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第1章 繰り返す女
繰り返す_1
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10月20日
チリィーーーーーーン…………。
来客を知らせるベルの音が鳴り響いた。店主は音のする方へと体の向きを変え、これから来るであろう客を待った。
鮫島李花が店に入るとそこには全身黒尽くめで透き通るような白い肌の男が一人、カウンターの中にいた。全身黒い衣装を纏っているせいで透明感のある肌の白さが異様に際立って見えた。
男がカウンターを挟んで鮫島李花の目の前に立ったその瞬間に彼女は叫んだ。
「 過去へ行きたいんです、 すぐに行きたいんです。一刻も早く過去へ行けるようにして下さい。お願いします!」
『とにかく早く過去へ行くんだから、早く、早く、早く』
サーモンピンクのシンプルなワンピースを着てブランド物と一目でわかるバッグを持ち、肩口で切り揃えられた黒髪ストレートヘアーの女がいた。それは一見清楚な感じなのに鬱々とした陰を引き摺るような重たい空気を纏う女だった。
「お金ならいくらでもお支払いします。1分1秒でも早く行きたいんです! お願いします!!」
『高いお金を払うんだから、優遇しなさいよ』
一方的に捲し立てる女の言葉は何かを依頼するものであるはずなのに、そんな言葉とは裏腹に当然のように見下す態度で店主を見据えていた。全くもって人にものを頼む態度ではない。彼女はお願いという言葉の意味を知らない。
神崎の期待を裏切る事なく店に来たのはやはり鮫島李花だった。つい最近、神崎本人がこのパラレルワールドへとの道を繋いだのだから忘れるはずがない。
この女はパラレルワールドで目覚めた時に感じたであろう違和感を気にすることもなく、自分の欲望を叶えるためにまた同じことを繰り返そうとしている。自分が重ねた罪で作った鎖を外すのは簡単なことでは無いのだ。
鎖は目に見えるところにあるわけではない。心の奥底にしっかりと刻み込まれていて外から見ることはできないのだ。自分で気付いて自分で見つめ直すことでしか外すことはできないのだ。
チリィーーーーーーン…………。
来客を知らせるベルの音が鳴り響いた。店主は音のする方へと体の向きを変え、これから来るであろう客を待った。
鮫島李花が店に入るとそこには全身黒尽くめで透き通るような白い肌の男が一人、カウンターの中にいた。全身黒い衣装を纏っているせいで透明感のある肌の白さが異様に際立って見えた。
男がカウンターを挟んで鮫島李花の目の前に立ったその瞬間に彼女は叫んだ。
「 過去へ行きたいんです、 すぐに行きたいんです。一刻も早く過去へ行けるようにして下さい。お願いします!」
『とにかく早く過去へ行くんだから、早く、早く、早く』
サーモンピンクのシンプルなワンピースを着てブランド物と一目でわかるバッグを持ち、肩口で切り揃えられた黒髪ストレートヘアーの女がいた。それは一見清楚な感じなのに鬱々とした陰を引き摺るような重たい空気を纏う女だった。
「お金ならいくらでもお支払いします。1分1秒でも早く行きたいんです! お願いします!!」
『高いお金を払うんだから、優遇しなさいよ』
一方的に捲し立てる女の言葉は何かを依頼するものであるはずなのに、そんな言葉とは裏腹に当然のように見下す態度で店主を見据えていた。全くもって人にものを頼む態度ではない。彼女はお願いという言葉の意味を知らない。
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この女はパラレルワールドで目覚めた時に感じたであろう違和感を気にすることもなく、自分の欲望を叶えるためにまた同じことを繰り返そうとしている。自分が重ねた罪で作った鎖を外すのは簡単なことでは無いのだ。
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