魔法使いの悪友

shishamo346

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沈黙の献身

献身

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 屋敷に戻るなり、私はルキエルを私の私室に閉じ込めた。妖精封じの拘束具に、香を焚きしめてやったから、もう、ルキエルはベッドから動けないだろう。
 そうやって、妙にひっかきまわす男を封じ込めつつ、使用人たちと側近たちを集めた。
 呼び出された面々は、一体、どんなことが起こるのか、戦々恐々としている。滅多にないことなのだ、こういうこと。
「ここで、言っておく。もう、サツキの話をするな。サツキが私の初恋だとか、引きずってる、とか、そういうのはやめろ」
『………』
「わかったか」
「そういうくだらないことで集めないでください!!」
 言われた!! 本当にくだらないことだと、私だってわかってる。
「もう、うんざりなんだ。養子に言われ、ルキエルに言われ、本当に迷惑だ。これ、社交の場でも有名だ、なんて言われたら、もう社交だってしない!!」
 私の耳に入らないように、実は噂されてるんじゃないか、なんて危ぶんだ。それほど、恐怖なんだよ、この話は。
「伯爵令嬢サツキの関わりは、本当にまずい。外で言いふらしたりしてないよな? あれは、一歩間違えると、大変なこととなるぞ。そういう家門が毎年、出てるだろう」
 伯爵令嬢サツキを裏切った家門は、毎年、何らかの罰を受けるように、酷いこととなっているのだ。運が悪いと、落ちぶれる。わかってるのか、そういうこと!!
「我が家は、彼女関係で罠を仕掛ける立場ではあるが、それは裏での話だ。表向きは、一時の先輩後輩でしかない。わかったら、もう、彼女の話題は出さない。いいな」
「ですが、ルキエルはどうなのですか。似ていますよね」
 言われた!! ルキエル、男だけど、サツキ寄りの顔立ちである。体躯だって、アルロのせいで鍛えられないから、華奢だ。
「ま、まあ、ルキエルは、気の迷いだ」
 そういうしかない。本当に、そうなんだよ。ルキエルは気の迷いで、今の関係だ。
「ルキエルとそういう関係となる以前から、もう、子を作ることは出来ないとは知っていましたから、我々は気にしていませんが、その、どうしても、そう見てしまいますから、つい」
「どうせ、私はそう長くない。見逃してくれ」
「………」
 代々、私に仕えている家門がいくつかある。当主が短命であることは知っているのだ。私は、たまたま長く生きてはいるが、もうそろそろ、寿命だろう。
 先の短い私の世迷い事だ。ルキエルは、本当にそうなのだ。




 ちょっとした注意をして私室に戻れは、ルキエルはすっかり出来上がっていた。両手を後ろで拘束され、部屋に満たされた妖精を狂わせる香により、女の顔をして、私を見ていた。
「待たせてしまったな」
「もう、欲しい」
 口づけてやれば、ルキエルは酷く喜んだ。だけど、両手を封じられているので、体の自由がなく、身もだえする。もっと私にすり寄りたいのだろう。
「もう、逆らったりしないから、これ、外してくれ」
「たまには、こういう趣向でやろう。アルロにも、こういうこと、されたことがあるだろう」
「やぁ!」
 ちょっと胸を服の上から撫でてやるだけで、激しくのけ反るルキエル。この香を使って、ルキエルは散々、アルロの行為を受けたのだ。香だけでも、簡単に反応してしまう。ルキエルの一物の先から、白いものが漏れていた。
「前戯はしっかりしよう」
「もう、それ、いいからぁ!!」
 はやく私の一物を入れてほしいばかりのルキエル。しかし、私はそうやって苦しんでいるルキエルを見ていたい。だから、わざと緩いルキエルの蕾に指を一本だけ挿入してやる。
「もっと太いのぉ!!」
「ゆっくりと広げよう」
 たった一本はあっけなく根本まで飲み込まれていく。たった一本でルキエルの喜ぶ場所をついてやると、意識してか、きゅっと絞めてきた。そこにずるりと抜き差しをしてやると、ちょっとした刺激をどうにか拾おうと、声もな集中した。
