朝日を拝もう、なんて輩も多いだろう。
飲食店も、お土産屋も、もう、どこも人で溢れていた。毎日、お祭り気分が味わえるように、という出店もあちこち出ている。そういうものを見て歩いていると、思う。
ここは一人で来る場所じゃないな。
どこも、家族だったり友達だったり連れだっている。そういう所に、急に決めて行った僕は、ちょっと馴染んでいなかった。次は、話を持ってきた同僚か、それとも、詳しそうな知り合い木野観世と一緒に来よう、なんて考え、帰路につく。
帰る時も車が酷いものだ。出ていく方も入る方も、渋滞している。それを抜けて、いつもの木野の自宅近くを通る道に出る。そこは、見通しのよいT字路だ。そこを曲がって突き当りが木野の自宅だ。もう真夜中なので、さすがに寝ているだろうな、なんて思って走らせていると、その見通しのよいT字路でバイクが一台、倒れていた。傍らに人が倒れているので、僕は車のハザードを出して、停車し、バイクの所にいく。
「どうした? 大丈夫か?」
意識がないようだ。少し頬を叩いてやれば、意識を戻して、起きようとするも、苦痛で呻いた。暗くてわからなかったが、服のあちこちが流血で汚れていた。
僕はこの怪我人をそのままにしておくわけにはいかず、救急車を呼んで、指示を仰ぎ、とやっている内に、警察までやってきた。
意識を戻したライダーは、辺りを見回していた。警察と僕がいるだけなのに、安心している。警察は、バイクの状態とか見ていた。
ライダーはまだ近くにいる僕の腕をつかんだ。
「ババアが、追いかけてきたんだ」
「………」
「信じてないだろう! ババアが追いかけてきて、バイクに乗ってきたんだ。それで、操作ミスして、気づいたら、こうだった」
「そうか。災難だったな」
「いってぇー」
僕はそういうしかない。ライダーは、自らに起こった出来事を僕に話したことで、満足したようだ。それからは、痛みに呻いていた。
警察に簡単な事情聴取をその場で受けている内に、救急車がやってきた。そうして、ライダーとはお別れした。
僕はただ、通りかかっただけだったので、警察はそれ以上、僕に聞き取りはしなかった。ただの人命救助だ。一応、連絡先とかは聞かれたので、答えて、解放された。
そうして、いつもの通り、木野の自宅の前で車を一時停止して、おかしなことがあった。
なんと、木野が外でタバコを吸っているのだ。
木野も、もう見慣れてしまった僕の車が真夜中に来たので、物凄く驚いている。
僕はいつもの通り、木野の自宅の駐車場に車を停めた。木野は僕が来るのが当然、とばかりに、タバコの煙をふかしながら、駐車場にやってくる。
「お前、真夜中にタバコを吸う趣味はないって言ってたよな」
「今日は月末月始めで賑やかすぎるから、眠れないんだ」
「そうなんだ」
稲荷神社とはそれなりの距離があるというのに、木野にとっては煩いらしい。
木野はいつもの通り、僕を縁側に迎え入れた。そして、いつもの通り、酒を持ってくる。
「いや、さすがに帰るから」
「そんなの背負って行くのはやめろ」
「何が!?」
僕の背中に何かいるらしい。僕は背中を見るも、何もない。
木野は僕の背中をポンポンと叩いた。それだけなのに、急に軽くなったような気になる。
「ああいう騒がしい所に行くと、色々と持って帰ってくることとなるぞ。部屋に戻ったら、あなたの知らない世界、だな」
わざと、タバコの煙を僕の顔にふきつける。
「やめろ!!」
「こういうのは嫌われるんだよ。ほら、離れて行った。いったい、どこで拾ったんだか」
僕は先ほどの事故現場について簡単に説明する。木野はタバコの煙をまた、祠のほうに吐きながら、無言で耳を傾けてくれた。
「あそこかー。しっかりしないから、こういうものが集まるんだよ」
「何があったのか? やはり、曰くがあるんだな」
「あそこはな、元は木野家の自宅があった場所だ」
話はこうだった。
0
あなたにおすすめの小説
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/1/13:『こえ』の章を追加。2026/1/20の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/12:『あけてはいけない』の章を追加。2026/1/19の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/11:『みきさー』の章を追加。2026/1/18の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/10:『つかまれる』の章を追加。2026/1/17の朝8時頃より公開開始予定。
2026/1/9:『ゆうじんのかお』の章を追加。2026/1/16の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/8:『ついてきたもの』の章を追加。2026/1/15の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/7:『かわぞいのみち』の章を追加。2026/1/14の朝4時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる