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第3章 ウィルトシャー

依頼

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 蒼井と鳥居の2人は九条に呼び出されてディメンションの控室にいた。今日は許嫁でもある遙加たちが来るのだという。なぜ2人を控え室に呼んだのか九条に聞くとこんな答えが返ってきた。

「事と次第によっては、君たちに仕事を依頼するかもしれないからここで彼らの話をよく聞いて欲しいんだ」

九条にしては珍しく少し落ち着きがなかった。

「仕事って過去へ行くんですか?」

蒼井の問いかけに九条は煮え切らない様子で答えた。

「そうなんだけど……もしかしたら2人には過去へも未来へも行ってもらうかもしれないんだ」

「へー、面白そうですねー」

鳥居はいたって脳天気に振る舞った。

すると来客を知らせるベルが鳴った。
チリンチリンチリンチリンチリーン。

「まあ、話を聞いても驚いて大きな声などは出さないようにね。じゃあ行ってくるよ」

ベルの回数を確認した九条は急いで店の中へと入って行った。

それから1分後。
チリンチリンチリンチリーン。またそこから1分後。
チリンチリンチリンチリーン。同様に。
チリンチリンチリンチリーン。さらに1分後。
チリンチリンチリンチリーン。どうやらこれで最後のようだ。

来客は全部で5人。すると急に鳥居が不思議そうな顔をして尋ねてきた。

「ねえ蒼井くん、あの来客のベルの音って人によって音の鳴る回数が違うよねー。どうしてなんだろー」

「僕もそう思ってたんだけど、よく分からないな。でも君がここに来る前に来たお客さんでものすごーく感じの悪い女の人がいたんだけど、その人はチリンチリーンって2回だった気がする」

「今日はみんな沢山音が鳴ってるよね。多分一番初めに入ってきたのは遙加ちゃんだと思うんだー」

「そうだね、九条さんの態度があからさまに違うからね」

そんなことを話していると店の方では物騒な話になっていて2人は静かに話を聞くことにした。どうやら許嫁の遙加に生き霊を飛ばしてる奴がいると言うのだ。

「生き霊とかって霊媒体質関係ないんじゃないかなー? それとも余計に引き寄せちゃうのかなー?」

「どうだろう、その辺は全然分からないけどそう言うことがあっても不思議じゃないよね」

2人はそれぞれ遙加と話したことがある。だからなのか2人の意見はそこだけは一致していた。『彼女は魂がピュアなんだな』何故かそう思ったのだ。

そうこうするうちにみんなでディナーを取るためにレストランへと向かってしまった。

「九条さん、遙加ちゃんとのクリスマスディナー楽しみにしてたのにどうしてみんなも招待したんだろうねー」

「それなんだけど、店に入るのも1人ずつだったし、何か確認してる感じだったよね。それに始めに全員店に入った時に『君たちはみんな合格だよ』って言ってたでしょ。一体何を調べているんだろう……」

「分からないことは本人に聞いてみようよ、今回は仕事かもって言ってたんだしー」

「それもそうだね。九条さんのことで考えてわかることなんて食べ物のことぐらいだもんね」

「そう言うことー」

そんなことを話していると控室に九条が入ってきた。

「九条さん、そんな怖い顔してどうしたんですか」

「そうかな、いつもこんな顔をしてると思うんだけど」

「ちょーっと怖い顔してると思いまーす」

それを聞いて苦笑いをした九条だったが話を続けた。

「やっぱり君たちに次元監視者の仕事をお願いしたいんだ。さっき話に出ていた速水玲那という人物がどう言う行動をとっていたのか、それとこのまま何もしない場合に起こるであろう未来の出来事を」

「行くのは6次元でいいんですか?」

「そうだね。今回は2人だけで行ってもらうから。もう天ヶ瀬がいなくても大丈夫でしょ?」

「えーっと、天ヶ瀬さんがいてくれた方が安心なのですが、2人で行った方がいいんですか?」

「そうだね。天ヶ瀬からはもう2人で大丈夫だろうって言われたよ。過去次元に入り込むわけではないし、6次元から出ることもないから大丈夫でしょう」

「分かりました」
「分かりました~、いつ行くんですかー」

「早い方がいいから早速明日、お願いできるかな」

「じゃあ、明日行けるように作り置きできるスィーツを作ってきまーす」

そう言うと鳥居はすぐに控室を出ようとした。しかしそこで九条が呼び止めた。

「鳥居君ちょっと待って。一応今回の監視対象である速水玲那の情報を伝えるから」

「そうでしたー、すみませーん」

そんな会話をしながら、2人は九条から珍しく今回は仕事の詳細を聞かされたのだった。




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