 荒い息を吐き出し、宙を見つめる。少しでも、刺激を受けようとしているのだが、うまくいっていないのだろう。だけど、両手が道具で封じられているから、動くに動けない。
「もっと、指を」
「わかっている」
 じっくりとしてやりたいが、ルキエルはもう出来上がっているのだ。仕方なく、三本もの指を増やしてやれば、ずぶずぶと飲み込んでいく。それと同時に、ルキエルは喜んだ。
「ああっ!!」
 ただ指を増やしただけで、軽い絶頂をするルキエル。中が私の指を締め付けて、痙攣した。
「もっと、奥、欲しいぃ」
「もう少し、緩めてからだ」
 ぐちゅぐちゅと指を動かして、蕾を緩めていく。そうしていくと、とうとう、私の指三本も根本まで飲み込まれてしまう。もう準備は出来ているが、ルキエルが悶える姿をしばらく眺めていたくて、指を動かしながら、目で楽しんでいた。
「やぁ、またぁ!!」
 そして、ルキエルはまた絶頂する。今度は、もう少し強めだ。本数もあって、さらに刺激してやったのだから、少しだけ、満たされたのだろう。だけど、さらに奥が欲しいと、腰を揺らして、無駄なことをしている。
「まだぁ?」
 甘えた声で聞いてきた。ルキエルは前戯なんていらないのだ。さっさと奥まで挿入してもらいたいばかりだ。だが、私の下半身が全く反応していないから、準備が足りないと思いこんでいる。
「口で、する、からぁ」
「わかったわかった、もう先に進めよう」
「んぅ」
 指を抜いて、口づけすると、ルキエルは喜んで舌まで出してきた。やっとしてもらえるのが、嬉しいのだ。
 だが、両手は拘束されたままなのに、ルキエルは不安な顔を見せた。
「逆らったりしない、から」
「たまには、こういうのもいいな」
 見ているだけで、ぞくぞくとさせられる。拘束され、身動きとれないでいるルキエルは、随分と素直だ。それが、香による洗脳の成果だとわかっているが、こう、求められると嬉しい。
 ルキエルの腰を持ち上げ、足を私の肩にかけて、その状態で、ぐっと私の一物を挿入してやる。
 指では届かない奥の奥へと一物の先が到達して、ルキエルは声もなく、痙攣して、絶頂する。やっと求めていたものを受けられて、呼吸すら止まったように、動きが痙攣だけとなる。
 しばらく、私は余韻のような痙攣を受けて、動きを止めていた。動いてほしくて、とルキエルは私の一物を締めてくる。これが気持ち良いし、嬉しい。求められているとわかるからだ。
「は、はやく、うご、いてぇ」
「わかったわかった」
 口で請求されたので、私はとうとう、挿入を激しくした。途端、ルキエルは腕の拘束具をどうにかしたい、とばかりに暴れながらのけ反る。
「ああっ!! もっと、深くぅ!!!」
「だったら、今すぐ、アルロの所に戻れ。そんなもの、私は持ち合わせていない」
 要求に答えられないので、私はさっさと一物を抜いてやる。
「ご、ごめん、あんたのが、いい!!」
 慌てて謝るルキエル。両手が使えないから、無様に口でいうしかないのだ。そうやって、上手に私のご機嫌をとるのだから、本当に、タチが悪い。
「謝らなくていい。ちょっと、拗ねただけだ」
 ぐっとまた挿入してやれば、大喜びだ。もう、奥なんて要求しない。私がルキエルが最も喜ぶところを集中的に突いてやれば、喘ぎ声しか出てこない。
「やぁ!! また、来るぅ!!」
 酷いものだ。ルキエルが吐き出した白濁だけで、あちこち汚れている。それでも、ルキエルの絶頂は止まらない。外が吐き出されると、次は中が絶頂して、と繰り返しだ。そうしていると、とうとう、何かおかしなものをルキエルは感じてきた。
「やあ、き、きちゃうぅ」
 これまで、こんな反応はなかった。ただ、最奥のさらに奥にぐいと入れてやると、とんでもない絶頂を迎えた。
 もう、出せるものがなくなったのだ。そうなると、次に起こるのは、女のような絶頂だ。それを受けて、ルキエルは激しく体を動かした。
「これ、まずぃ」
「そんなことない。これからが、本番だ」
「?」
「私はまだ、いってない」
「やぁ!!!」
 人間、絶頂しすぎると、それは恐怖だろう。逃げようと暴れるが、両手が使えないのだ。無駄なあがきだ。さらに、足だって、過剰な絶頂で、すっかり力が入らなくなってしまっている。
 ルキエルを私の膝に座らせる。そして、後ろから抱きしめてやる。両手の拘束がそのままで、随分と痛い感じの傷が出来ていた。
「座位なら、もう少し深く挿入できるだろう。ほら、膝立ちして」
 深く挿入してもらえる、ただそれだけのために、ルキエルは従順に膝立ちする。私はルキエルの蕾に私の一物の先をあててやる。
「ゆっくり、腰を下ろしなさい」
「ゆっくりはぁ」
「大丈夫、私が支えてやろう」
 私はしっかりとルキエルの腰をつかんだ。そうして、導くように、ゆっくりとルキエルの腰をおろさせ、ずぶずぶと私の一物を受け入れさせた。
 挿入されていく感触すら、ルキエルは拾おうとしている。はっはっ、と息を吐き出しながら、少しずつ、腰を下ろして、とうとう、私の一物の根本まで受け入れた。
 ごりっと何かが当たり、通り抜け、としていく。その衝撃に、ルキエルは動きを止めて、恍惚に笑う。
「当たってる」
「良かったな」
 後ろから口づけを要求すると、ルキエルは首を傾け、答えてくれた。そして、私はルキエルの腰を持ち上げ、激しく上下に挿入を助けてやった。
 助けた、というよりも、もう、ルキエルは持ち上げられているだけだ。そんな、動く元気なんてない。ただ、私が与える刺激全てに喜び、のけ反り、また、絶頂して、色のない液体を噴き出した。
「あんた、まだ、いかない、の、かぁ?」
「こうしているほうが、面白い」
「そう、なん、だ」
 ベッドはルキエルが吐き出した液体ですっかり濡れて、使い物にはならなくなっていた。それでも、私は止められない。ルキエルは私に全てを任せ、喜んで、刺激を追っていたが、どんどんと、何かに追い込まれているように、脂汗を全身から流した。
「く、くる」
 とんでもない絶頂が来るのだろう。そう言われてから、私の一物を逃がすものか、とばかりに締めてきた。そこを無理矢理、挿入を激しくしてやる。さらに奥へと突いて、とグリグリと押し込んでやれば、ルキエルは両手の拘束具をどうにかしようと、無駄に抵抗して、苦しんだ。
「ほら、外れた」
 外してやれば、ルキエルは私と向き合うように体制を変え、自らの腰を動かした。
「ああ、いい!! ここがぁ」
「いいな、これは」
 身もだえし、動いて、喜んでいるルキエルは、見ているだけで十分だ。
 ルキエルはそうではない。私に口づけして、頬を舐めて、と私を刺激してくる。
「そんなことしなくていい」
「だってぇ、あんた、まだ、いってないぃ」
「そういうことか」
 そういうことも制御出来てしまうので、あえて出さないだけだ。だいたい、私の体液は、妖精憑きにとって刺激が強すぎる。
 今日は、あえてそうしないようにしてやっただけだが、ルキエルはどうしても受け止めたい、と一生懸命、腰を動かした。
 顔色一つ変わらない私に、ルキエルのほうが根負けしてきた。とうとう、腰を動かすのをやめてしまう。そのまま、私に抱きついて、激しく息を吐き出す。
「も、もう、むりぃ」
「仕方のない子だ」
 私は一度、ルキエルの中から一物を抜いて、ルキエルをうつ伏せにした。そして、また、挿入してやる。
「やぁ、そこ、だめぇ」
 もう、絶頂しすぎて、ルキエル、おかしくなっていた。ちょっと突いただけで、すぐに絶頂だ。それがどんどんと止まらないので、きゅうきゅうと私の一物を締めてきた。これには、私も我慢できなくなった。
 もっとそれを得たくて、激しく挿入を繰り返してやると、ルキエルはシーツをつかんで、絶頂に苦しんだ。
「やあ、もう、これぇ」
「もう、少し、だ」
 ごりっという音でもするようなほど、私は最奥を突いた。それに、ルキエルは息を止めて、声もなく絶頂する。その強さに、私は持ってかれた。
 とうとう、私はルキエルの中に白濁を吐き出した。その衝撃で、ルキエルは声を上げて苦しみ、意識を飛ばした。




 久しぶりにやり過ぎた。私室のベッドは使い物にならなくなったので、別室に移動することとなった。使用人たちが、もの言いたげに見てきた。
 そうだよな、寿命がどうのこうの、とついさっき泣き言言っておいて、現実は、こんなに元気そうに見えるよな。けど、それ、全部、ルキエルの体液だからな。私には、ルキエルの中に入ったままだよ!!
 叫びたいが、あえて黙っていた。余計なことを言って、また、妙な噂話を振り撒かれたら、たまったものじゃない。
 ルキエルは、かなり辛かったのだろう、目を覚まさない。普段は、ここまでのことはしない。確かに、やり過ぎたな。
 いつもとは寝心地の違うベッドに寝かせてやっても、ルキエルは全く起きない。だけど、手で何かを探してやる。あれだ、抱き枕的な人だな。仕方なく、私も一緒に横になれば、ルキエルはしっかりと私の胸に顔を埋め、そのまま動かなくなった。本当に、この男は、酷いよな!!
 残念ながら、私は人が側にいると寝られないのだ。ルキエルは喜んで寝ているだろうが、私はこれっぽっちも眠れていない。ルキエルが泊まる時は、私の徹夜の時だ。
 仕方がない。離れると、ルキエルは人肌が欲しくて、ベッドの上で探すのだ。そして、ベッドから落ちたこともある。仕方なく、私はルキエルの安眠のための壁役だ。本当に、私の扱いは酷いな。
 ここまで尽くしてるというのに、ルキエルの気持ちはよくわからない。今日は、よくわからない嫉妬を見せた。ありもしない、別の妖精憑きに嫉妬するルキエル。しかし、どうしてそうなったのか、それがわからない。
 眠っているルキエルは愛らしい。起きている時にそれをいうと、物凄く不機嫌になるな。だから、口に出さないように気を付けている。
 ルキエルは、本当に女寄りに綺麗なのだ。もう、サツキの身代わりを越えている。私は、その姿と中身にすっかり惚れこんだ。そこに、性別は関係ない。
 そうして、一夜を寝ないで過ごしていれば、ルキエルはいつもの時間だろう、早朝に目を覚ました。私の胸だと気づいて、押して離れた。本当に酷いな!!
「よく寝てたな」
「あんたは、寝てない?」
「ちょっと興奮してな。昨夜は、良かった」
「言うな!? だいたい、あの部屋に香を焚きしめて放置しておいた、あんたが悪いんだよ!!」
 顔を真っ赤にして怒るルキエルに、私はつい口づけする。
「もう、今日はするな!! 顔色いいし、いらないだろう」
「どうして、そんなに怒ってるんだ。こんなことする相手は、人でも妖精憑きでも、ルキエルだけだ」
「嘘つきやがって」
「嘘じゃない。そうだ、珍しいものを貰ってきた。ルキエルも一度は飲んでみなさい。滅多に飲めるものじゃない」
 私は朝、飲ませようと準備した妖精の万能薬をルキエルの手に持たせた。
「これ、何?」
「妖精の万能薬だ。オルトも、これで健康体になった」
「うまい?」
「飲んでみればわかる」
 さて、ルキエルは飲んで、どうなるのやら。私は悪戯心で見守った。
 ルキエルはすぐに私に対しての警戒心を解いて、何故か、私の膝に座って、背中を私の胸に預けてきた。本当に、私に対する扱いが酷いな!!
 そして、ルキエルは軽く一口飲んで、すぐに私に突き返した。
「にっが!」
「妖精憑きが飲むと、そうなるわけか」
「苦いと言ってくれればいいのに!!」
 怒って、ルキエルは私の膝を叩いた。痛くないけど。
 試しに飲んでみれば、私は苦くない。ただ、この味、よく知っているのだ。それを思い出そうとして、ついでにルキエルに口づけした。
「もう、しないって言っただろう!!」
「っ!?」
 私はそれが何の味かわかった。瞬間、顔が険しくなった。
「ルキエル、お前」
「何?」
 私の表情が怖くなったせいで、ルキエルが怯えた。それを見て、私はそれ以上、何も言えなかった。





 思い出話をしていると、急に、オクトが床に膝をついた。突然のことに、俺は驚いた。
「お、おい、オクト、急にそんな」
「ルキエル、ありがとう」
「何が?」
「義父上から聞いた」
「何が?」
 オクトが急に礼をいうが、俺はわけがわからなかった。
「ルキエルは、義父上の体から、溜まった毒を定期的に抜いてくれてたんだな」
「ああ、あれか」
 オクトの父親と出会った時には、あいつ、体内の臓腑まで毒で酷い状態となっていた。そう長くはないが、苦しいだろうから、と毒だけ俺は取り除いたのだ。そうすると、あの妖精を狂わせる香の残り香も綺麗にとれた。
 ただの偶然だ。俺は、それが出来たから、しただけだ。
「毒を取り除いても、あいつ、そう長くなかったぞ。俺が関わった時には、内臓全て、悪くなってたから」
「最後は、血反吐まで吐いていた。それでも、苦痛は和らいでいただろう。妖精の万能薬でも、もう、義父上の苦痛は取り除けない状態だった」
「だから、やめろって言ったのに」
 妖精憑きを殺す肉体を作るために、と体内に香を取り入れていたのだ。もう十分、その体は出来上がっていたというのに、あいつは、摂取し続けていた。
 俺の言葉に、オクトは苦笑する。
「そういうのなんだ。代々、当主はずっと、そうしていた。僕もそうだ」
「あいつ、バカだよな。俺の復讐にだって、付き合う必要なんてなかったんだ。なのに、命までかけて、バカだ」
「義父上にとって、それが一番、幸福なんだ。ルキエルのために死ねて、喜んでた」
「俺は、何も返せてない」
 ただ、閨事していただけだ。その閨事だって、最後は俺が喜ぶように、あいつは動いていた。
 別に、あの男は、閨事なんてそれほど好きではない。ただの作業としていたのは、受けてみてわかる。
「もう、オクトは、俺に付き合う必要なんてない。遺言とか、無視していいんだぞ」
「そういうなよ。友達だろう」
「また、そんな甘っちょろいこと言って。お前は、俺たち貧民をこき使う立場なんだぞ」
「そこはしっかりやってるから、心配ない」
「もう、座れよ」
 いつまでも床に膝ついたままだよ。本当に、どいつもこいつも、バカだな。引っ張って、椅子に座らせた。
「義父上は、本当に、ルキエルだけだったんだ。浮気してない」
「俺は親父ともやってたけどな。意識ない時は、どっかの誰かに悪戯されてたしな」
「意識のないお前に手を出した奴らは、全て、義父上が殺した」
「………本当に、あいつ、バカだな」
 いつまで待っていても、俺のトコに王都の貧民が来ないわけだ。
 俺は、あいつの名前すら呼んだことがない。いつも、あんた、だ。知っていて、あえて、名前を呼ばなかった。嫌がらせだ。
 それをわかっていて、あいつは、俺を許してくれていた。
「だけど、俺が一番のバカだ」
「そんなことない」
「復讐、やめれば良かった」
「仕方がない。止められなかったんだろう」
「あいつは、俺にとって、特別だった」
「………義父上だって、そんなこと、気づいていた」
 そうだよな。俺のこと、俺以上に、あいつはわかっている。俺が素直になれなかっただけだ。
「オクトは、もっと体を大事にしろよ」
「ルキエルも、もっと体を大事にしろ。こんな仕事、義父上だって、望んでいない」
「もう、いないからな」
 失ってから気づくのだ。大事だったと。
 それは、親父ではない。親父の身代わりの男に出会ったが、簡単に捨てられた。それを求めていたわけではなかったからだ。
 あの貴族の身代わりの男にも出会ったが、簡単に捨てられた。貴族だったが、違った。情熱を向けられたが、それも違った。
「また、来るからな。変なことに首を突っ込むなよ」
「わかったわかった」
 空気を読んで、オクトはそれ以上、何も聞いてこなかった。
「わかってるのか? 貴族相手に、内戦するなんてなぁ」
「俺のせいじゃないのに」
 巻き込まれただけだってのになぁ。俺は思いっきり顔を背けた。俺のせいじゃない。
「じゃあな」
 最後に痛いこと言って、オクトは帰って行った。
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