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第2章 迷子の仔猫

取引_2

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 夜が明け次の朝日が登る丁度その時、シェリーから猫の取引相手である身なりの良い男へ連絡が入った。シェリーはその人物の正体が誰なのか全く気付いた様子はない。欲に煽られ周りが見えなくなっている彼女はかなり切羽詰まっているようだ。

裏社会で働くものとして見切りをつけられても当然である。
もうすぐ夜が明けるのに彼女だけはまだ夢から醒めないようだ。

「今は無理でも必ずお金を用意するから猫を他の人に渡すのは待ってほしいの、お金はなんとかするからあともう少し時間を頂戴。お願いよ」

「猫を渡すことはできないですが、1つちょっと面白い話があります。お聞きになりますか」

猫のことは無理だが他に美味しい話があると言われたシェリー。男のその話が終わる頃にはこれまでの態度が嘘のように驚くほどあっさり電話を切った。勿論彼女は新しい話に乗り気だった。



 その日の夜、弟の圭吾に呼ばれた兄の亮吾が社長室を訪ねるとすぐに人払いがされ社長付きの社員達は皆帰されてしまった。一体何があったのだろうかと亮吾は眉間に皺を寄せてさらに凄みを増した顔で圭吾が話し出すのを待った。

「朝方、シェリーから猫の件で連絡があったんだ。猫は無理だけどちょっと面白い話があるって言った。そしたらすぐに食いついてきたよ」

「何を話したんだ?」

「九条さんのこと。レストランの方じゃなくてディメンションの話をね」

「行くと思うか?」

「行くんじゃないかな、多分」

「そうか………… じゃぁ九条にも言っとかないとな」

「そうだね、彼のこともあるし」

「圭吾、話はそれだけか」

「そうだけど……  もう社員も皆帰しちゃったし、たまには一緒に食事しようよ二人で」

「それならいいとこ知ってるから一緒に行こうぜ社長様の奢りで」

「亮吾だって社長みたいなものだろ! まったく」

「まぁ、俺はしがない元締めで決して社長様と一緒じゃないからな。それより早く美味いもの食いに行くぞ」

「はいはい」

 兄の亮吾が店に連絡を入れて事情を説明するとそれ以降の時間は店の貸切が了承された。もちろん別途特別料金が発生する。

今回の支払いはなぜか仕事に巻き込まれた弟の圭吾の順番のようだ。流石に会社の経費では落とせないので個人的に支払うことにする。あの店はカードか電子マネーでの支払いで大丈夫なはずだ。

 その後二人は時間をずらし別々にブルーローズへと向かった。周りを彷徨うハイエナどもに情報提供しないためにも特殊メイクと小道具を使って素顔は晒さずに。



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