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さよなら世界、こんにちは異世界

48.A級冒険者 ダンバード・スタンフィール

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「ダン、おまえ、この依頼が終わった後もダンジョンに潜るって、本当か?」

「どこから、その事を……?」

「誰にも聞いてないさ。ただ、ギルドで依頼達成後に戻るのが遅くなるって話してたのを聞いて、頭に浮かんだんだ」

「さすが、タナントスだな。閃きのスキルか?」

「いや、そんなんじゃないぞ。ユリイカの花が群生しているこの森の近くに、新しいダンジョンが現れたと聞いてな。俺だったら、依頼達成後に寄ってみると思ったんだ。だから、おまえ同じくダンジョンに行くはずだと思ったんだ」

「俺は、タナントスに信頼されてるのかな?」

「当たり前だろう。ダンと何年組んでやってると思ってんだ。俺の背中を任せられるのは、ダンとファイだけだ」

 フィルドの要と言われているタナントスに、ここまで言われて喜ばない奴はいないだろう。俺も、素直に嬉しくて年甲斐もなく照れてしまった。

「タナントス、ありがとうな。すっげえ、嬉しい」

 照れくさくて、どうにかお礼を言うと片手で顔を覆ってしまう。
 俺はタナントスに憧れて冒険者になったんだ。タナントスには言ってないけど。

「ふふふ……、そんなに照れちゃって。ダンも、まだまだかわいい年頃ですね。憧れの人に認められて、嬉しいでしょう」

「ファイ……、聞こえるだろう?恥ずかしいじゃないか」

「何言ってんですか?とっくにタナントスが憧れの人だとバレてますよ。ダンって、ぼんやりしたところあるよね」

「ええーー。……バレてるの?本当に?タナントスは何も言ってなかったぞ」

「そりゃ、本人には言わないよ。でも折に触れて、ダンの成長を喜んでたよ」

「喜んでだ?本当に?俺、これから、すごい頑張れそうだ」

「ああ……そういえば、この後にダンジョンを潜るのなら無理しないで下さいね。俺も、タナントスも、心配してる。あとで、余分に回復薬を持ってきたから渡すよ」

「ファイ、貰っていいのか?」

「もちろんですよ。俺もタナントスも、ダンを大切な仲間だと思ってんだよ。だから心配するし、助けたくもなる」

「ああ……、ファイやタナントスに仲間と言われてすごい嬉しい」

 タナントスとファイは、第一ギルドで一位二位を争うレベルの高い冒険者だ。そんな2人に仲間だと、認められて誇りに思う。

 フィルドの第一ギルドに所属するまでは、ずっとソロ冒険者でやってきた。ダンジョンでは、何度も魔獣に追い詰められた事もある。

 Fランクから上がっていき、Cランクになった時にはいくつかのパーティーに組まないかと誘われたが、どのパーティーにも断った。

 それにCランクになったら拠点をフィルドに変えて、第一ギルドに所属するのが目標だった。

 それは、俺が人を信じられないから。信じられるのは、俺を育ててくれたシスターと施設の仲間と自分だけだ。

この時は、情けなくとも、そう思ってた。

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