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さよなら世界、こんにちは異世界

43.異世界で遭難

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 昔、遭難をした時の心得みたいなのをニュースで見たことがある。
 たしか、第一にその場を動かない!とあった気がする。よし、むやみに動き回るなって事だよね。

 周りを見回して、座りやすそうな場所を見つけた。両手が回らないくらい立派な幹の大樹だ。太い根が地面から根上がりして、座るのにちょうど良さそう。

「こんにちは、ちょっとお邪魔しますね」

 ぺこっとあたまを下げて、大樹の根元に座らせて貰った。
 うわぁ~、大きい樹だなぁ。見上げても、樹のてっぺんが全く見えない。

 ふと気付けば、僕の足元に靴と同じ大きさのダンゴムシがいます。もぞもぞ動いてて、なんとも怖いです。

 もしかして、いつの間にか僕が小さくなってるとか?全てが僕の顔くらい大きくて、あきらかに比率がおかしいもん。そこまで、おかしな異世界じゃ無いよねぇ。
 頬杖ついて、ため息をひとつ。

 思い出した!そういえば、水筒があったじゃん。飲んでみると、僕が大好きなミルクティーだった。
 ふぁ~、ばあや天才!さすが、僕の大好きを分かってるよねぇ。
 ポケットの中にビスケットを発見!サクサクして美味しいなぁ。アーモンドパウダーが入って、サックリポロポロ感がたまらない~。何枚もいけちゃいます。
 
 もぐもぐ食べてると、視線を感じた。ダンゴムシさんがビスケットをほしそに見てる……。最後の1枚を断腸の思いでダンゴムシさんにあげようと、地面にビスケットを1枚置いた。

 その瞬間、いきなり怪鳥が急降下してきて鋭いクチバシでビスケットを掻っ攫っていきました。

 ヒュンッて、ヒュンッて風が吹いて、髪がファサッて揺れたよ。
こっわっ!
 
 僕、あまりの速さに何が起こってるのか分からなくて、地面にビスケットを置いたポーズのまま、しばらく固まっていました。
 あぶっなっ。僕の手がビスケットから離れて無かったら、指も持ってかれてたんじゃないの。

 ショックで少しフリーズしちゃった。ここでじっとしてて、救出を待つか、自力で町まで行くか……。
 やだやだ、本当は食べられるのを待つか、食べられないように逃げるかのどっちかなんだぁ~。

 ビスケットも全部食べちゃったし、命の綱は水筒に残ってるミルクティーだけ。しかも、着衣は軽装だ。詰んだ感がすごいのだけど……。
 助けて、精霊さん!

 フクロテナガザルに似た力強い鳴き声が、辺りに響いていた。空には怪鳥が旋回して、黒板を釘で引っ掻いたような高音の鳴き声をあげている。
 強い風が吹き、枝がしなり葉ずれが不穏な音を立てていた。
 
 精霊さんからの応答は、無し。

 精霊さん、ひどいっ。
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