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第2章 迷子の仔猫
取引_1
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時間は小一時間ほど遡り、猫の引き渡し現場。
元締めと魔法男そして猫の2人と1匹は引き渡し場所になっているホテルの一室へと向かった。シェリーこと向井有紗の盗聴器は今回は取引相手である身なりのいい男のスーツの襟についていた。
前回元締めにつけたはずの盗聴器は直ぐに回収に行ったのに剥がれ落ちてどこかに行ってしまった様だった。と、シェリーはそう思っていたが実際は元締めが現場で処理している。
偶然盗聴器がなくなってしまったと思っているシェリーは今回は元締めを盗聴するのではなく、予備として予め渡してあった盗聴器を取引相手の男につけるよう指示した。シェリーは今頃この近くのどこかで事の成り行きを聞いているはずだ。
2人と1匹が部屋に入ると身なりの良い男は彼らを出迎えた。部屋の中なのに彼はフェルト帽をかぶったままだった。
「お待ちしておりました。その猫が例の猫ですか。とても美しい、それに品がある」
「お待たせして申し訳ない。こちらがお約束の猫です」
元締めが告げるとキャリーケースに入った猫をケースごと鳥居が掲げて見せた。
「では早速取引に移りましょう」
テーブルの上に乗った小型のジュラルミンケースには札束が収まっていた。取引でも電子マネーが主流となった今となっては珍しい光景だった。しかし裏取引では取引内容が電子データとして残るのを避けるため今でも現金での取引が行われている。地下シェルターに自分専用のセキュリティロックをかけた金庫を作る者までいるのだ。
「全部で2,000万円あります。ご確認下さい」
元締めは中身を確認する。
「確かに。しかしこんなに素性のバレやすい猫をあなたが飼うんですか」
「いいえ、然る方にお譲りする予定だったんですが、もうお一方の方が然る方よりもお互い良い取引が出来そうなのでどうしようか迷っているんですよ」
「そうですか。私がこんなことを言えた義理ではありませんが猫にとって良い環境の方に決まると良いですね」
「えぇ、全くです。では私はこれで失礼します」
その言葉を聞いた元締めは小型のジュラルミンケースを閉めると鳥居に合図を送った。
すると合図を確認した鳥居は魔法陣を描き、猫と一緒にどこかへ消えてしまったのだった。
残された2人は目の前で起きた非現実的な事態に少しも驚くこともなく平然としていた。しかし、元締めが取引相手の男に近付き何かを見つけると不自然に大きな声でこう言った。
「帽子に何かついている様ですが、触ってもよろしいですか」
「ゴミでもついてしまったかな。申し訳ない、取っていただけると助かります」
「小さな虫かな? いや、やはり何かゴミのようなものですね。捨てておきましょう」
同じホテルの別室で取引している様子を見ていた門脇は小さな悲鳴をあげた。グヮシャッという音とともにいきなり映像が消えそれ以降音も聞こえなくなった。それは直ぐに小型ドローンが破壊されたのだと彼は理解した。
「あーあ、今回はいけると思ったんだけど……回収も難しいな。そういえば猫はどこに行ったんだろう」
せっかく改良したドローンなのに手痛い出費になってしまった上、猫の行方までわからなくなった門脇は途方に暮れた。しかしこれ以上この場に留まっていても何の解決にもならない。彼は仕方なく探偵事務所に帰る事にしたのだった。
小型ドローンを蚊でも潰すように破壊した元締めの様子を見ても何事もなかったかのように一旦取引相手の男が部屋を出た。
すると、盗聴器に向かって小声で話し出した。
「取引は無事終了しました。お聞きになった通りもうお一方、どうしても取引したい方が出てきましてね。あなたはどうされますか」
「どう言うことよ、今更ずるいじゃない」
「いえ、以前にもお話しした通りこちらも商売ですので条件の良い方にお譲りするのは当たり前です」
「そいつはいくらだって言ってるのよ」
「私が先ほど支払った額の5倍出してくださるそうです。猫にも何不自由なく安全に過ごせる環境をご用意されています」
「そんな…… じゃあ、私も5倍とさらに一割上乗せするわ」
「そうですか、あなたがそう仰った場合を考え先方は10倍まで出すと言っておられます。それ以上出せるのでしたら取引を考えても良いですが、どうなさいますか」
「明日の朝までに連絡するわ、だからまだそいつに渡さないで」
「いいでしょう。では次の夜明けまでに連絡がなければ先方にお渡しします。日の出の後は連絡をいただいても電話に出られるかどうかお約束致しかねます。お忘れなきように 」
すると即座に盗聴器の電源を切って、また元締めの居る部屋の中へ戻っていった。
部屋の中では監視や盗聴器の存在を全て無効にしたのを確認すると元締めがボソッと呟いていた。
「まだまだ、爪が甘いですよ探偵さん」
「兄さん何か言った?」
「いやなんでもない。それよりお疲れ様、シェリーの方は大丈夫だったか」
「多分大丈夫、私の話を全く疑っていなかったから。金策に奔走するつもりらしいよ、無理だと思うけど」
「そこまで手を打っているのか」
兄と呼ばれた元締めは渋い顔をした。
「当たり前だろ、どこからも借りられない様にしてある。それに証拠が残る銀行口座や電子マネーの取引ができないことは彼女も知っている。俺たちを敵に回したらどういう事になるか、これから痛いほど思い知るのではないかな」
「おおー社長様は怖いねー」
「褒めてくれてありがとう」
「……………… どういたしまして…… 全く褒めてないけど」
「それと、さっきの虫は例の探偵君のものかな」
「多分そうだと思うぞ。うちの会社もあんまり性能いいもの作るのもどうかと思いますよ、社長」
「そんなこと言われても、社員が優秀だからいつも試作品が斜め上いってるもの仕上がってくるんだよね。現時点で超高性能なものは社外には出していないし、これからも出すつもりもないから安心して」
「いや、そんなもの作る時点で安心できないだろうが」
シークレットエージェントは表向きホテルの経営や身辺警護といった所謂ボディーガードなどの仕事が主体の会社である。
ボディーガードをする上でより安全性や耐久性を求めた結果、自社で車を始めとして船舶や飛行機果ては宇宙船まで作る様になってしまった。この会社は隠れた巨大グループ企業であり技術者集団なのだ。彼の国の潜水艦もこの前納めたばかりだ。
実は取引相手のこの男、シークレットエージェントの社会的に認められている会社の方の社長兼CEOである。そして裏社会でのシークレットエージェントの元締めの双子の弟なのだ。高額納税者の一人でもある。
一度だけシェリーと会った時は帽子を目深に被りその下にはサングラスまで装着していた。口元は男なのにスカーフで隠してしまうため輪郭どころか顔も全くわからない。スーツの上にコートまで羽織っていたので体型もはっきりと分かりづらいのだ。そんな姿でもおそらく分かるのは双子の当人たちだけだろう。
元々この偽取引は架空のもので始めたきっかけは組織の中にいる罪人を炙り出すためのものだった。そろそろ次の偽取引を始めようかと考えていた時に、藤原夫妻から猫の件で相談があったのだ。
「とても珍しい猫を飼っているが、怪しい連中に狙われている」
猫を守り尚且つそいつらを撃退したいから力を貸してくれないかと言われたのだ。
そこで今回は双子の弟にも一芝居打ってもらったと言うわけだ。
双子とは言っても兄の佐伯亮吾は強面風になるように本当に顔に傷があるかのように特殊メイクをしている。他人の前では素顔を晒す事はない。
弟の佐伯圭吾はいつも眼鏡をかけていて髪型は何故かオールバックにきっちりまとめている。どうやら本人は最高責任者でいるときはきちっとしてONとOFFを分けているらしい。
シークレットエージェントの社員はおろか裏社会の人間でさえこの二人が双子であることを知る者はいない。
知っているのは普通はと呼べない、あの人間だけだ。
