34 / 42
第2章 迷子の仔猫
取引_2
しおりを挟む
夜が明け次の朝日が登る丁度その時、シェリーから猫の取引相手である身なりの良い男へ連絡が入った。シェリーはその人物の正体が誰なのか全く気付いた様子はない。欲に煽られ周りが見えなくなっている彼女はかなり切羽詰まっているようだ。
裏社会で働くものとして見切りをつけられても当然である。
もうすぐ夜が明けるのに彼女だけはまだ夢から醒めないようだ。
「今は無理でも必ずお金を用意するから猫を他の人に渡すのは待ってほしいの、お金はなんとかするからあともう少し時間を頂戴。お願いよ」
「猫を渡すことはできないですが、1つちょっと面白い話があります。お聞きになりますか」
猫のことは無理だが他に美味しい話があると言われたシェリー。男のその話が終わる頃にはこれまでの態度が嘘のように驚くほどあっさり電話を切った。勿論彼女は新しい話に乗り気だった。
その日の夜、弟の圭吾に呼ばれた兄の亮吾が社長室を訪ねるとすぐに人払いがされ社長付きの社員達は皆帰されてしまった。一体何があったのだろうかと亮吾は眉間に皺を寄せてさらに凄みを増した顔で圭吾が話し出すのを待った。
「朝方、シェリーから猫の件で連絡があったんだ。猫は無理だけどちょっと面白い話があるって言った。そしたらすぐに食いついてきたよ」
「何を話したんだ?」
「九条さんのこと。レストランの方じゃなくてディメンションの話をね」
「行くと思うか?」
「行くんじゃないかな、多分」
「そうか………… じゃぁ九条にも言っとかないとな」
「そうだね、彼のこともあるし」
「圭吾、話はそれだけか」
「そうだけど…… もう社員も皆帰しちゃったし、たまには一緒に食事しようよ二人で」
「それならいいとこ知ってるから一緒に行こうぜ社長様の奢りで」
「亮吾だって社長みたいなものだろ! まったく」
「まぁ、俺はしがない元締めで決して社長様と一緒じゃないからな。それより早く美味いもの食いに行くぞ」
「はいはい」
兄の亮吾が店に連絡を入れて事情を説明するとそれ以降の時間は店の貸切が了承された。もちろん別途特別料金が発生する。
今回の支払いはなぜか仕事に巻き込まれた弟の圭吾の順番のようだ。流石に会社の経費では落とせないので個人的に支払うことにする。あの店はカードか電子マネーでの支払いで大丈夫なはずだ。
その後二人は時間をずらし別々にブルーローズへと向かった。周りを彷徨うハイエナどもに情報提供しないためにも特殊メイクと小道具を使って素顔は晒さずに。
裏社会で働くものとして見切りをつけられても当然である。
もうすぐ夜が明けるのに彼女だけはまだ夢から醒めないようだ。
「今は無理でも必ずお金を用意するから猫を他の人に渡すのは待ってほしいの、お金はなんとかするからあともう少し時間を頂戴。お願いよ」
「猫を渡すことはできないですが、1つちょっと面白い話があります。お聞きになりますか」
猫のことは無理だが他に美味しい話があると言われたシェリー。男のその話が終わる頃にはこれまでの態度が嘘のように驚くほどあっさり電話を切った。勿論彼女は新しい話に乗り気だった。
その日の夜、弟の圭吾に呼ばれた兄の亮吾が社長室を訪ねるとすぐに人払いがされ社長付きの社員達は皆帰されてしまった。一体何があったのだろうかと亮吾は眉間に皺を寄せてさらに凄みを増した顔で圭吾が話し出すのを待った。
「朝方、シェリーから猫の件で連絡があったんだ。猫は無理だけどちょっと面白い話があるって言った。そしたらすぐに食いついてきたよ」
「何を話したんだ?」
「九条さんのこと。レストランの方じゃなくてディメンションの話をね」
「行くと思うか?」
「行くんじゃないかな、多分」
「そうか………… じゃぁ九条にも言っとかないとな」
「そうだね、彼のこともあるし」
「圭吾、話はそれだけか」
「そうだけど…… もう社員も皆帰しちゃったし、たまには一緒に食事しようよ二人で」
「それならいいとこ知ってるから一緒に行こうぜ社長様の奢りで」
「亮吾だって社長みたいなものだろ! まったく」
「まぁ、俺はしがない元締めで決して社長様と一緒じゃないからな。それより早く美味いもの食いに行くぞ」
「はいはい」
兄の亮吾が店に連絡を入れて事情を説明するとそれ以降の時間は店の貸切が了承された。もちろん別途特別料金が発生する。
今回の支払いはなぜか仕事に巻き込まれた弟の圭吾の順番のようだ。流石に会社の経費では落とせないので個人的に支払うことにする。あの店はカードか電子マネーでの支払いで大丈夫なはずだ。
その後二人は時間をずらし別々にブルーローズへと向かった。周りを彷徨うハイエナどもに情報提供しないためにも特殊メイクと小道具を使って素顔は晒さずに。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
3024年宇宙のスズキ
神谷モロ
SF
俺の名はイチロー・スズキ。
もちろんベースボールとは無関係な一般人だ。
21世紀に生きていた普通の日本人。
ひょんな事故から冷凍睡眠されていたが1000年後の未来に蘇った現代の浦島太郎である。
今は福祉事業団体フリーボートの社員で、福祉船アマテラスの船長だ。
※この作品はカクヨムでも掲載しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる