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第3章 ウィルトシャー

レストラン・ブルーローズ

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 レストラン・ブルーローズ。
時代の流れに逆らうようにひっそりと佇む古城を思わせる造りのレストラン。
今日もアンティークを求める客が足繁く通う、一度訪れると忘れられない店だ。

 鳥居恭介がここの厨房で仕事を始めて既に1ヶ月。料理長のロバートの作る料理と鳥居の作るデザートの相性は想像以上の出来だったようで店長の天ヶ瀬やオーナーの九条も客の反応にホクホク顔だった。フロアーには店長の他に知識人であるソムリエの本城と機転のきくバーテンダーの片桐がいるので鳥居がフロアに出なくて済んでいた。

ブルーローズでの仕事で余裕も出てきた鳥居はなぜかソワソワしている店の雰囲気を感じ取った。その発信源はどうやら鳥居を引き取ってくれた九条薫が持ち込んでいるものらしかった。
いつもは飄々としているあの九条が昨日からどうにも落ち着きがないというのだ。それにあの他人の個人的なことには一切踏み込まないピアニストの蒼井までが心配していたのだ。
鳥居は興味本位で蒼井に声をかけてみた

「蒼井くーん、九条さんに何かあったのー」

「あぁ、鳥居君か。急に吃驚させないでよ」

「ごめんなさい。それで九条さんどうしてあんなソワソワしてるのー」

「それが、明日歳の離れた従兄妹が来るんだって。女子高生らしいんだけど、何かお願いがあるとか何とかって言われたらしいんだ」

「そうなんだー」

「いつもは九条さんにしてやられてばかりだから、たまには弱みの一つでも掴みたいと思わない?」

鳥居としては何もしてやられていないし、お世話になっていて感謝するようなことしかない。
きっと九条にとって蒼井はイジりやすい対象なのだろう。

「弱みのことはどうでもいいけど、その女子高生をみてみたい気はするよー。だってあんなに九条さんが落ち着かないのって初めてみるからー」

「そう思うでしょ。だからさ、明日ちょっと協力して欲しいんだけど、お願いできないかな」

「何を?」

「女の子が喜ぶようなスィーツを作って欲しいんだ。できれば運ぶのも手伝ってくれると助かるんだけど、だめかな」

「いいよ! 面白そうだからー」

「ありがとう。多分レストランが始まる前には従兄妹の子も来ると思うから。それじゃよろしくね」

蒼井から話を聞いた鳥居は、早速新作と称して女子校が好みそうなスィーツ作りを始めた。

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