以前2人が双子ではないかと疑って探りを入れた輩もいたが、何故か皆その後の消息は不明である。だからと言ってそいつらの命を奪った訳ではない。九条の力を借りてどこかのパラレルワールドへとトランジットさせただけなのだから。自業自得、因果応報と言ったところだろう。
弟の佐伯圭吾は兄に素朴な疑問をぶつけた。
「この後もシェリーに裏の仕事やらせるの」
兄の佐伯亮吾はもう腹を決めていたのか何の躊躇いもなくそれに答えた。
「いや、もう依頼も出さないし足を洗うように促すよ。それでも仕事をしたいなら他所へ行ってもらうしかないな。他に当たったところでどうだかな。取引に夢中になって自分の危機管理もできない様な奴にはウチの仕事は頼めないからな」
「それもそうだね」
「できればもうこれからは真っ当に生きてほしいよ、でないと九条の世話になるかもしれないからな」
「でもそれはそれで、本人的には幸せかもしれないよ」
「まあこれから居場所も無くなるだろうし…… でもそれはどうだかな…… 」
兄の亮吾が遥か彼方にある地平線でも見る様な目をした。それを見た弟の圭吾が
『何がいいか悪いかなんて、悪いことやってる奴は分かってないんだな』と思った時、亮吾がボソッと呟いた。
「欲にかられた人間にとって物事の良し悪しなんてどうでもいいものなんだろう。誰かに向けたはずの己から溢れ出た悪しき感情は結局自分に返ってくるんだけど…… 気付けないって怖いな………… 」
「兄さん大丈夫? それってシェリーのことでしょ」
「あぁ…… 仕事だと割り切ってきたつもりだったけど、俺一人だったら今頃は人間不信になっていた所だったよ。お前がいてくれて本当によかった、ありがとな」
「亮吾本当に大丈夫? 妙に素直で気持ち悪いんだけど……まさか何か企んでる?」
「淋しいこと言うなよ二人だけの兄弟なんだからたまには俺にも弱音を吐かせてくれよ…… 。この顔の特殊メイクでいつもは人を怖がらせてる俺だって、人の悪意に疲れることくらいあるんだからさ」
「はいはい、じゃあ今度会った時は俺の愚痴を聞いてね」
「……了解」
元締めと魔法男そして猫の2人と1匹は引き渡し場所になっているホテルの一室へと向かった。シェリーこと向井有紗の盗聴器は今回は取引相手である身なりのいい男のスーツの襟についていた。
前回元締めにつけたはずの盗聴器は直ぐに回収に行ったのに剥がれ落ちてどこかに行ってしまった様だった。と、シェリーはそう思っていたが実際は元締めが現場で処理している。
偶然盗聴器がなくなってしまったと思っているシェリーは今回は元締めを盗聴するのではなく、予備として予め渡してあった盗聴器を取引相手の男につけるよう指示した。シェリーは今頃この近くのどこかで事の成り行きを聞いているはずだ。
2人と1匹が部屋に入ると身なりの良い男は彼らを出迎えた。部屋の中なのに彼はフェルト帽をかぶったままだった。
「お待ちしておりました。その猫が例の猫ですか。とても美しい、それに品がある」
「お待たせして申し訳ない。こちらがお約束の猫です」
元締めが告げるとキャリーケースに入った猫をケースごと鳥居が掲げて見せた。
「では早速取引に移りましょう」
テーブルの上に乗った小型のジュラルミンケースには札束が収まっていた。取引でも電子マネーが主流となった今となっては珍しい光景だった。しかし裏取引では取引内容が電子データとして残るのを避けるため今でも現金での取引が行われている。地下シェルターに自分専用のセキュリティロックをかけた金庫を作る者までいるのだ。
「全部で2,000万円あります。ご確認下さい」
元締めは中身を確認する。
「確かに。しかしこんなに素性のバレやすい猫をあなたが飼うんですか」
「いいえ、然る方にお譲りする予定だったんですが、もうお一方の方が然る方よりもお互い良い取引が出来そうなのでどうしようか迷っているんですよ」
「そうですか。私がこんなことを言えた義理ではありませんが猫にとって良い環境の方に決まると良いですね」
「えぇ、全くです。では私はこれで失礼します」
その言葉を聞いた元締めは小型のジュラルミンケースを閉めると鳥居に合図を送った。
すると合図を確認した鳥居は魔法陣を描き、猫と一緒にどこかへ消えてしまったのだった。
残された2人は目の前で起きた非現実的な事態に少しも驚くこともなく平然としていた。しかし、元締めが取引相手の男に近付き何かを見つけると不自然に大きな声でこう言った。
「帽子に何かついている様ですが、触ってもよろしいですか」
「ゴミでもついてしまったかな。申し訳ない、取っていただけると助かります」
「小さな虫かな? いや、やはり何かゴミのようなものですね。捨てておきましょう」
同じホテルの別室で取引している様子を見ていた門脇は小さな悲鳴をあげた。グヮシャッという音とともにいきなり映像が消えそれ以降音も聞こえなくなった。それは直ぐに小型ドローンが破壊されたのだと彼は理解した。
「あーあ、今回はいけると思ったんだけど……回収も難しいな。そういえば猫はどこに行ったんだろう」
せっかく改良したドローンなのに手痛い出費になってしまった上、猫の行方までわからなくなった門脇は途方に暮れた。しかしこれ以上この場に留まっていても何の解決にもならない。彼は仕方なく探偵事務所に帰る事にしたのだった。
小型ドローンを蚊でも潰すように破壊した元締めの様子を見ても何事もなかったかのように一旦取引相手の男が部屋を出た。
すると、盗聴器に向かって小声で話し出した。
「取引は無事終了しました。お聞きになった通りもうお一方、どうしても取引したい方が出てきましてね。あなたはどうされますか」
「どう言うことよ、今更ずるいじゃない」
「いえ、以前にもお話しした通りこちらも商売ですので条件の良い方にお譲りするのは当たり前です」
「そいつはいくらだって言ってるのよ」
「私が先ほど支払った額の5倍出してくださるそうです。猫にも何不自由なく安全に過ごせる環境をご用意されています」
「そんな…… じゃあ、私も5倍とさらに一割上乗せするわ」
「そうですか、あなたがそう仰った場合を考え先方は10倍まで出すと言っておられます。それ以上出せるのでしたら取引を考えても良いですが、どうなさいますか」
「明日の朝までに連絡するわ、だからまだそいつに渡さないで」
「いいでしょう。では次の夜明けまでに連絡がなければ先方にお渡しします。日の出の後は連絡をいただいても電話に出られるかどうかお約束致しかねます。お忘れなきように 」
すると即座に盗聴器の電源を切って、また元締めの居る部屋の中へ戻っていった。
部屋の中では監視や盗聴器の存在を全て無効にしたのを確認すると元締めがボソッと呟いていた。
「まだまだ、爪が甘いですよ探偵さん」
「兄さん何か言った?」
「いやなんでもない。それよりお疲れ様、シェリーの方は大丈夫だったか」
「多分大丈夫、私の話を全く疑っていなかったから。金策に奔走するつもりらしいよ、無理だと思うけど」
「そこまで手を打っているのか」
兄と呼ばれた元締めは渋い顔をした。
「当たり前だろ、どこからも借りられない様にしてある。それに証拠が残る銀行口座や電子マネーの取引ができないことは彼女も知っている。俺たちを敵に回したらどういう事になるか、これから痛いほど思い知るのではないかな」
「おおー社長様は怖いねー」
「褒めてくれてありがとう」
「……………… どういたしまして…… 全く褒めてないけど」
「それと、さっきの虫は例の探偵君のものかな」
「多分そうだと思うぞ。うちの会社もあんまり性能いいもの作るのもどうかと思いますよ、社長」
「そんなこと言われても、社員が優秀だからいつも試作品が斜め上いってるもの仕上がってくるんだよね。現時点で超高性能なものは社外には出していないし、これからも出すつもりもないから安心して」
「いや、そんなもの作る時点で安心できないだろうが」
シークレットエージェントは表向きホテルの経営や身辺警護といった所謂ボディーガードなどの仕事が主体の会社である。
ボディーガードをする上でより安全性や耐久性を求めた結果、自社で車を始めとして船舶や飛行機果ては宇宙船まで作る様になってしまった。この会社は隠れた巨大グループ企業であり技術者集団なのだ。彼の国の潜水艦もこの前納めたばかりだ。
実は取引相手のこの男、シークレットエージェントの社会的に認められている会社の方の社長兼CEOである。そして裏社会でのシークレットエージェントの元締めの双子の弟なのだ。高額納税者の一人でもある。
一度だけシェリーと会った時は帽子を目深に被りその下にはサングラスまで装着していた。口元は男なのにスカーフで隠してしまうため輪郭どころか顔も全くわからない。スーツの上にコートまで羽織っていたので体型もはっきりと分かりづらいのだ。そんな姿でもおそらく分かるのは双子の当人たちだけだろう。
元々この偽取引は架空のもので始めたきっかけは組織の中にいる罪人を炙り出すためのものだった。そろそろ次の偽取引を始めようかと考えていた時に、藤原夫妻から猫の件で相談があったのだ。
「とても珍しい猫を飼っているが、怪しい連中に狙われている」
猫を守り尚且つそいつらを撃退したいから力を貸してくれないかと言われたのだ。
そこで今回は双子の弟にも一芝居打ってもらったと言うわけだ。
双子とは言っても兄の佐伯亮吾は強面風になるように本当に顔に傷があるかのように特殊メイクをしている。他人の前では素顔を晒す事はない。
弟の佐伯圭吾はいつも眼鏡をかけていて髪型は何故かオールバックにきっちりまとめている。どうやら本人は最高責任者でいるときはきちっとしてONとOFFを分けているらしい。
シークレットエージェントの社員はおろか裏社会の人間でさえこの二人が双子であることを知る者はいない。
知っているのは普通はと呼べない、あの人間だけだ。
以前2人が双子ではないかと疑って探りを入れた輩もいたが、何故か皆その後の消息は不明である。だからと言ってそいつらの命を奪った訳ではない。九条の力を借りてどこかのパラレルワールドへとトランジットさせただけなのだから。自業自得、因果応報と言ったところだろう。
弟の佐伯圭吾は兄に素朴な疑問をぶつけた。
「この後もシェリーに裏の仕事やらせるの」
兄の佐伯亮吾はもう腹を決めていたのか何の躊躇いもなくそれに答えた。
「いや、もう依頼も出さないし足を洗うように促すよ。それでも仕事をしたいなら他所へ行ってもらうしかないな。他に当たったところでどうだかな。取引に夢中になって自分の危機管理もできない様な奴にはウチの仕事は頼めないからな」
「それもそうだね」
「できればもうこれからは真っ当に生きてほしいよ、でないと九条の世話になるかもしれないからな」
「でもそれはそれで、本人的には幸せかもしれないよ」
「まあこれから居場所も無くなるだろうし…… でもそれはどうだかな…… 」
兄の亮吾が遥か彼方にある地平線でも見る様な目をした。それを見た弟の圭吾が
『何がいいか悪いかなんて、悪いことやってる奴は分かってないんだな』と思った時、亮吾がボソッと呟いた。
「欲にかられた人間にとって物事の良し悪しなんてどうでもいいものなんだろう。誰かに向けたはずの己から溢れ出た悪しき感情は結局自分に返ってくるんだけど…… 気付けないって怖いな………… 」
「兄さん大丈夫? それってシェリーのことでしょ」
「あぁ…… 仕事だと割り切ってきたつもりだったけど、俺一人だったら今頃は人間不信になっていた所だったよ。お前がいてくれて本当によかった、ありがとな」
「亮吾本当に大丈夫? 妙に素直で気持ち悪いんだけど……まさか何か企んでる?」
「淋しいこと言うなよ二人だけの兄弟なんだからたまには俺にも弱音を吐かせてくれよ…… 。この顔の特殊メイクでいつもは人を怖がらせてる俺だって、人の悪意に疲れることくらいあるんだからさ」
「はいはい、じゃあ今度会った時は俺の愚痴を聞いてね」
「……了解」
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